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第19日目 野外パーティイベント開催! ③

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 パーティ会場から少し離れた森の中—。 
エディと別れて、夜からの仕事に備える為に寮に戻ってメイド服に着替てこようと歩きかけた時、突然背後から声をかけられた。

「エリスさん。」

ギクウッ!!
そ、その声は・・・・。怯えながらゆっくり振り向くとそこには腰に手を当てて私をジロリと見つめているオリビアの姿があった。

「あ、さ・先ほどはどうも・・・。」

ひきつった笑みを浮かべながら挨拶をする私。
するとオリビアが冷たい声で言った。

「エリスさん・・・さっきのコンテストの演出はシナリオ通りだったと言う訳ですのね?」

「はい?演出・・シナリオ・・?」
はて、何の事だろう?首を傾げると、急にオリビアは声を荒げた。

「エリスさん!すっとぼけないで頂けますか?!会場にレインボーローズを忘れたのも、貴女が遅れてバラを届けに来たのも・・・あそこでわざと転んでレインボーローズのシャワーを浴びたのも・・これ見よがしにバラ模様のワンピースを来ていたのも・・・全てシナリオ通りだったのでしょう?!」

「す、すっとぼけって・・・・。」
何と言う言葉遣いをするのだろう。驚きの余り、一瞬自分の思考が飛んでしまった。

「聞いていらっしゃるの?エリスさん!」

「は、はい!聞いてますよ。」

慌てて返事をする。

「エリスさん・・・・。本当に姑息な手段を使ってくれましたよね?そんなに私に嫉妬していたのですか?白銀のナイト達を取られて・・それで、今度は急に人が変わったかのように真面目にメイドの仕事をして、今度は私の恋人達を奪うつもりなのですね?」

オリビアは益々ヒートアップしてゆき、とてもこちらから口を挟む余裕が無い。
それをオリビアはどう解釈したのか知らないが。口角を上げると言った。

「ほら、図星だから何も言い返せないでいるのでしょう?兎に角・・・最近白銀のナイト達が私に冷たくなってきたのですが・・・それもこれも全てエリスさん!貴女が彼等を誘惑しているからです!私にはそれが分かるのよ。だって、彼等の・・。」

そこまでオリビアが言いかけた時、アッ!と私は思った。オリビアの背後の木の陰からフレッドが現れたのである。

「フ、フレッド様・・・・。」

思わず声を掛けると、オリビアがパッと振り返った。

「まあ、フレッド様。こんにちは、お久しぶりですね・・・もしかして私を探してらしたのですか?」

そしてオリビアはにっこりと微笑む。
それを見た私は度肝を抜かれた。
ええええっ?!な、なぜ・・・そんなに平然とした態度を取っていられるの?!
今していた話は・・・かなり内容的にヤバイ話に思えるけど・・?
あれを聞かれていたら・・普通に考えれば絶対に相手からドン引きされてしまうと思わないのだろうか?

一方フレッドの方は冷たい視線でオリビアを見ている。うん、あの目つきは・・・絶対に愛しい女性を見つめるような視線では無い!という事が断言できる。
案の定、フレッドは冷たい視線で一瞥するとオリビアに言った。

「俺が・・・何故お前を探さないといけないのだ?」

ピシッ!
まるで音が鳴るのでは無いかと思われるほど、オリビアの身体が固まるのが分かった。
そしてそんなオリビアを見向きもせず、今度は私の方を見ると言った。

「エリス。今日のレインボーローズのコンテスト・・・見ていたよ。おめでとう。お前が壇上に上がって転んでしまった時はどうしようかとハラハラしてしまったが・・・バラの花々から顔を出した時のお前の顔・・そ、その・・・可愛かった・・。それに今着ているワンピースも・・・すごく良く似合っている・・・よ。」

フレッドは頬を赤く染めながら私に語り掛けて来る。そしてジワジワと彼の頭上に現れて来る好感度のハートのゲージ。何と・・・190を示していたのだ!
う、嘘でしょう?まずいまずいまずい!
これではあっという間に200になって・・・告白イベントがきてしまう!

その時、私の視線にオリビアの姿が映りこんだ。オリビアは唖然とした顔でフレッドの頭上を見つめている。
ああ、そうだ・・・やっぱり、オリビアにも彼らの好感度が見えているんだ・・・。
まさかオリビアにまで好感度が見えていたなんて完全に油断していた。
どうしよう・・・これでは今後ますますオリビアからの私に対する風当たりが強くなっていく・・・。

「どうした?エリス。顔が青ざめているようだが・・・。」

フレッドは私に近付くと、あろう事かオリビアの見ている前で私の頬に手を当ててきた。ひええええっ!な、何て事をしてくれるのよっ!
チラリとオリビアを見ると、彼女の顔はまるで般若のような顔で私を睨み付けているではないか!

「い、いえ。大丈夫です。ナンデモアリマセン・・・・。」

しかしフレッドはジロリとオリビアを睨み付けると言った。

「おい、オリビア。お前がエリスに言いがかりをつけているのはちゃんと聞こえていたぞ?今後エリスに何か言いがかりをつけるようなら・・・この俺が許さんからな?」
そしてフレッドは腰に差している剣に手をふれた。こ・・・これはマズイ!

「フ・・・フレッド様っ!」

慌てて声を掛けると、フレッドが嬉しそうに私を見下ろす。

「どうした?エリス。」

「私のせいでコンテストが台無しになってしまったのは確かなので、オリビアさんの言う事にも一理あると思うんです。なのでもうオリビアさんを責めるのは辞めてください。あの、私・・・夕方から仕事があるので・・・これで失礼致しますっ!」

バッと頭を下げると私はその場を逃げるように走り去ったのである。
・・・気まずい雰囲気のフレッドとオリビアを残して・・・。
彼等がその後、どうなったのかは、私には知る由も無かった—。


 夕方6時—。
そろそろパーティーもフィナーレが近付いて来た頃・・・。メイド服に着替えた私は後片付けのお手伝いの為にパーティー会場へと戻って来た。ふと見ると立食用の料理が沢山並べられているテーブルの側にアンが立っているのが目に止まった。

「アン。」

声を掛けるとアンが驚いた様に振り返る。

「あれ?エリス。もう会場入りしたの?花火は7時からだから、それまではゆっくり休んでいれば良かったのに。」

見るとアンは取り皿に料理を一杯に入れて食事の真っ最中だったようだ。

「うん。そうなんだけど、今日みたいな忙しい日にいつまでも休ませて貰うのは悪い気がしてね・・・・。」

「ふ~ん。そうなんだ。エリスって相変わらず真面目だね。そうだ!エリスも一緒に食べようよ。まだ食事していないんでしょう?」

言いながらアンが取り皿を差し出してきた。

「え・・?いいの?食事しても・・・・。だってまだ仕事が残っているよねえ?」

「いいのいいの、だって今からダンスパーティーが始まるんだもん。誰も食事を頼んだり、飲み物を頼んでくる人達なんかいないんだからさ。」

成程、言われてみれば確かにそうかもしれない。だってこの野外パーティーのメインイベントはダンスパーティーなのだから。アンの言葉に思わず納得する私。

「うん、それじゃ遠慮なく食べようかな~。」
早速トングを持って、テーブルの上の料理を物色。あ、あのローストビーフなんか、美味しそうっ!
ヒョイヒョイとトングでつまんで皿に乗せると、さらに物色。これでもかと言う位、てんこ盛りの料理を皿に乗せて、いただきま~す。

するとそのタイミングで、背後から皿を取り上げられてしまった。
グヌヌ・・・・誰だ?この私の料理の乗った皿を・・・。
そして背後を振り返ると、そこに立っていたのはアベル・ジョナサン。

「ア・・・アベル様・・・・?その料理の乗ったお皿・・・返して頂けますか?」

笑顔でアベルに話しかける。

「嫌だ。」

は?今・・・何と?

「え・・・?何故ですか?」

首を傾げながら尋ねると、アベルは取り上げた皿をテーブルの上に置くと、いきなり私の左腕をグイッと引っ張り、突然抱き寄せてきたのだ。

「な・な・な・何をするんですか?いきなりっ!」

驚いて声を上げるとアベルが言った。

「いいじゃないか。今からダンスパーティーが始まるんだ。エリス、俺と一緒に踊ってくれ。」

そしてさらに空いてる右手で私の腰に手を回す。

「キャ~ッ!!」

それを見たアンが口元を押さえて黄色い声を上げる。するとその声に一気に他の従業員達の視線が集中する。ううう・・・攻略対象となってしまったトビー達の私を見る視線が・・・痛い。そんな恨めしそうな目で見ないでよ・・・。全部アベルのせいなんだから。

「ア、アベル様っ!私踊れないし、食事もしていないので離して下さいよっ!第一何処の世界にメイドにダンスを申し込む男性がいるんですかっ?!」

気付けば、私はアベルに手を取られてダンスパーティー会場のど真ん中まで連れて来られていた。

「何言ってるんだ?エリス。お前・・さっきからこんなに上手に踊っているじゃ無いか?」

アベルに指摘されて私は初めて気が付いた。アベルに訴えながら無意識のうちに踊っていたという事に・・。おお~!流石バーチャルゲームの世界っ!

「ほ、本当だ・・・。」

アベルに手を取られながらクルリクルリと踊り・・・って、踊ってる場合じゃない!

「アベル様。本当に離して下さいよっ!私は只のメイドですし、食事もしていないし、片付けもしないとならなくて・・・。」

するとアベルが悲しそうな顔で私を見ると言った。

「・・・いいじゃ無いか、エリス。・・・今まで俺は・・・自分より背の低い女性と・・・踊った事が無いんだから・・・。いつも同じ視線か・・・酷い時は見下ろされて踊っていたから、すっかり踊るのが嫌になってしまったんだ。だけど、お前となら・・・こうして見下ろして踊れる。」

「アベル様・・・。」
確かに・・言われてみればそうかもしれない。男性が女性に見下ろされながらダンスを踊るのって・・・・ある意味屈辱的なのかもしれないなあ。仕方が無い・・・。

「分かりました。それじゃ・・・この曲が終わるまでですよ。」

そしてフッと笑みを浮かべた。
やがて、曲が終わったので私はアベルに言った。

「さ、アベル様。曲が終わったので私はもう戻りますね。」

「あ、ああ・・・。」

何故か名残惜しそうにしているアベルを残し、私は先ほどの立食テーブルに向かいながら、何気なく背後を振り返り・・・絶句してしまった。

アベルの好感度が・・・190になっている事に・・・・。



その後・・・フィナーレの花火が打ち上げられ、私達従業員は後片付けに追われ・・・今日の業務が全て終了したのは夜の9時だった。



「あ~あ・・・疲れた・・・。」
シャワーを浴びて、自分の部屋へと戻ると、ベッドにダイブする。

「全く・・・ここの学園は私達をこき使い過ぎるよ。これで明日も仕事ならボイコットするところだけど、お休みで本当に良かったな~。」
思わず独り言が口から飛び出す。

さて・・・明日の休みは何してすごそうかな・・・・。
そう思いつつ、瞼が徐々に重くなっていき・・・いつの間にか眠りに就いてしまった。



『お疲れさまでした。第19日目が無事終了致しました。攻略対象2名が後少しでマックス値を迎えそうです。ご注意下さい・・・・。』
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