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第57話 恐れるに足りず
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「本当に…本当にお屋敷に戻って宜しいのですか?」
心配そうにジムさんが尋ねてきた。
「ええ、いいのよ。ニコラス様は私に会いにいらしているのでしょう?さぞかしイライラしているでしょうからそんな人がいつまでも屋敷にいれば皆、気が休まらないわよね?」
「え、ええ…確かにアンジェラ様の仰るとおりです。使用人たち一同はニコラス様と関わっていないとは言え、かなり怯えております。なのでニコラス様が待機しているお部屋には誰もが近付こうとしません」
「そう…やっぱりね」
と言う事はニコラスはお茶もお昼も口にしていないのだろう。それでもまだ諦めて帰らないとは暇人かつ、しつこい男だ。恐らく相当私に対して頭に来ているに違いない。
「それなら早速屋敷に戻りましょう。待っていてね、すぐに片付けてくるから」
ジムさんにそれだけ伝えると店内へと戻り、荷物を片付始めた。
やはりベルモンド家を平穏な日常に戻すには私が屋敷に戻ってニコラスを何とかするしかない。それに私には『婚約破棄』と言う切り札があるのだ。既に邪魔なパメラは排除が完了した。ニコラスが私に文句を言う為に待っているのは明白だ。何か私に対して横柄、かつ暴力的な態度を取ってくれば『婚約破棄』を告げれば良いだけの事なのだ。所詮私にとって、ニコラス等恐れるに足らず。
持参した荷物を全てリュックに詰め込むと、私は店内を後にした―。
****
ベルモンド家に到着したのは18時を過ぎていた。
「どうもありがとう。折角だから用意してくれた食事は持っていくわね」
馬車から下りるとジムさんにお礼を言う。
「いえ。これが私の仕事ですから。しかし…本当にニコラス様に会われるのですか?」
「ええ、そうよ。1時間…いえ、30分以内に追い返してみせるから」
そして私はその場でジムさんと別れて、扉を開けて屋敷の中へ入った。
「あ、アンジェラ様!まさかお戻りになるとは思いませんでした」
丁度扉を開けた時に側を通りかかったフットマンが私に気付き、声を掛けてきた。
「ただいま。ええ、戻って来たわ。まだニコラス様がいらしているのでしょう?それでどのお部屋にいるのかしら?」
「はい、1階の一番奥のお部屋にいらっしゃるそうです」
え?一番奥の部屋…?
「あら?そうなの?確かあの辺りの部屋は何部屋か空き部屋になっていなかったかしら?」
「ええ、そうなのです。特に用が無ければ誰も近づかないような場所です。あの部屋でお待ち頂くように決めたのは旦那様なのです」
「そうなのね?では早速ニコラス様の所へ行ってくるわ」
「は、はい。アンジェラ様。頑張って下さい」
「ええ」
こうしてフットマンの応援を受けた私はニコラスのいる部屋へ足を向けた―。
心配そうにジムさんが尋ねてきた。
「ええ、いいのよ。ニコラス様は私に会いにいらしているのでしょう?さぞかしイライラしているでしょうからそんな人がいつまでも屋敷にいれば皆、気が休まらないわよね?」
「え、ええ…確かにアンジェラ様の仰るとおりです。使用人たち一同はニコラス様と関わっていないとは言え、かなり怯えております。なのでニコラス様が待機しているお部屋には誰もが近付こうとしません」
「そう…やっぱりね」
と言う事はニコラスはお茶もお昼も口にしていないのだろう。それでもまだ諦めて帰らないとは暇人かつ、しつこい男だ。恐らく相当私に対して頭に来ているに違いない。
「それなら早速屋敷に戻りましょう。待っていてね、すぐに片付けてくるから」
ジムさんにそれだけ伝えると店内へと戻り、荷物を片付始めた。
やはりベルモンド家を平穏な日常に戻すには私が屋敷に戻ってニコラスを何とかするしかない。それに私には『婚約破棄』と言う切り札があるのだ。既に邪魔なパメラは排除が完了した。ニコラスが私に文句を言う為に待っているのは明白だ。何か私に対して横柄、かつ暴力的な態度を取ってくれば『婚約破棄』を告げれば良いだけの事なのだ。所詮私にとって、ニコラス等恐れるに足らず。
持参した荷物を全てリュックに詰め込むと、私は店内を後にした―。
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ベルモンド家に到着したのは18時を過ぎていた。
「どうもありがとう。折角だから用意してくれた食事は持っていくわね」
馬車から下りるとジムさんにお礼を言う。
「いえ。これが私の仕事ですから。しかし…本当にニコラス様に会われるのですか?」
「ええ、そうよ。1時間…いえ、30分以内に追い返してみせるから」
そして私はその場でジムさんと別れて、扉を開けて屋敷の中へ入った。
「あ、アンジェラ様!まさかお戻りになるとは思いませんでした」
丁度扉を開けた時に側を通りかかったフットマンが私に気付き、声を掛けてきた。
「ただいま。ええ、戻って来たわ。まだニコラス様がいらしているのでしょう?それでどのお部屋にいるのかしら?」
「はい、1階の一番奥のお部屋にいらっしゃるそうです」
え?一番奥の部屋…?
「あら?そうなの?確かあの辺りの部屋は何部屋か空き部屋になっていなかったかしら?」
「ええ、そうなのです。特に用が無ければ誰も近づかないような場所です。あの部屋でお待ち頂くように決めたのは旦那様なのです」
「そうなのね?では早速ニコラス様の所へ行ってくるわ」
「は、はい。アンジェラ様。頑張って下さい」
「ええ」
こうしてフットマンの応援を受けた私はニコラスのいる部屋へ足を向けた―。
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