お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので

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第105話 最後の仕上げ

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 2台の馬車が私の店『アンジュ』に到着した。

皆で馬車から降りると、店の中からミルバ達と他にメイドと2人のフットマン達が出てきた。

「アンジェラ様、お待ちしておりました」

ミルバが声を掛けてきた。

「ありがとう、皆。それで?お願いしていたことはやっておいてくれたかしら?」

尋ねるとフットマンが説明してくれた。

「はい、アンジェラ様。私達で近隣のお店に明後日10時にお店がオープンすることを伝えてきました。またお店の前を通る人達にはビラを配りました」

「まぁ、アンジェラ。ビラまで用意していたの?」

ペリーヌが驚いた様子で尋ねてきた。

「ええ、そうなの。ビラは事前に印刷屋さんにお願いし、とりあえず200枚だけ作ってもらっておいたのよ。それで何枚位配れたのかしら?」

するとミルバが興奮気味に言った。

「それが、聞いて下さい。午前中であっという間に200枚全て配り終えることが出来たのですよ?」

「え?そうだったの?!」

まさか…50枚でも配れればいいなと思っていたのに、200枚全て配れたなんて…。

「ありがとう、皆」

私は改めてミルバ達にお礼を述べた。

「良かったですね、アンジェラさん」
「きっとお客様が沢山来てくれるはずですよ」
「当日は忙しくなりそうですね」

シビル、イレーヌ、グレタが口々に言う。

「ええ、そうね。だといいけど…何しろお店をオープンさせるために…これから一か八かの掛けに打って出ないといけないから…」

私は全員を見渡した。

「大丈夫、きっとうまくいきますよ」

「ええ、その為に我々は頑張りましたから」

「あれだけ宣伝もしているし、近隣の店にも話してありますからね」

使用人達の言葉に勇気づけられた。

「そうよね…。きっと餌に食いついてくるはずよね?」

私の言葉にミルバが賛同した。

「ええ、間違いなく食いつきますよ。もうこのお店が2日後にオープンすると言う話は絶対に知っているはずですし、今日は私達が1日お店の中と外に張り付いていたので、さぞやきもきしているはずです」

「そうよね…。ここまで来たら、もう後には引けないわ。少々危険な賭けだけど…。それじゃ後は私達で準備をするから、皆はジムさんの馬車に乗って帰っていいわよ?」

「アンジェラ様とお友達の方たちはどうされるのですか?」

ジムさんが尋ねてきた。

「大丈夫よ、皆で今日は辻馬車に乗って帰るから」

ペリーヌ達は私の言葉に一斉に頷く。

「分かりました、それでは皆さん。お先に失礼しますね」

そしてミルバ達はジムさんの馬車に乗り、用事のあるペリーヌだけは少しだけ手伝ってくれると馬車に乗って帰って行った。


****

「今更…こんな事言うのも何だけど…やっぱり少し不安だわ…」

3人で作業しながら私はつい不安を口にしてしまった。するとシビルが言った。

「大丈夫ですよ、アンジェラさん。パメラの性格は私達が一番良く知っていますから」

「ええ、必ずパメラは動くはずです」

「パメラは単純ですからね~しかも後先考えずに行動しますからね」

「ありがとう、皆。そうね…。仕込みは完璧だもの。後はパメラが餌に食いつくのを待つだけよね?」


その後も私達は作業を続け…17時に全ての作業が終了し、皆で辻馬車に乗って家路についた。

明日の成功を祈りながら―。



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