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第16日目 攻略対象からの呼び出し 後編
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「あ・・・あの、エリオット様。何故エリスさんを・・・風紀委員室に呼ばれるのですか・・?」
オリビアが唇をわななかせながらエリオットに尋ねた。うん、私もそれを聞きたいよ。良かった、オリビアが替わりに尋ねてくれて。
しかし、エリオットの答えは冷たいものだった。
「俺が誰を呼び出そうが、お前には何の関係も無いと思わないか?オリビア。」
そして冷え切った目でオリビアを見つめる・・・・・。
「!」
オリビアが顔を青ざめて固まってしまった。
ひええええっ!な・なんて冷たい目でオリビアを見るのだろう・・・。ひょっとしてもうオリビアには興味が無くなってしまったのだろうか?だってエリオットには元々親同士が決めた事とは言え・・同じ学園に婚約者がいたのだから。
オリビアめ・・・・・。全キャラを攻略したからと油断しきっていたな?そもそもはアンディばかりとデートをしていた為、他の白銀のナイト達をないがしろにしてきたが為に・・・この私、悪役令嬢エリスに興味が湧いてしまったんじゃないの?大体、エリスはそのどぎついメイクさえやめれば、恐らくヒロインのオリビアよりも美人だと思うんだよね。
「ベネット。いいか?必ず昼休み・・・風紀委員室へ来るんだぞ?待ってるからな?」
エリオットは何故か私に念押しし、あろう事か去り際に私の頭を軽くポンポンと2回叩くと背を向けて行ってしまった。
ヒッ!な・・・なんて事をしてくれるのだ。あのエリオットは・・・。
見るとオリビアが私を憎々し気に見つめているし、彼女の友人達も私の事を敵意のこもった目で睨んでいる。
もうこれ以上その場にいたたまれなくなった私は頭を下げると逃げるようにその場を立ち去ったのである。
「うわあ・・・。たまっちゃってるなあ・・・。」
今朝のトラブルのせいで厨房に行ってみると、汚れものの食器が大量にぷかぷかとシンクの中に浮かんでいる。一体どの位の洗い物があるのだろうか?しかも今日はアンがお休みなので、これを1人でやらなければならないのだ。
「う~ん・・・。今のスキルはどれくらいだろう・・・。」
腕時計としてはめている操作パネルをピッピッと操作して、現在のスキルポイントを表示してみると・・・なんと!30000ポイントを超えている!
フフフ・・・これなら・・・ひょっとしていけるかもしれない!
次に私はメイドスキルメニューを表示させる。さて・・・何かこの食器洗いに有効なスキルは無いかなあ・・・。
画面を次々とタップしてゆき・・ついに私は『業務用食洗器RRO』なるものを発見したのだ。
見た目は楕円形の青く光る水晶のようにも見える。
交換スキルポイントは29900ポイント。おおっ!ギリギリ足りたっ!
どれどれ・・・このアイテムはどのように使うのだろうか・・・?
私は早速使い方の画面をタップする。
『業務用食洗器PRO』
こちらのアイテムはメイドレベルが20を超えた方のみが扱う事の出来るアイテムです。使い方は簡単。シンクの中にこちらのアイテムを中に投入すれば、そこから自動的にお湯と洗剤が放出されます。お湯と洗剤がシンク内を満たすとそこから自動的に食器洗いが始まります。これで油汚れもすっきり。仕上がり時間は量にもよりますが、約200人分の食器を一度にまとめ洗いをする事が可能です。またタイマーセットまで出来ます。なお、こちらのアイテムは使用後は自動的にアイテムボックスに収納されますので回収の手間はかかりません。
おおっ!なんて素晴らしいアイテムなのだろうっ!これがあれば・・・もう私一人で食器洗いをする事が出来るし、ポイントもたまる。おまけにその間には別の仕事をする事だって可能ではないか・・・っ!
私は早速、『業務用洗濯機PRO』のアイテムをタップした・・・・!
「フンフンフ~ン・・・。」
私は鼻歌を歌いながら今最高にご機嫌な気持ちで中庭の掃除をしていた。
いや~・・・それにしても楽ちんだねえ。こうして私の分身?のように自動的に食器を洗ってくれるのだから・・・・仕上がりのタイマー時間は1時間半後にセットした。あと余裕で1時間は庭掃除に専念することが出来る。
竹ぼうきでごみを掃いて塵取りで集めていると・・・背後から突然声をかけられた。
「ふ~ん・・・。噂は本当だったんだな?」
え・も、もしやその声は・・・?
振り向くとそこに立っていたのはこのゲームのメインヒーローのアンディだった。
珍しいことに今日は1人である。まあさっきオリビアは女生徒達と一緒にいたからな・・・。
アンディの頭の上の好感度を見ると・・相変わらず好感度はマイナス90である
そんな私に対して好感度の低いアンディが声をかけるなんて・・・謎だ。
「おはようございます、スチュワート様。」
ぺこりと頭を下げて、次に顔を上げると・・・案の定。
ピロリンと音が鳴り液晶画面が表示される。
『攻略対象が現れました。好感度を上げる選択肢を選んでください』
1 今度ご一緒にランチに行きませんか?
2 お1人とは珍しいですね
3 今日も素敵ですね
4 何か御用でしょうか?
う・・・1と4の選択肢はまず無いな。そう言えばこの間の休暇の日に出会った時、たまには一人になりたい・・的な話しをしていたような気がするし・・・。よし。ここは・・。
2を選択だ。
「お1人とは珍しいですね?」」
果たしてこの選択はあっていたのか・・・ドキドキしながらつい視線は上目遣いになってしまう。
すると・・・アンディは口を開けてポカンとした顔で私を見つめ・・ハッと我に返ったかのように咳ばらいをすると言った。
「あ、ああ。今日の授業は男女別々の授業だったからな。そういえばベネット。この間の温泉はどうだった?」
「ええ、とても良かったですよ。日常を忘れてリラックスできた感じです。」
「で・・一人で行っても楽しめそうな場所だろうか?」
そこへまたまた液晶画面が表示される。
『攻略対象の質問に答えて下さい。』
1 ええ、多分一人で行っても楽しめます
2 一人はあまりお勧めしません
3 さあ、どうでしょう?一人では無かったので
4 御想像にお任せします
う~ん・・・嘘をついても仕方が無いし、ここは正直に伝えるか。
「さあ、どうでしょう?一人では無かったので・・・。」
「な・・何?そうなのか?一体誰と一緒だったのだ?!」
そこへ何故か大袈裟な位反応するアンディ。え?何故・・・?
「あ・・あの・・・たまたまフレッド様と入口で一緒になったので・・・。」
アンディのあまりの迫力に押されつつ、私が答えるとアンディは眉間にしわを寄せた。
「何?フレッド・・・だと?」
ああっ!こ、これは・・きっと選択肢を選ぶのを失敗してしまったのだ!く・・・。
何たる不覚・・・・。あのエリスのくせにフレッドを名前で呼ぶなんて・・と思われたに違いない。
「す・す・すみませんっ!モ・・モリス様に名前で呼ぶように言われていたので・・・!わ、私ごときが・・図々しい真似を・・っ!」
「いや、別にそんな事を言ってるわけじゃないんだ。道理でな・・・と思っただけなんだ。気にするな。」
何故か今度はアンディが慌てたように私に言う。
「この間・・折角フレッドはオリビアと一緒に出掛けようとしていたのに、俺まで2人の外出に付いて行く事になって・・結局フレッドはあの日偶然出会ったお前達と行動を共にする事になってしまったから、今朝あいつに言ったんだ。今度の休暇はお前がオリビアといっしょに過ごせと。」
「はあ・・・。」
何だろう?何か嫌な予感がしてきたな・・・。
「するとフレッドの口から驚くべき言葉が出てきたんだ。もうオリビアには興味が無いと。別に気になる女性が出来たから、オリビアと出掛けるつもりは無いと言うんだ。
それに・・・昨日のモンスター討伐・・・お前が参加する事を知ったら、フレッドが青ざめた顔をして真っ先に手を上げたんだ。アベルもジェフリーもその後すぐに手を上げていたが・・・ベネット。お前・・彼等に何かしたか?」
グイッと顔を近付けてくるアンディ。
ひいいいっ!な・・何故そんなに近付いて来るの?!
「わ・・分かりませんっ!私は何もしていませんから・・・っ!」
小刻みに震えてアンディを見つめると、何故か彼は、ハッとした表情を浮かべると言った。
「今ので分かった。・・・そう言う事か・・・。」
「?」
なにやらアンディは小声で小さく呟いた。
「悪かったな。掃除の邪魔をして。それじゃ。」
そしてアンディは背中を向けて去ってゆく。そして・・・好感度は・・マイナス50になっていた・・・。
『おめでとうございます。ヒロインお気に入りの攻略対象の好感度を上げる事が出来来たので500ポイントを差し上げます・・。』
しかし、液晶画面よりも私は何故アンディの好感度が上がったのか、分からず立ち尽くしていた—。
昼休み—
私は憂鬱な思いで『風紀委員室』の前に立っていた。ウウウ・・一体私に何の用事があるっていうのよ。本来ならガルシアにお弁当を作って貰って『ノッポ』と『ベソ』の元を訪ねようかと思っていたのに・・・。でも仕方が無い。
すうう~ッと深呼吸すると私は震える手でドアをノックした。
「レーン様・・・。エリス・ベネットですが・・・。」
「ああ、来たか。中へ入ってくれ。」
部屋の中からエリオットの声がする。
「はい・・・。失礼致します・・・。」
若干震える声を押さえつつ、ドアをカチャリと開けて・・中へ入ると、そこには待ち構えていたかのように椅子に机に向かい、椅子に座ったエリオットの姿があった。
私はチラリとエリオットの好感度をチェックすると、やはり彼の・・・ん?
何とエリオットの好感度が-70になっているのだ。
え?え?一体どういう事・・・?私は一度もエリオットの好感度が上がるような真似をしていないのに・・・?
「どうしたんだ?ベネット。先程から目を擦って・・・。」
エリオットが不思議そうな顔で尋ねて来た。
いやいや、不思議なのはむしろ貴方の方ですよ。何故何もしない内から好感度が上がっているのですか?!
「い、いえ。何でもありません。それで・・・どのようなご用件でしょうか?レーン様。」
「ああ、この間・・・お前の事を疑って、強く責めてしまったので・・謝罪をしたかったんだ。」
はい?まさか・・それだけの事でこの私を呼び出したわけ?
すると液晶画面がピロリンと表示される。
『攻略対象の好感度を上げる選択肢を選んで下さい。』
1 その事なら気にしないで下さい
2 わざわざそれだけの事で呼ばないで下さい
3 誤解されるような真似はしないで下さい
ううう・・。ここは普通に考えれば1を選択するところだが・・・今日は自分の気持ちで答えたい!
深呼吸すると私はエリオットに向き直った。
「レーン様・・・。誤解されるような真似はしないで下さい。」
「え?何だって?」
「オリビア様の前で冷たい態度を取られて、彼女の前で私をここに呼び出すなんて・・・もう少しオリビア様の気持ちをお考え下さい。オリビア様と・・・恋仲なのですよね?それなのに彼女の前で・・・・しかも私の様な女に親し気な態度を取れば
オリビア様が傷つきますよ?」
ああ・・。言ってしまった。だけど・・・この際エリオットの好感度なんか、もうどうでもいい・・・?
私はエリオットの好感度のハートのゲージを見て、思わず目を見張った。
な・・・なぜ・・・?!
エリオットの好感度は・・マイナス30になっていた・・・。
あの後―。
何故かエリオットには、謝罪された上に私の事を今迄誤解した目で見ていてすまなかったと謝罪され、お詫びの印にと学園のカフェの無料コーヒー券を2枚貰った。
まあ、ここは貰えるものなら貰っておこう。
その後—昼休みを終えた私は馬車馬のように働いた。
そして1日の仕事を終えて、私はアンの元を訪ねてみた。
「アン。具合はどう?」
「エリス、来てくれたんだ、有難う。」
アンは嬉しそうに言う。
そして私は今日の出来事を色々アンに報告し・・・最後に言った。
「アン。私、明日から食堂で朝ご飯食べるね。」
「ええっ?!な・・何で?!」
「だって、恋人達の2人きりの時間を邪魔する訳に行かないでしょう?」
そしてにっこり笑った—。
『お疲れさまでした。第16日目無事終了致しました。今週は攻略キャラとの距離を縮められるようなイベントがあります。是非この機会にあまり親しくない相手と積極的に交流を深めて下さい。好感度を上げる絶好のチャンスです。頑張って下さい』
オリビアが唇をわななかせながらエリオットに尋ねた。うん、私もそれを聞きたいよ。良かった、オリビアが替わりに尋ねてくれて。
しかし、エリオットの答えは冷たいものだった。
「俺が誰を呼び出そうが、お前には何の関係も無いと思わないか?オリビア。」
そして冷え切った目でオリビアを見つめる・・・・・。
「!」
オリビアが顔を青ざめて固まってしまった。
ひええええっ!な・なんて冷たい目でオリビアを見るのだろう・・・。ひょっとしてもうオリビアには興味が無くなってしまったのだろうか?だってエリオットには元々親同士が決めた事とは言え・・同じ学園に婚約者がいたのだから。
オリビアめ・・・・・。全キャラを攻略したからと油断しきっていたな?そもそもはアンディばかりとデートをしていた為、他の白銀のナイト達をないがしろにしてきたが為に・・・この私、悪役令嬢エリスに興味が湧いてしまったんじゃないの?大体、エリスはそのどぎついメイクさえやめれば、恐らくヒロインのオリビアよりも美人だと思うんだよね。
「ベネット。いいか?必ず昼休み・・・風紀委員室へ来るんだぞ?待ってるからな?」
エリオットは何故か私に念押しし、あろう事か去り際に私の頭を軽くポンポンと2回叩くと背を向けて行ってしまった。
ヒッ!な・・・なんて事をしてくれるのだ。あのエリオットは・・・。
見るとオリビアが私を憎々し気に見つめているし、彼女の友人達も私の事を敵意のこもった目で睨んでいる。
もうこれ以上その場にいたたまれなくなった私は頭を下げると逃げるようにその場を立ち去ったのである。
「うわあ・・・。たまっちゃってるなあ・・・。」
今朝のトラブルのせいで厨房に行ってみると、汚れものの食器が大量にぷかぷかとシンクの中に浮かんでいる。一体どの位の洗い物があるのだろうか?しかも今日はアンがお休みなので、これを1人でやらなければならないのだ。
「う~ん・・・。今のスキルはどれくらいだろう・・・。」
腕時計としてはめている操作パネルをピッピッと操作して、現在のスキルポイントを表示してみると・・・なんと!30000ポイントを超えている!
フフフ・・・これなら・・・ひょっとしていけるかもしれない!
次に私はメイドスキルメニューを表示させる。さて・・・何かこの食器洗いに有効なスキルは無いかなあ・・・。
画面を次々とタップしてゆき・・ついに私は『業務用食洗器RRO』なるものを発見したのだ。
見た目は楕円形の青く光る水晶のようにも見える。
交換スキルポイントは29900ポイント。おおっ!ギリギリ足りたっ!
どれどれ・・・このアイテムはどのように使うのだろうか・・・?
私は早速使い方の画面をタップする。
『業務用食洗器PRO』
こちらのアイテムはメイドレベルが20を超えた方のみが扱う事の出来るアイテムです。使い方は簡単。シンクの中にこちらのアイテムを中に投入すれば、そこから自動的にお湯と洗剤が放出されます。お湯と洗剤がシンク内を満たすとそこから自動的に食器洗いが始まります。これで油汚れもすっきり。仕上がり時間は量にもよりますが、約200人分の食器を一度にまとめ洗いをする事が可能です。またタイマーセットまで出来ます。なお、こちらのアイテムは使用後は自動的にアイテムボックスに収納されますので回収の手間はかかりません。
おおっ!なんて素晴らしいアイテムなのだろうっ!これがあれば・・・もう私一人で食器洗いをする事が出来るし、ポイントもたまる。おまけにその間には別の仕事をする事だって可能ではないか・・・っ!
私は早速、『業務用洗濯機PRO』のアイテムをタップした・・・・!
「フンフンフ~ン・・・。」
私は鼻歌を歌いながら今最高にご機嫌な気持ちで中庭の掃除をしていた。
いや~・・・それにしても楽ちんだねえ。こうして私の分身?のように自動的に食器を洗ってくれるのだから・・・・仕上がりのタイマー時間は1時間半後にセットした。あと余裕で1時間は庭掃除に専念することが出来る。
竹ぼうきでごみを掃いて塵取りで集めていると・・・背後から突然声をかけられた。
「ふ~ん・・・。噂は本当だったんだな?」
え・も、もしやその声は・・・?
振り向くとそこに立っていたのはこのゲームのメインヒーローのアンディだった。
珍しいことに今日は1人である。まあさっきオリビアは女生徒達と一緒にいたからな・・・。
アンディの頭の上の好感度を見ると・・相変わらず好感度はマイナス90である
そんな私に対して好感度の低いアンディが声をかけるなんて・・・謎だ。
「おはようございます、スチュワート様。」
ぺこりと頭を下げて、次に顔を上げると・・・案の定。
ピロリンと音が鳴り液晶画面が表示される。
『攻略対象が現れました。好感度を上げる選択肢を選んでください』
1 今度ご一緒にランチに行きませんか?
2 お1人とは珍しいですね
3 今日も素敵ですね
4 何か御用でしょうか?
う・・・1と4の選択肢はまず無いな。そう言えばこの間の休暇の日に出会った時、たまには一人になりたい・・的な話しをしていたような気がするし・・・。よし。ここは・・。
2を選択だ。
「お1人とは珍しいですね?」」
果たしてこの選択はあっていたのか・・・ドキドキしながらつい視線は上目遣いになってしまう。
すると・・・アンディは口を開けてポカンとした顔で私を見つめ・・ハッと我に返ったかのように咳ばらいをすると言った。
「あ、ああ。今日の授業は男女別々の授業だったからな。そういえばベネット。この間の温泉はどうだった?」
「ええ、とても良かったですよ。日常を忘れてリラックスできた感じです。」
「で・・一人で行っても楽しめそうな場所だろうか?」
そこへまたまた液晶画面が表示される。
『攻略対象の質問に答えて下さい。』
1 ええ、多分一人で行っても楽しめます
2 一人はあまりお勧めしません
3 さあ、どうでしょう?一人では無かったので
4 御想像にお任せします
う~ん・・・嘘をついても仕方が無いし、ここは正直に伝えるか。
「さあ、どうでしょう?一人では無かったので・・・。」
「な・・何?そうなのか?一体誰と一緒だったのだ?!」
そこへ何故か大袈裟な位反応するアンディ。え?何故・・・?
「あ・・あの・・・たまたまフレッド様と入口で一緒になったので・・・。」
アンディのあまりの迫力に押されつつ、私が答えるとアンディは眉間にしわを寄せた。
「何?フレッド・・・だと?」
ああっ!こ、これは・・きっと選択肢を選ぶのを失敗してしまったのだ!く・・・。
何たる不覚・・・・。あのエリスのくせにフレッドを名前で呼ぶなんて・・と思われたに違いない。
「す・す・すみませんっ!モ・・モリス様に名前で呼ぶように言われていたので・・・!わ、私ごときが・・図々しい真似を・・っ!」
「いや、別にそんな事を言ってるわけじゃないんだ。道理でな・・・と思っただけなんだ。気にするな。」
何故か今度はアンディが慌てたように私に言う。
「この間・・折角フレッドはオリビアと一緒に出掛けようとしていたのに、俺まで2人の外出に付いて行く事になって・・結局フレッドはあの日偶然出会ったお前達と行動を共にする事になってしまったから、今朝あいつに言ったんだ。今度の休暇はお前がオリビアといっしょに過ごせと。」
「はあ・・・。」
何だろう?何か嫌な予感がしてきたな・・・。
「するとフレッドの口から驚くべき言葉が出てきたんだ。もうオリビアには興味が無いと。別に気になる女性が出来たから、オリビアと出掛けるつもりは無いと言うんだ。
それに・・・昨日のモンスター討伐・・・お前が参加する事を知ったら、フレッドが青ざめた顔をして真っ先に手を上げたんだ。アベルもジェフリーもその後すぐに手を上げていたが・・・ベネット。お前・・彼等に何かしたか?」
グイッと顔を近付けてくるアンディ。
ひいいいっ!な・・何故そんなに近付いて来るの?!
「わ・・分かりませんっ!私は何もしていませんから・・・っ!」
小刻みに震えてアンディを見つめると、何故か彼は、ハッとした表情を浮かべると言った。
「今ので分かった。・・・そう言う事か・・・。」
「?」
なにやらアンディは小声で小さく呟いた。
「悪かったな。掃除の邪魔をして。それじゃ。」
そしてアンディは背中を向けて去ってゆく。そして・・・好感度は・・マイナス50になっていた・・・。
『おめでとうございます。ヒロインお気に入りの攻略対象の好感度を上げる事が出来来たので500ポイントを差し上げます・・。』
しかし、液晶画面よりも私は何故アンディの好感度が上がったのか、分からず立ち尽くしていた—。
昼休み—
私は憂鬱な思いで『風紀委員室』の前に立っていた。ウウウ・・一体私に何の用事があるっていうのよ。本来ならガルシアにお弁当を作って貰って『ノッポ』と『ベソ』の元を訪ねようかと思っていたのに・・・。でも仕方が無い。
すうう~ッと深呼吸すると私は震える手でドアをノックした。
「レーン様・・・。エリス・ベネットですが・・・。」
「ああ、来たか。中へ入ってくれ。」
部屋の中からエリオットの声がする。
「はい・・・。失礼致します・・・。」
若干震える声を押さえつつ、ドアをカチャリと開けて・・中へ入ると、そこには待ち構えていたかのように椅子に机に向かい、椅子に座ったエリオットの姿があった。
私はチラリとエリオットの好感度をチェックすると、やはり彼の・・・ん?
何とエリオットの好感度が-70になっているのだ。
え?え?一体どういう事・・・?私は一度もエリオットの好感度が上がるような真似をしていないのに・・・?
「どうしたんだ?ベネット。先程から目を擦って・・・。」
エリオットが不思議そうな顔で尋ねて来た。
いやいや、不思議なのはむしろ貴方の方ですよ。何故何もしない内から好感度が上がっているのですか?!
「い、いえ。何でもありません。それで・・・どのようなご用件でしょうか?レーン様。」
「ああ、この間・・・お前の事を疑って、強く責めてしまったので・・謝罪をしたかったんだ。」
はい?まさか・・それだけの事でこの私を呼び出したわけ?
すると液晶画面がピロリンと表示される。
『攻略対象の好感度を上げる選択肢を選んで下さい。』
1 その事なら気にしないで下さい
2 わざわざそれだけの事で呼ばないで下さい
3 誤解されるような真似はしないで下さい
ううう・・。ここは普通に考えれば1を選択するところだが・・・今日は自分の気持ちで答えたい!
深呼吸すると私はエリオットに向き直った。
「レーン様・・・。誤解されるような真似はしないで下さい。」
「え?何だって?」
「オリビア様の前で冷たい態度を取られて、彼女の前で私をここに呼び出すなんて・・・もう少しオリビア様の気持ちをお考え下さい。オリビア様と・・・恋仲なのですよね?それなのに彼女の前で・・・・しかも私の様な女に親し気な態度を取れば
オリビア様が傷つきますよ?」
ああ・・。言ってしまった。だけど・・・この際エリオットの好感度なんか、もうどうでもいい・・・?
私はエリオットの好感度のハートのゲージを見て、思わず目を見張った。
な・・・なぜ・・・?!
エリオットの好感度は・・マイナス30になっていた・・・。
あの後―。
何故かエリオットには、謝罪された上に私の事を今迄誤解した目で見ていてすまなかったと謝罪され、お詫びの印にと学園のカフェの無料コーヒー券を2枚貰った。
まあ、ここは貰えるものなら貰っておこう。
その後—昼休みを終えた私は馬車馬のように働いた。
そして1日の仕事を終えて、私はアンの元を訪ねてみた。
「アン。具合はどう?」
「エリス、来てくれたんだ、有難う。」
アンは嬉しそうに言う。
そして私は今日の出来事を色々アンに報告し・・・最後に言った。
「アン。私、明日から食堂で朝ご飯食べるね。」
「ええっ?!な・・何で?!」
「だって、恋人達の2人きりの時間を邪魔する訳に行かないでしょう?」
そしてにっこり笑った—。
『お疲れさまでした。第16日目無事終了致しました。今週は攻略キャラとの距離を縮められるようなイベントがあります。是非この機会にあまり親しくない相手と積極的に交流を深めて下さい。好感度を上げる絶好のチャンスです。頑張って下さい』
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