悪役令嬢の逆襲~バッドエンドからのスタート

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第24日目 史上最悪のピンチ ④(残り時間58日)

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「エリス・・・。お前・・・魔法が使えたのか?」

私を連れて逃げたアンディが地面に倒れて眠っている牛の群れを見ながら言った。
う~ん・・。どうしよう・・なんて説明するべきか・・・。

その時、ピロリンと液晶画面が開いた。
おおっ!ラッキー!!何て説明すれ良いのか困っていたんだよね~。

『攻略対象から質問されました。何と答えますか?』

1 女の秘密です
2 見なかった事にして下さい
3 貴方が無事で良かったです
4 魔法?何の事ですか?

この選択肢を見て私がイラッときたのは言うまでもない。コンピュータウィルスにシステムを乗っ取られかけているのに、何故このような選択肢が表示されてしまうのだろうか・・・?
ハッ!
それとも・・・・この選択肢も・・ひょっとするとバグ・・?
そうか、バグなら・・・どれを選んでも・・・好感度が上がるか、もしくは・・・下がってしまうかもしれないっ!
だったら、選ぶのは3番しかないっ!

「あ・・・貴方が無事で良かったです・・・・。」
自分の葛藤が激しいあまり、身悶え?しながらアンディに言う。

「エ・・・エリス・・・ッ!」

見るとアンディの顔は真っ赤に染まり、潤んだ瞳で私を見つめている・・・。

「お前・・・自分の身だって危険だったのに・・・それなのに俺の心配をしてくれたなんて・・・。」

そして、スルリとアンディの右手が私の頬に添えられる。
え?何・何?何だか・・・嫌な予感しかしないのだけどっ!すると案の定、アンディが左手で私の顎を摘まみ、顔をグググッと近づけ・・・って。
ギャ~ッ!!こ、このままではキスされてしまう・・っ!!

 しかしその時突然エリオットが背後から現れ、アンディの首根っこを掴み、グイッと後ろに引きよせた。

「おいっ!アンディッ!お前・・一体エリスに何をしようとしていたんだっ?!」

すると途端にアンディは我に返った様子になった。ホッ・・・た、助かった・・・。

「え?あ・・・い、今俺は一体何を・・・?」

アンディは呆然としたままエリオットを見た。

「!お前なあ・・・今お前は強引にエリスにキスしようとしていたんだよっ!!」

エリオットがアンディの襟首をつかみながら言った。

そしてちょど、その時騒ぎを聞きつけて、ジェフリーとダンが駆けつけてきた。

「おい、一体何を揉めてるんだよっ!」

事情を知らないジェフリーがエリオットとアンディの只ならぬ様子に問い詰めた。
ダンも事の成り行きを黙って見ている。

「ああ・・・実はな、先程アンディの奴が強引にエリスにキスしようとしていたんだ。」

「「キ・・・キスだってッ?!」」

ダンとジェフリーが声を揃えて叫ぶ。
ああっ!エリオットの奴め・・・・!何でそんな余計な事言っちゃうのよ!ほら・・アンディがますます落ち込んでるじゃないのッ!襲われかけといてなんだが、彼には恩義があるから、あまり事を荒立てたくはないのに・・。

「お・・・お前・・・そ、そんなに女に手が早い男だったのかよっ!」

今度はジェフリーがアンディに詰めよる。

「エリス・・・・大丈夫だったか?他には何か?アイツに不埒な真似をされてはいないか?!」

あ~あ・・・ダンまで興奮のあまり、彼等の前でアイツだとか不埒な真似・・・なんて言っちゃったよっ!仮にも彼等は『白銀のナイト』以外に貴族の称号だって持っているって言うのに・・・。
かくなる上は・・・。

「皆さんッ!落ち着いて下さいッ」

大声で叫ぶと、ピタリと彼等の動きが止まった。

「どうかアンディ様を責めないで下さい。多分・・・アンディ様があんなことをしようとしたのは・・・私の責任なんです。」

するとジェフリーが言った。

「それは・・・つまり、エリスに魅力があり過ぎるから・・・?」

「そうそう、私に魅力があり過ぎるから・・・・って違いますっ!きっとハーブのせいですよっ!」

「「「「ハーブ・・・・?」」」」

「はい、ハーブです。実は今朝、料理長に頼まれて学園のハーブ園にハーブを摘みに行ったんです。そしてその時にどうも私は媚薬として使われるハーブに触れてしまったようなんですよ。」

「何?媚薬・・・?そんなハーブがあったのか・・?」

エリオットが難しそうな顔で腕組みをする。

「それって・・・何て名前のハーブか知ってるのか?」

「ダンが尋ねて来た。」

「えっと・・・確か、『ダミアナ』って言ってたかな・・・?」

するとその言葉にアンディが反応した。

「え・・・?『ダミアナ』だって・・?」

「何だ?アンディ・・・お前、ダミアナってハーブを知ってるのか?」

エリオットがまだ不審そうな目でアンディを見ながら尋ねた。

「あ、ああ・・・。実は今朝、いつものトレーニングの為に玄関ホールを抜けた時にエディにすれ違ったんだが・・何だか様子がおかしかったんだ。」

「おかしかった・・・?どんなふうにおかしかったんだ?」

エリオットが先を促す。一方の私は気が気でならない。このまま話が進めば・・・何だか色々ヤバイ事になりそうな気がするっ!
と、とめなければ・・・っ!

「ま、まあまあ、別にもうそんな話、どうでもいいいじゃないですか・・・。」

「いいや、エリス。どうでもいい話じゃ無いぞ?大体媚薬が学園で育てられてること自体、問題だと思わないか?」

真面目なエリオットが言う。

「それで、どんな様子だったんだよ。」

さらにジェフリーが先を促す。

「ああ・・・それでエディに挨拶をしたんだが・・そのまま素通りされて・・・対にエディは壁に頭を打ち付けて、床に倒れてしまったんだ。」

「「「「ええっ?!」」」」

ま、まさか・・・エディはそこまで動揺していたのかっ?!

「慌てた俺は急いでエディを助け起こすと、エディの奴・・・ブツブツと何かを呟いていたんだ。ダミアナの影響がここまで強かったなんて・・とか、まさかキスをしてしまうとは・・・とか言ってたな・・・。」

「「「「キス?」」」」

ああっ!ま・・・まずい・・!

すると・・・案の定、彼等の視線が一斉に私に注がれる。

「そう言えば・・・アンディはエリスにキスしようとしていたよな・・?」

エリオットが私を見る。

「媚薬のハーブに触れてしまったって言ったよな?」

ダンが私を見る。

「エディが・・・・キスをしてしまうとは・・・って言ったんだよな・・?」

ジェフリーも私を見つめた。

「お・・・おい!エリスッ!お・お・お前・・まさか・・・っ!!」

アンディがガシイッと私の両肩を掴んできた。

「されたのか?エディにキスされてしまったのかっ?!」

私はあまりの迫力に思わず無言でカクカクと首を振ってしまった。
ハッ!!ま・まずい・・・っ!

「くっそ~あの野郎・・・一番真面目そうなフリして・・実は一番女に手が早かったのか・・?!」

ジェフリーが指をボキボキ鳴らしながら言う。

「フフフ・・・・。こうなったらあいつには魔法攻撃で急襲してやるしかないようだな・・。」

エリオットが杖を握りしめながら不敵な笑みを浮かべる。

「ああ・・・少々痛い目に遭わせないとならない様だな・・・・。」

何と、あのアンディ迄もが物騒な事を言っている!

「俺も協力しますよ・・・。」

殺気を漲らせたダンがそこにいたっ!!
ま、マズイ・・・!このままでは・・・。

すると牧草の陰から私に手招きする2つの陰が目に入った。あ・・・あれは・・
ベソとノッポだっ!天の助けっ!!

殺気を漲らせて話し合い?をしている彼等にバレないようにこっそりベソとノッポに近付いて行った。

「ああ、良かった!2人に会えて!!」

思わずベソとノッポの手を繋いでブンブン振る私。

「い、いえ・・・そんな事は・・・。」

何故か照れるそぶりを見せるノッポ。

「それにしても運が良かった!大変な事になってるのよ!何とかしてよ!」

私は3人が揉めている様子を指で指示した。

「一体何があったんですか?」

ベソが尋ねる。

「皆、私の事で揉めてるのよっ!!」

「ハハアン・・・モテる女は辛いですねえ。」

ノッポが楽しそうに言う。

「何言ってるのよっ!何とかしてよ・・・本当に・・ああ・・彼等の記憶が一瞬にして消えてしまえばいいのに・・・。」

溜息をつきながら言うと、ベソが嬉しそうに言う。

「それはちょど良かったです!実は究極のアイテムを我々が作り上げたんですよ!その名も『リセッター』です!」

言いながらベソはマッチ棒のような箱に丸い大きなボタンが付いたアイテムを取り出した。

「これは・・・一体何?」
私が尋ねると、彼等は自慢げに言う。

「はい、これは1日1回しか使えない、究極のアイテム『リセッター』です。
ゲームの中でも、どうしても一度リセットしたい場合ってありすよね?これはそんな願いを叶えてくれる究極アイテムなのです!」

ベソは興奮のあまりか?2回も究極アイテムと言う単語を会話の中にぶち込んできた。

「そ、それで・・・使い方はどうすればいいの?」

私の問いにノッポが答えた。

「あ、早速試してみますか?一応これは試作品なんですが・・このボタンを押すと1時間前に遡れるんですよ。あ、勿論エリスさんや。、我々の時間も戻ってしまいますが・・・大丈夫、記憶は残ってますからね~。では押しますよ・・・。」

え・・?1時間前・・・?そ、それって・・・・!

「それ押すのちょっとまったあ~ッ!!」

ぽちっ

あ・・・押されちゃった・・・・。
そして時間は巻き戻る―。


モオオオオオオオーッ!!

あああああっ!やっぱりいいいいっ!
牧場では魔法で牛を抑え込んでいるアンディ、エリオット、ジェフリーの姿が・・・。そして当然ベソとノッポはここにはいない。

あ・・・あいつら~ッ!
覚えてなさいよーっ!!
心の中で絶叫し・・・私は再び杖を取り出すのだった—。




『お疲れさまでした。第24日目無事、終了致しました。諸事情により、究極アイテム『リセッター』は使用中止とさせて頂きます。申し訳ございませんでした。
再び『オリビア』によって好感度を下げられた『白銀のナイト』が1名おります。好感度を『オリビア』から奪い返してください。残り時間は58日です』

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