35 / 129
第17日目 命がけの野外パーティー準備 その①
しおりを挟む
『おはようございます。17日目の朝が始まりました。3日後にエタニティス学園の一大イベントの野外パーティーが開催されます。今日、明日はこちらのパーティ会場の飾りつけがお仕事の中に含まれます。こちらは通常業務より多くのポイントを獲得する事が出来ますので、是非お勧めします。それでは本日も頑張って下さい。』
「ふ~ん・・・。野外パーティーがあるのか・・・。そう言えば以前ダンが言っていた野外パーティーって・・・ひょっとしてこの事かあ・・・。昨日のメッセージでは攻略キャラとの距離を縮められるようなイベントがあります、何て書いてあったけど・・・メイドの私には関係ないイベントじゃない。」
まあ、別に私は野外パーティーなんかこれっぽっちも興味が無い。いや、それどころかきっと私達従業員はそのパーティーで馬車馬の如く働かされるに決まってる。
「ああ・・・嫌だなあ・・・パーティー会場で仕事なんて言ったら、当然エリスを知ってる人達に会って・・嫌な目に遭いそうな気がするよ・・・。はああ・本当に憂鬱だ・・・。」
ブツブツ言いながら起きる私。さて・・・仕事に行きますか・・・。
今朝もいつものように厨房でダンのお手伝いを済ませると、従業員一同、トビーに呼び出された。
「皆、知っての通り、3日後に学院の野外パーティーのイベントが開催される。そこで、我々スタッフの中から準備の為に2名こちらの仕事に行って貰いたいのだが・・・誰か希望者はいるか?」
トビーは全員を見渡しながら言う。
「はい!」
私は元気よく手を上げた。
なにせこの仕事はポイントが多く貰えるらしいから、引き受けるのは当然でしょう!
しかし、私以外は誰も手を上げない。挙句の果てに・・・。
トビーは何故か絶句したように私を見るし、アンにダン、ニコルも私を見て口をぽかんと開けている。
そしてトビーは私が手を上げているにも関わらず、視線を逸らしてさらに言う。
「え~と・・・誰も希望者はいないのか?それならこちらから指名するぞ・・。」
すると、途端に辺りがざわざわと騒ぎ出す。おのれ・・・トビーめ。・・私の存在を無視するつもりか?!
「はい!トビーさんっ!私さっきから手を上げているじゃないですかっ!」
私は手を上げながら大声でトビーに呼びかけた。すると何故か半分涙目になって私を見るトビー。
「エ・・・エリス・・・。君は・・またそんな我儘を言ってこの僕を困らせるつもりかい・・?」
涙目の中にも熱を込めた瞳、甘ったるい声で私に訴えて来る様はまさしく鳥肌ものだ。な・・・何なんだ・・・?一体あの男は・・・?!
他の人達もトビーを白い目で見ている。
しかし、そこに口を出したのがジャネットだった。
「あら・・・いいんじゃないの?こうして自分からやりたいって志願しているんだから・・いくらトビーのお気に入りだからって・・・えこひいきは良く無いわよ?」
言いながらジャネットはジロリとトビーを睨みつける。
「ああ。俺もそう思うな、トビー。大体、本人がやりたいって言ってるんだから、やらせてやればいいじゃないか。」
ジョージも腕組みをしながら言う。
「「おい!ジョージッ!!」」
すると何故かダンとニコルが同時に席を立ち、ジョージを睨み付ける有様だ。
う~ん・・・謎だ。もしかすると・・・この仕事も実はとんでもない内容なのだろうか・・・?
立候補したけど、既に後悔の念が押し寄せて来る。
「よ・・・よし、分かった。それならこの仕事はエリスに任せる。それでは後の1人は・・・お前だっ!ジョージッ!お前にこの仕事をやらせるからなっ?!」
ビシイッとジョージを指さすトビー。
「ええええええっ?!そ、そんな・・・!横暴だっ!こんなのは特権乱用だっ!」
イケメン男ジョージは長い髪を振り乱しながら喚く。
あ~あ・・・。折角のイケメン男なのに・・・台無しだ。全く残念極まりない。
「うるさい!俺に逆らうなっ!俺はリーダーだっ!エリスに詳しく仕事内容を教えてやるんだぞ?いいか・・・決してサボったり手を抜いたりしてエリスの足を引っ張るんじゃないぞ・・・。」
トビーは恐ろしい形相でジョージを睨み付けると、今度は急に笑顔になってツカツカと近付いて来ると、私をじっと見つめながら甘ったるい声で言った。
「いいかい、エリス。君は・・・とても真面目な女性だから、きっとこの仕事も全身全霊を掛けて頑張るだろう・・・。だけど、これは僕からの忠告だよ。真面目に仕事をする事はないんだ・・・。時には手を抜く事も大事だよ。何、少々手抜きをしたって構わないんだからね?」
「は、はあ・・・。わ・・分かりました・・・。」
引きつった笑みを浮かべながら返事をする私。
しかし・・・従業員の責任者のトップがそんな事を言っていいのだろうか?
私はこの先の学園の行く末を案じるのだった。
「全く・・・何故俺がこんなきつい仕事をしなくてはならなんだ・・!」
私とジョージは今野外パーティー会場の舞台となる、学園から500m程離れた場所にある湖を目指して荷馬車に乗って向かっていた。
荷台には沢山の道具が積まれている。
荷物を良く見ると・・・主にホームセンターの園芸コーナーで売られているかの様なアイテムが殆どを占めている。
「あの~クライスさん。私達は今日一体どのような仕事をするのでしょうか?」
ずっと仏頂面のジョージの隣に黙って座っているのもいたたまれず、彼に話しかけてみた。
「何だよ・・・。お前・・・やっぱり何も知らないで・・この仕事を引き受けたんだな?」
ますますジョージは不機嫌になってゆく。
「は。はあ・・・。」
そんな事言ったって、誰も仕事内容を教えてくれなかったじゃ無いのよっ!私は心の中で毒づいた。
「きょうの俺達の仕事は湖の周りの草刈りだ。まあ湖自体はそれ程大きくは無いからあまり問題は無いのだが・・後は・・・周辺に木が多く生えているからハチの巣が無いか・・・チェックしてまわる。」
ハチの巣・・・?何だか嫌な予感がしてきた。
「あ・・あの・・・もしや・・ハチの巣を見つけたとしたら・・・?」
恐る恐るジョージに尋ねる。
「そんなのは駆除するに決まっているだろう?」
「誰がですか?」
「俺達に決まってる!ったく・・・だからこの仕事やりたくなかったんだ。」
ジョージは益々不機嫌になって来る。
「そ、そんな!私・・・蜂の駆除なんて無理ですよっ!やった事も無いし!」
「ああ、俺だってそうだ!だから・・・仮に蜂の巣を見つけたら・・・。」
「見つけたら?」
「・・・見なかったことにするんだ。」
「はい?あの・・もう一度仰って頂けますか?」
余りにも意外過ぎる答えに思わず聞き直してしまった。
「何だよ、同じ事を何度も言わせるなよ。いいか?蜂の巣を見つけたら見なかった事にする。ただ、それだけの事だ。リーダーだってお前に言ってただろう?時には手を抜く事も大事だって。」
「え・・・?」
つ、つまり・・あの台詞はそう言う意味だったのか・・・・手を抜くところは抜くと言う意味は・・・蜂の巣を見つけた場合、駆除せずに見なかった事にしろと・・・。でもそれで今迄被害は出なかったのだろうか・・?だけど・・・そんな・・ハチの巣があっても目をつむるなんて真似、私には・・・・!
「はい、分かりました。見なかった事にしておきますね。」
ニッコリと笑って返事をする。
誰だって蜂は怖い。今日・明日と蜂の巣は見つからなかった事にして・・・当日運悪く蜂が暴れれば・・あら、いつの間に蜂の巣が・・・と胡麻化せば良いのだっ!
大分・・・私もずるい人間になって来たかもしれないと感じた瞬間であった。
湖に着いた私達は早速芝刈り機を持って馬車から降りた。
「う・・・うわあああ・・・。」
私は思わず大きな声を上げてしまった。
で・・でかいっ!私はてっきり大きな池レベルと考えていたのだが・・・なにこれっ!野球場位の広さの湖じゃないのっ!こ・・この周囲の草刈りをしろというのか・・・しかもたった2人きりで・・・。
「あ、あの!クライスさん!」
思わず声が裏返ってしまった。
「何だよ、今度は何の用だ?」
「あ、あの~も・・・もしやこの湖の周囲を全て草刈りをする・・・と言う事なのでしょうか?」
無理だ、こんなの絶対に出来っこない。
「ああ、それも・・・しなくていい。」
「へ?」
「いいか、会場のテントはここに設置されるから・・・このテントから左右
・・せいぜい500m範囲内の草を刈ればいい。」
え・・・?な、何という手抜きな・・・・しかし、トビーの台詞が頭の中に蘇って来る。手を抜くところは抜く・・・・。今こそ、実践する時なのだ!
私はジョージとは反対周りで草刈りをしていたが・・・本当にそんな草刈りの方法で良いのだろうか?!
しかし・・・私はやはり、根が真面目な日本人。手抜きと言うよりはこれではまるでサボりの様だ。
う~ん・・・何か草刈りに有効なアイテムは無いだろうか・・・。腕時計式操作パネルで、ピッピッと検索をし・・・おあつらえ向きなアイテムを発見した。
『固形燃料型芝刈り』
こちらのアイテムはボウボウに伸び切った草を炎で綺麗に均一な長さに焼き払う事が出来る便利な草刈りアイテムです。周囲10Kまでが有効範囲です。ぜひ、ご利用下さい。尚、こちらは一度使えばアイテムボックスから消えてしまいます。
うわあ・・・何て便利なアイテムなんだ・・・だけど、私が持っているポイントは現在600ポイントのみ。どうしよう足りるかな・・・?
恐る恐る必要ポイントをチェックすると・・なんと必要ポイントは500。
やった!これなら・・・交換できるっ!
私は迷わず。『交換』をタップした。
出てきたのは長い杖の様なチョークに手のひらサイズの固形燃料。
そして取説が一冊。
私は早速取説を読んだ―。
「クライスさーん!」
私は手を振って時計回りに草刈り作業を行っているジョージに駆け寄ると言った。
「クライスさん、すみませんが馬車に乗ってこの湖を1周して下さい!お願いします!絶対に・・・損な話では無いので!」
「何だよ、全く忙しい時に・・・・。」
しかし、ブツブツ言いながらもジョージは馬車を出してくれた。そして湖の周りを1周する。
その間、私は長いチョークを使って地面に印を書いていく・・・。
「おい、お前・・、さっきから何をしてるんだ?」
訝し気にジョージは尋ねて来たが。、私は意味深な笑みを浮かべると言った。
「まあ、見ていてくださいよ。じきに・・面白いショーをお見せしますから。」
思わせぶりな台詞をジョージに言うがこれは実は詭弁だ。仮に・・うまく草を燃やせなかった場合は所詮これはショーだと言えば胡麻化せると思ったからだ。
やがて馬車は1周した。
「ふふふ・・・では見ていてくださいね?」
私は言うと、『固形燃料型芝刈り』を地面の上に投げ捨てた。
途端に炎が辺りを包む。
「ウワアアアアッ?!」
当たり一帯が炎に包まれるので、悲鳴を上げるジョージ。私も予想外に燃え盛る炎を見て、思わず叫びそうになり口を押えた。
やがて炎は湖の周囲を覆いつくし・・・・一瞬で鎮火した。
そして・・・あれ程草ぼうぼうに伸び切っていた湖周辺の草は・・・・綺麗に刈り取られていたのだ。
「す・・・すごい・・・・。」
ジョージは感嘆の声を上げている。
よ・・良かった・・・成功して・・。本当は自信無かったんだよね。
しかし、私はそんな事をおくびにも出さずに笑顔で言った。
「どうですか?クライスさん。」
するとジョージは私に振り向いた。その顔は・・・笑顔だった
「ああ。見直したよ。エリス。」
え?いつの間にか・・エリスって呼んでるよ。
そして・・・私はジョージの頭の上にハートのゲージが徐々に姿を現してくるのを見た。
ま・・・まさか・・・ジョージ迄・・こ、攻略対象に・・・?
好感度の数字は30を指していた—。
「ふ~ん・・・。野外パーティーがあるのか・・・。そう言えば以前ダンが言っていた野外パーティーって・・・ひょっとしてこの事かあ・・・。昨日のメッセージでは攻略キャラとの距離を縮められるようなイベントがあります、何て書いてあったけど・・・メイドの私には関係ないイベントじゃない。」
まあ、別に私は野外パーティーなんかこれっぽっちも興味が無い。いや、それどころかきっと私達従業員はそのパーティーで馬車馬の如く働かされるに決まってる。
「ああ・・・嫌だなあ・・・パーティー会場で仕事なんて言ったら、当然エリスを知ってる人達に会って・・嫌な目に遭いそうな気がするよ・・・。はああ・本当に憂鬱だ・・・。」
ブツブツ言いながら起きる私。さて・・・仕事に行きますか・・・。
今朝もいつものように厨房でダンのお手伝いを済ませると、従業員一同、トビーに呼び出された。
「皆、知っての通り、3日後に学院の野外パーティーのイベントが開催される。そこで、我々スタッフの中から準備の為に2名こちらの仕事に行って貰いたいのだが・・・誰か希望者はいるか?」
トビーは全員を見渡しながら言う。
「はい!」
私は元気よく手を上げた。
なにせこの仕事はポイントが多く貰えるらしいから、引き受けるのは当然でしょう!
しかし、私以外は誰も手を上げない。挙句の果てに・・・。
トビーは何故か絶句したように私を見るし、アンにダン、ニコルも私を見て口をぽかんと開けている。
そしてトビーは私が手を上げているにも関わらず、視線を逸らしてさらに言う。
「え~と・・・誰も希望者はいないのか?それならこちらから指名するぞ・・。」
すると、途端に辺りがざわざわと騒ぎ出す。おのれ・・・トビーめ。・・私の存在を無視するつもりか?!
「はい!トビーさんっ!私さっきから手を上げているじゃないですかっ!」
私は手を上げながら大声でトビーに呼びかけた。すると何故か半分涙目になって私を見るトビー。
「エ・・・エリス・・・。君は・・またそんな我儘を言ってこの僕を困らせるつもりかい・・?」
涙目の中にも熱を込めた瞳、甘ったるい声で私に訴えて来る様はまさしく鳥肌ものだ。な・・・何なんだ・・・?一体あの男は・・・?!
他の人達もトビーを白い目で見ている。
しかし、そこに口を出したのがジャネットだった。
「あら・・・いいんじゃないの?こうして自分からやりたいって志願しているんだから・・いくらトビーのお気に入りだからって・・・えこひいきは良く無いわよ?」
言いながらジャネットはジロリとトビーを睨みつける。
「ああ。俺もそう思うな、トビー。大体、本人がやりたいって言ってるんだから、やらせてやればいいじゃないか。」
ジョージも腕組みをしながら言う。
「「おい!ジョージッ!!」」
すると何故かダンとニコルが同時に席を立ち、ジョージを睨み付ける有様だ。
う~ん・・・謎だ。もしかすると・・・この仕事も実はとんでもない内容なのだろうか・・・?
立候補したけど、既に後悔の念が押し寄せて来る。
「よ・・・よし、分かった。それならこの仕事はエリスに任せる。それでは後の1人は・・・お前だっ!ジョージッ!お前にこの仕事をやらせるからなっ?!」
ビシイッとジョージを指さすトビー。
「ええええええっ?!そ、そんな・・・!横暴だっ!こんなのは特権乱用だっ!」
イケメン男ジョージは長い髪を振り乱しながら喚く。
あ~あ・・・。折角のイケメン男なのに・・・台無しだ。全く残念極まりない。
「うるさい!俺に逆らうなっ!俺はリーダーだっ!エリスに詳しく仕事内容を教えてやるんだぞ?いいか・・・決してサボったり手を抜いたりしてエリスの足を引っ張るんじゃないぞ・・・。」
トビーは恐ろしい形相でジョージを睨み付けると、今度は急に笑顔になってツカツカと近付いて来ると、私をじっと見つめながら甘ったるい声で言った。
「いいかい、エリス。君は・・・とても真面目な女性だから、きっとこの仕事も全身全霊を掛けて頑張るだろう・・・。だけど、これは僕からの忠告だよ。真面目に仕事をする事はないんだ・・・。時には手を抜く事も大事だよ。何、少々手抜きをしたって構わないんだからね?」
「は、はあ・・・。わ・・分かりました・・・。」
引きつった笑みを浮かべながら返事をする私。
しかし・・・従業員の責任者のトップがそんな事を言っていいのだろうか?
私はこの先の学園の行く末を案じるのだった。
「全く・・・何故俺がこんなきつい仕事をしなくてはならなんだ・・!」
私とジョージは今野外パーティー会場の舞台となる、学園から500m程離れた場所にある湖を目指して荷馬車に乗って向かっていた。
荷台には沢山の道具が積まれている。
荷物を良く見ると・・・主にホームセンターの園芸コーナーで売られているかの様なアイテムが殆どを占めている。
「あの~クライスさん。私達は今日一体どのような仕事をするのでしょうか?」
ずっと仏頂面のジョージの隣に黙って座っているのもいたたまれず、彼に話しかけてみた。
「何だよ・・・。お前・・・やっぱり何も知らないで・・この仕事を引き受けたんだな?」
ますますジョージは不機嫌になってゆく。
「は。はあ・・・。」
そんな事言ったって、誰も仕事内容を教えてくれなかったじゃ無いのよっ!私は心の中で毒づいた。
「きょうの俺達の仕事は湖の周りの草刈りだ。まあ湖自体はそれ程大きくは無いからあまり問題は無いのだが・・後は・・・周辺に木が多く生えているからハチの巣が無いか・・・チェックしてまわる。」
ハチの巣・・・?何だか嫌な予感がしてきた。
「あ・・あの・・・もしや・・ハチの巣を見つけたとしたら・・・?」
恐る恐るジョージに尋ねる。
「そんなのは駆除するに決まっているだろう?」
「誰がですか?」
「俺達に決まってる!ったく・・・だからこの仕事やりたくなかったんだ。」
ジョージは益々不機嫌になって来る。
「そ、そんな!私・・・蜂の駆除なんて無理ですよっ!やった事も無いし!」
「ああ、俺だってそうだ!だから・・・仮に蜂の巣を見つけたら・・・。」
「見つけたら?」
「・・・見なかったことにするんだ。」
「はい?あの・・もう一度仰って頂けますか?」
余りにも意外過ぎる答えに思わず聞き直してしまった。
「何だよ、同じ事を何度も言わせるなよ。いいか?蜂の巣を見つけたら見なかった事にする。ただ、それだけの事だ。リーダーだってお前に言ってただろう?時には手を抜く事も大事だって。」
「え・・・?」
つ、つまり・・あの台詞はそう言う意味だったのか・・・・手を抜くところは抜くと言う意味は・・・蜂の巣を見つけた場合、駆除せずに見なかった事にしろと・・・。でもそれで今迄被害は出なかったのだろうか・・?だけど・・・そんな・・ハチの巣があっても目をつむるなんて真似、私には・・・・!
「はい、分かりました。見なかった事にしておきますね。」
ニッコリと笑って返事をする。
誰だって蜂は怖い。今日・明日と蜂の巣は見つからなかった事にして・・・当日運悪く蜂が暴れれば・・あら、いつの間に蜂の巣が・・・と胡麻化せば良いのだっ!
大分・・・私もずるい人間になって来たかもしれないと感じた瞬間であった。
湖に着いた私達は早速芝刈り機を持って馬車から降りた。
「う・・・うわあああ・・・。」
私は思わず大きな声を上げてしまった。
で・・でかいっ!私はてっきり大きな池レベルと考えていたのだが・・・なにこれっ!野球場位の広さの湖じゃないのっ!こ・・この周囲の草刈りをしろというのか・・・しかもたった2人きりで・・・。
「あ、あの!クライスさん!」
思わず声が裏返ってしまった。
「何だよ、今度は何の用だ?」
「あ、あの~も・・・もしやこの湖の周囲を全て草刈りをする・・・と言う事なのでしょうか?」
無理だ、こんなの絶対に出来っこない。
「ああ、それも・・・しなくていい。」
「へ?」
「いいか、会場のテントはここに設置されるから・・・このテントから左右
・・せいぜい500m範囲内の草を刈ればいい。」
え・・・?な、何という手抜きな・・・・しかし、トビーの台詞が頭の中に蘇って来る。手を抜くところは抜く・・・・。今こそ、実践する時なのだ!
私はジョージとは反対周りで草刈りをしていたが・・・本当にそんな草刈りの方法で良いのだろうか?!
しかし・・・私はやはり、根が真面目な日本人。手抜きと言うよりはこれではまるでサボりの様だ。
う~ん・・・何か草刈りに有効なアイテムは無いだろうか・・・。腕時計式操作パネルで、ピッピッと検索をし・・・おあつらえ向きなアイテムを発見した。
『固形燃料型芝刈り』
こちらのアイテムはボウボウに伸び切った草を炎で綺麗に均一な長さに焼き払う事が出来る便利な草刈りアイテムです。周囲10Kまでが有効範囲です。ぜひ、ご利用下さい。尚、こちらは一度使えばアイテムボックスから消えてしまいます。
うわあ・・・何て便利なアイテムなんだ・・・だけど、私が持っているポイントは現在600ポイントのみ。どうしよう足りるかな・・・?
恐る恐る必要ポイントをチェックすると・・なんと必要ポイントは500。
やった!これなら・・・交換できるっ!
私は迷わず。『交換』をタップした。
出てきたのは長い杖の様なチョークに手のひらサイズの固形燃料。
そして取説が一冊。
私は早速取説を読んだ―。
「クライスさーん!」
私は手を振って時計回りに草刈り作業を行っているジョージに駆け寄ると言った。
「クライスさん、すみませんが馬車に乗ってこの湖を1周して下さい!お願いします!絶対に・・・損な話では無いので!」
「何だよ、全く忙しい時に・・・・。」
しかし、ブツブツ言いながらもジョージは馬車を出してくれた。そして湖の周りを1周する。
その間、私は長いチョークを使って地面に印を書いていく・・・。
「おい、お前・・、さっきから何をしてるんだ?」
訝し気にジョージは尋ねて来たが。、私は意味深な笑みを浮かべると言った。
「まあ、見ていてくださいよ。じきに・・面白いショーをお見せしますから。」
思わせぶりな台詞をジョージに言うがこれは実は詭弁だ。仮に・・うまく草を燃やせなかった場合は所詮これはショーだと言えば胡麻化せると思ったからだ。
やがて馬車は1周した。
「ふふふ・・・では見ていてくださいね?」
私は言うと、『固形燃料型芝刈り』を地面の上に投げ捨てた。
途端に炎が辺りを包む。
「ウワアアアアッ?!」
当たり一帯が炎に包まれるので、悲鳴を上げるジョージ。私も予想外に燃え盛る炎を見て、思わず叫びそうになり口を押えた。
やがて炎は湖の周囲を覆いつくし・・・・一瞬で鎮火した。
そして・・・あれ程草ぼうぼうに伸び切っていた湖周辺の草は・・・・綺麗に刈り取られていたのだ。
「す・・・すごい・・・・。」
ジョージは感嘆の声を上げている。
よ・・良かった・・・成功して・・。本当は自信無かったんだよね。
しかし、私はそんな事をおくびにも出さずに笑顔で言った。
「どうですか?クライスさん。」
するとジョージは私に振り向いた。その顔は・・・笑顔だった
「ああ。見直したよ。エリス。」
え?いつの間にか・・エリスって呼んでるよ。
そして・・・私はジョージの頭の上にハートのゲージが徐々に姿を現してくるのを見た。
ま・・・まさか・・・ジョージ迄・・こ、攻略対象に・・・?
好感度の数字は30を指していた—。
0
お気に入りに追加
112
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
やり直し令嬢の備忘録
西藤島 みや
ファンタジー
レイノルズの悪魔、アイリス・マリアンナ・レイノルズは、皇太子クロードの婚約者レミを拐かし、暴漢に襲わせた罪で塔に幽閉され、呪詛を吐いて死んだ……しかし、その呪詛が余りに強かったのか、10年前へと再び蘇ってしまう。
これを好機に、今度こそレミを追い落とそうと誓うアイリスだが、前とはずいぶん違ってしまい……
王道悪役令嬢もの、どこかで見たようなテンプレ展開です。ちょこちょこ過去アイリスの残酷描写があります。
また、外伝は、ざまあされたレミ嬢視点となりますので、お好みにならないかたは、ご注意のほど、お願いします。
ど天然で超ドジなドアマットヒロインが斜め上の行動をしまくった結果
蓮
ファンタジー
アリスはルシヨン伯爵家の長女で両親から愛されて育った。しかし両親が事故で亡くなり叔父一家がルシヨン伯爵家にやって来た。叔父デュドネ、義叔母ジスレーヌ、義妹ユゲットから使用人のように扱われるようになったアリス。しかし彼女は何かと斜め上の行動をするので、逆に叔父達の方が疲れ切ってしまうのである。そしてその結果は……?
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
表紙に素敵なFAいただきました!
ありがとうございます!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
【完結】リクエストにお答えして、今から『悪役令嬢』です。
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「断罪……? いいえ、ただの事実確認ですよ。」
***
ただ求められるままに生きてきた私は、ある日王子との婚約解消と極刑を突きつけられる。
しかし王子から「お前は『悪』だ」と言われ、周りから冷たい視線に晒されて、私は気づいてしまったのだ。
――あぁ、今私に求められているのは『悪役』なのだ、と。
今まで溜まっていた鬱憤も、ずっとしてきた我慢も。
それら全てを吐き出して私は今、「彼らが望む『悪役』」へと変貌する。
これは従順だった公爵令嬢が一転、異色の『悪役』として王族達を相手取り、様々な真実を紐解き果たす。
そんな復讐と解放と恋の物語。
◇ ◆ ◇
※カクヨムではさっぱり断罪版を、アルファポリスでは恋愛色強めで書いています。
さっぱり断罪が好み、または読み比べたいという方は、カクヨムへお越しください。
カクヨムへのリンクは画面下部に貼ってあります。
※カクヨム版が『カクヨムWeb小説短編賞2020』中間選考作品に選ばれました。
選考結果如何では、こちらの作品を削除する可能性もありますので悪しからず。
※表紙絵はフリー素材を拝借しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役令嬢は所詮悪役令嬢
白雪の雫
ファンタジー
「アネット=アンダーソン!貴女の私に対する仕打ちは到底許されるものではありません!殿下、どうかあの平民の女に頭を下げるように言って下さいませ!」
魔力に秀でているという理由で聖女に選ばれてしまったアネットは、平民であるにも関わらず公爵令嬢にして王太子殿下の婚約者である自分を階段から突き落とそうとしただの、冬の池に突き落として凍死させようとしただの、魔物を操って殺そうとしただの──・・・。
リリスが言っている事は全て彼女達による自作自演だ。というより、ゲームの中でリリスがヒロインであるアネットに対して行っていた所業である。
愛しいリリスに縋られたものだから男としての株を上げたい王太子は、アネットが無実だと分かった上で彼女を断罪しようとするのだが、そこに父親である国王と教皇、そして聖女の夫がやって来る──・・・。
悪役令嬢がいい子ちゃん、ヒロインが脳内お花畑のビッチヒドインで『ざまぁ』されるのが多いので、逆にしたらどうなるのか?という思い付きで浮かんだ話です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
一家処刑?!まっぴら御免ですわ! ~悪役令嬢(予定)の娘と意地悪(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。
この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。
最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!!
悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる