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第61話 装いも新たに
しおりを挟む 翌朝6時半―
ジリリリリリリ…ッ!
激しく鳴り響く目覚まし時計の音で目が覚めた。
「…」
ベッドの中でモゾモゾと手を伸ばし、目覚まし時計をバチンと止めると大きく伸びをする。
「う~ん…。よく寝た…」
ムクリと起き上がるとベッドの足元に置いた室内履きに履き替え、カーテンに向かった。
シャーッ!
大きな掃き出し窓に取り付けられたカーテンを思い切り開け放すと、途端に木々の隙間から眩しい太陽が部屋の中に差し込む。
「フフフ…今日も良い天気ね。最高の気分だわ」
何しろ、昨日であの煩わしいパメラともニコラスとも完全に縁を切ることが出来たのだ。こんなに嬉しい事はない。そう言えばフットマン達に連行される時、ニコラスは「覚えてろよ」と叫んでいたが…まぁ、恐らく何も出来ないだろう。
「さて、朝食前に出かける準備をしなくちゃ…」
着替えをする為にクローゼットに近付くと、扉を開いた。
「どんな服を着ようかしら…」
私はじっとハンガーにぶら下がっている服とにらめっこしながら呟いた―。
****
午前7時
「おはようございます。お母様、お兄様」
ダイニングルームへ行くと、既にテーブルには母と兄が着席し、朝食の準備が始まっていた。
「おはよう、アンジェラ」
「およう」
母と兄が返事を返してくる。
「あら?アンジェラ…どうしたの?その格好は?」
着席すると、母が私の着ているワンピースドレスにすぐ気付いた。
「そう言えば…まるで他所行のような服だな。何処かへ出かけるのか?てっきり今日も店の開店準備に出かけるのかと思っていたけれども」
兄が首を傾げなら言う。
「あ…やっぱり分かります?」
私の今日の装いはモスグリーンのAラインワンピースドレスだった。襟とカフス部分は白で落ち着いたデザインは私のお気に入りだった。
「珍しいわね。いつも納品に行くときは普段着で行くのに…。さては何かあったわね?」
母が興味深気に尋ねてくる。
「あ、あの。それは…実は昨日お店の中を興味深げに覗いている方がいて、店内に入れてあげたんです。そしたらとても興味を持ってくださって…今日も来ることになっているんです。実はその人は学園の講師をされている方だったので、きちんとした姿でお迎えした方が良いかと思ったからです」
ニコラスと婚約破棄したばかりの身で、まさか気になる男性が今日も来るからおしゃれをしたのだとは言えるはずもなかった。
「ふ~ん…成程ね…」
「まぁ、そういう事にしておいてあげるか」
私が苦しい言い訳をしている姿を母も兄も意味深な顔で見つめている。
「そ、そんな事よりもお父様はどうされたのですか?」
「ええ。実は昨夜コンラート家から朝食会に招きたいと連絡があって、もう出掛けたのよ」
「え?!朝食会?」
「ああ、そうなんだ。何だか非常に嫌な予感がするが…まぁ、父なら大丈夫だろう」
「ええ、きっと大丈夫でしょう」
兄の言葉に母も頷く。
「そう…ですね」
あの父の事だ。コンラート家など恐れるに足らないだろう。
「それでは食事にしましょうか?」
「「はい」」
そして父が不在の中、私達は朝食を頂いた―。
ジリリリリリリ…ッ!
激しく鳴り響く目覚まし時計の音で目が覚めた。
「…」
ベッドの中でモゾモゾと手を伸ばし、目覚まし時計をバチンと止めると大きく伸びをする。
「う~ん…。よく寝た…」
ムクリと起き上がるとベッドの足元に置いた室内履きに履き替え、カーテンに向かった。
シャーッ!
大きな掃き出し窓に取り付けられたカーテンを思い切り開け放すと、途端に木々の隙間から眩しい太陽が部屋の中に差し込む。
「フフフ…今日も良い天気ね。最高の気分だわ」
何しろ、昨日であの煩わしいパメラともニコラスとも完全に縁を切ることが出来たのだ。こんなに嬉しい事はない。そう言えばフットマン達に連行される時、ニコラスは「覚えてろよ」と叫んでいたが…まぁ、恐らく何も出来ないだろう。
「さて、朝食前に出かける準備をしなくちゃ…」
着替えをする為にクローゼットに近付くと、扉を開いた。
「どんな服を着ようかしら…」
私はじっとハンガーにぶら下がっている服とにらめっこしながら呟いた―。
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午前7時
「おはようございます。お母様、お兄様」
ダイニングルームへ行くと、既にテーブルには母と兄が着席し、朝食の準備が始まっていた。
「おはよう、アンジェラ」
「およう」
母と兄が返事を返してくる。
「あら?アンジェラ…どうしたの?その格好は?」
着席すると、母が私の着ているワンピースドレスにすぐ気付いた。
「そう言えば…まるで他所行のような服だな。何処かへ出かけるのか?てっきり今日も店の開店準備に出かけるのかと思っていたけれども」
兄が首を傾げなら言う。
「あ…やっぱり分かります?」
私の今日の装いはモスグリーンのAラインワンピースドレスだった。襟とカフス部分は白で落ち着いたデザインは私のお気に入りだった。
「珍しいわね。いつも納品に行くときは普段着で行くのに…。さては何かあったわね?」
母が興味深気に尋ねてくる。
「あ、あの。それは…実は昨日お店の中を興味深げに覗いている方がいて、店内に入れてあげたんです。そしたらとても興味を持ってくださって…今日も来ることになっているんです。実はその人は学園の講師をされている方だったので、きちんとした姿でお迎えした方が良いかと思ったからです」
ニコラスと婚約破棄したばかりの身で、まさか気になる男性が今日も来るからおしゃれをしたのだとは言えるはずもなかった。
「ふ~ん…成程ね…」
「まぁ、そういう事にしておいてあげるか」
私が苦しい言い訳をしている姿を母も兄も意味深な顔で見つめている。
「そ、そんな事よりもお父様はどうされたのですか?」
「ええ。実は昨夜コンラート家から朝食会に招きたいと連絡があって、もう出掛けたのよ」
「え?!朝食会?」
「ああ、そうなんだ。何だか非常に嫌な予感がするが…まぁ、父なら大丈夫だろう」
「ええ、きっと大丈夫でしょう」
兄の言葉に母も頷く。
「そう…ですね」
あの父の事だ。コンラート家など恐れるに足らないだろう。
「それでは食事にしましょうか?」
「「はい」」
そして父が不在の中、私達は朝食を頂いた―。
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