上 下
74 / 119

第74話 連行されるニコラス

しおりを挟む
 駆けつけてきたのは3人の男性教師達だった。何故教師達が騒ぎを聞きつけて駆けつけてきたのかと言うと、理由は明白。私とニコラスが立っていた校舎の前は職員室だったのだ。職員室の窓はカーテンも閉めていないし、窓だって開いている。当然私達の会話は丸聞こえというわけだ。

「おい!君は確かニコラス・コンラートじゃないかっ!何故学園に来ているんだっ!退学になったはずだろう!」

一番先頭を走ってくる教師はニコラスの事を知っているようだった。

「ま、まずいっ!」

ニコラスはあからさまにうろたえている。一方の私は駆けつけてくる教師たちに目が釘付けになっていた。何故なら彼等のうちの1人がデリクさんだったからだ。

「え…?」

嘘でしょう…?

デリクさんは臨時教員で、あまり学校に来ている事は無いと聞いていたのに…。

「ニコラスッ!君はもう部外者の上に我が学園の女子学生に手をあげようとしていたなっ!」

駆けつけてきた男性教師に腕を掴まれるニコラス。

「は、離せよっ!俺はアンジェラに話があって…」

「全く君は退学になっても問題ばかり起こすんだなっ!家に連絡を入れるぞ!」

もう1人の男性教諭が家の話を持ち出すと、ニコラスの顔が真っ青になった。

「連絡なら僕が入れますよ」

デリクさんは一度だけチラリと私の方を見ると、ニコラスに視線を移した。

「あっ!!お、お前…お前のせいで俺は家を追い出されたんだぞっ!それだけじゃない…除籍までされて、俺の後釜になりやがって!!」

ニコラスは2人の教師達に押さえつけられながら、まるで噛みつかんばかりの勢いでデリクさんに食ってかかる。

ニコラスめ…。よくもデリクさんにあんな口を叩いたわね…。

デリクさん贔屓?の私はニコラスの方を向くと言った。

「あら?ニコラス。先程、私が嫌がらせをする為に裏で手を回して自分達を陥れたのだろうと言って責めましたよね?それが今度はこちらの先生を責めるのですか?おかしな話ですね?」

「お、お前…アンジェラ…!わざと俺を挑発したな…っ!」

ニコラスは思い切り恨みを込めた目で私を睨みつけてきた。

「いい加減にしないかっ!君は部外者でありながら学園に不法侵入したんだぞっ!」

「自分の立場をわきまえるんだっ!静かにしないと警察を呼ぶぞっ!」

「け、警察…」

その言葉で初めてニコラスは口を閉ざし、ガックリと肩を落とした。

「よし。とりあえずは生徒指導室へ連れて行くか」
「そうですね」

2人の男性教師達は会話を交わすと、次にデリクさんを見た。

「君はニコラスの家に連絡してくれるか?」

「はい。彼女と少し話をした後に連絡を入れます」

え…?

「ほら、行くぞっ!」
「さっさと来るんだっ!」

2人の教師に連行?されていくニコラス。

「くっそー!覚えてろよ!」

ニコラスが連行されながらこちらを向いて叫ぶ。その様子を見ていたデリクさんが苦笑しながら口を開いた。

「全く…覚えてろよ…。なんて。その台詞が誰に向けられたものかは分かりませんけど、きっと彼はもっと悲惨な目に遭うかもしれませんね」

そして次に私の方を振り向いた。

「大丈夫でしたか?アンジェラさん」

「は、はい…」

「そうですか。それは良かった」

笑顔を向けるデリクさんに思わず自分の顔が赤らむのを感じた―。
しおりを挟む
感想 309

あなたにおすすめの小説

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈 
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈 
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈 
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

私が我慢する必要ありますか?【2024年12月25日電子書籍配信決定しました】

青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。 そして気付いてしまったのです。 私が我慢する必要ありますか? ※ 株式会社MARCOT様より電子書籍化決定! コミックシーモア様にて12/25より配信されます。 コミックシーモア様限定の短編もありますので興味のある方はぜひお手に取って頂けると嬉しいです。 リンク先 https://www.cmoa.jp/title/1101438094/vol/1/

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈 
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

処理中です...