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第7話 迎えの馬車の人物は
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ローレンス王子が去って、ようやく静かになった家庭科室。私は再びドレスづくりに没頭した。フフフ…このドレスにパールを縫い付ければきっとキラキラ光って素敵だろうな…。そんな事を考えながら縫っていると、午後4時を告げる学校のチャイムが鳴り響く。
「え?もうこんな時間?」
いつの間にか教室はすっかり薄暗くなっていた。ドレス作りに夢中になっていたので時間を忘れていた。
「大変。早く帰らなくちゃ」
急いで裁縫箱を片付け、ドレスがシワにならないように丁寧にたたみ、布地でくるむと大きな紙バッグにしまった。
「駄目ね、この部屋に裁縫セットを取りに来ただけなのにいつの間にか縫い物を初めてしまうなんて」
続きは家に帰ってからにしよう。
片付けを済ませた私は1人で家庭科室を後にした―。
****
「え?」
学校を出ると正門の前に見慣れた馬車が止まっていた。あの馬車は…。
近づいていくと馬車の扉が開かれた。
「ミシェル、待っていたよ」
現れたのは今年21歳になったレオン様だった。
「レオン様!まさか迎えに来てくれたのですか?」
「うん、そうだよ」
レオン様が手を差し伸べてくれたので、エスコートされながら馬車に乗り込む。馬車は私が乗り込むとすぐに走り出した。
ガラガラと走る馬車の中、レオン様が口を開いた。
「今日はミシェルに話があって君の屋敷に行ったからね。そしたらまだ戻ってきていないって言われたんだよ。そこで一度城に帰ってローレンスに尋ねたら家庭科室でドレスを縫っていたと教えてもらったから迎えに来たんだよ」
「そうだったのですね」
「ところでローレンスに聞いたけど…またあいつは君に『婚約破棄宣言』をしてきたんだって?」
「はい、そうです。今日は3回告げられました」
「何て事だ…」
ハァ~と額を押さえてため息をつくレオン様。
「全く…来年2人は学校を卒業すると言うのに…まだローレンスは君に婚約破棄を言い続けているんだね?今年は最後のクリスマスダンスパーティーだって言うのに…」
「ええ、この調子では今年もローレンス王子様は別の女性をパートナーにして出席されるでしょうね」
淡々と語る私にレオン様は尋ねてきた。
「ミシェル…君はそれでもいいのかい?仮にもローレンスと君は婚約者同士なのに」
「仕方ありません。私は出会った時からローレンス王子様に嫌われていますから」
それに私自身、別にローレンス王子様に何の感情も抱いていないし。
「そうか…君は学園に入学してからは2年間、いつも友人達とクリスマスパーティーに参加していたよね」
「ええ、そうですね。別にパートナーがいない人は友人同士で参加しても大丈夫ですから」
「だけど…今年はそうはいかない。なぜなら学園最後のクリスマスパーティーだからね」
「はい…」
学園最後のクリスマスパーティー。流石に3年生ともなると、友人同士で出席する学生は誰もいない。全員がパートナーと共に出席する。本来であれば私の婚約者は王子様なので、2人で出るのが当然なのだろうが…。
「恐らく、ローレンス王子は私のパートナーにはなってくれないでしょうね」
ポツリという。…そうなると恐らく私はパートナー無しで参加することになるのだろう。でもそれは少しも構わなかった。何故なら私はパートナーなど必要ないと考えていたからだ。自分の自作ドレスを来て、パーティーに出る。それが目的だったから
「ミシェル、城においで。僕がローレンスを説得してあげるよ。今回こそミシェルをパートナーにしてクリスマスパーティーに参加するようにって」
レオン様は目をキラキラさせながら言った。
その目は…自信に満ちていた―。
「え?もうこんな時間?」
いつの間にか教室はすっかり薄暗くなっていた。ドレス作りに夢中になっていたので時間を忘れていた。
「大変。早く帰らなくちゃ」
急いで裁縫箱を片付け、ドレスがシワにならないように丁寧にたたみ、布地でくるむと大きな紙バッグにしまった。
「駄目ね、この部屋に裁縫セットを取りに来ただけなのにいつの間にか縫い物を初めてしまうなんて」
続きは家に帰ってからにしよう。
片付けを済ませた私は1人で家庭科室を後にした―。
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「え?」
学校を出ると正門の前に見慣れた馬車が止まっていた。あの馬車は…。
近づいていくと馬車の扉が開かれた。
「ミシェル、待っていたよ」
現れたのは今年21歳になったレオン様だった。
「レオン様!まさか迎えに来てくれたのですか?」
「うん、そうだよ」
レオン様が手を差し伸べてくれたので、エスコートされながら馬車に乗り込む。馬車は私が乗り込むとすぐに走り出した。
ガラガラと走る馬車の中、レオン様が口を開いた。
「今日はミシェルに話があって君の屋敷に行ったからね。そしたらまだ戻ってきていないって言われたんだよ。そこで一度城に帰ってローレンスに尋ねたら家庭科室でドレスを縫っていたと教えてもらったから迎えに来たんだよ」
「そうだったのですね」
「ところでローレンスに聞いたけど…またあいつは君に『婚約破棄宣言』をしてきたんだって?」
「はい、そうです。今日は3回告げられました」
「何て事だ…」
ハァ~と額を押さえてため息をつくレオン様。
「全く…来年2人は学校を卒業すると言うのに…まだローレンスは君に婚約破棄を言い続けているんだね?今年は最後のクリスマスダンスパーティーだって言うのに…」
「ええ、この調子では今年もローレンス王子様は別の女性をパートナーにして出席されるでしょうね」
淡々と語る私にレオン様は尋ねてきた。
「ミシェル…君はそれでもいいのかい?仮にもローレンスと君は婚約者同士なのに」
「仕方ありません。私は出会った時からローレンス王子様に嫌われていますから」
それに私自身、別にローレンス王子様に何の感情も抱いていないし。
「そうか…君は学園に入学してからは2年間、いつも友人達とクリスマスパーティーに参加していたよね」
「ええ、そうですね。別にパートナーがいない人は友人同士で参加しても大丈夫ですから」
「だけど…今年はそうはいかない。なぜなら学園最後のクリスマスパーティーだからね」
「はい…」
学園最後のクリスマスパーティー。流石に3年生ともなると、友人同士で出席する学生は誰もいない。全員がパートナーと共に出席する。本来であれば私の婚約者は王子様なので、2人で出るのが当然なのだろうが…。
「恐らく、ローレンス王子は私のパートナーにはなってくれないでしょうね」
ポツリという。…そうなると恐らく私はパートナー無しで参加することになるのだろう。でもそれは少しも構わなかった。何故なら私はパートナーなど必要ないと考えていたからだ。自分の自作ドレスを来て、パーティーに出る。それが目的だったから
「ミシェル、城においで。僕がローレンスを説得してあげるよ。今回こそミシェルをパートナーにしてクリスマスパーティーに参加するようにって」
レオン様は目をキラキラさせながら言った。
その目は…自信に満ちていた―。
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