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第34話 悪い芽は早めに摘み取りましょう
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その夜の事―
家族全員揃っての夕食の席で父が話しをした。
「母さん、ダンテ。聞いてくれ。今日、学校でアンジェラが大変な目に遭ったそうだ」
「え?何があったんだ?」
兄の食事をする動きが止まり、私を見た。
「はい、実は…」
そこで私は母と兄に父に説明した時と同様の話をすると2人とも驚いた様子で私を見た。
「何だって?!あの馬鹿はパメラとかいう平民女と結託して今迄お前に嫌がらせを働いていたのか?!」
ついに兄はニコラスの固有名詞すら出さずに馬鹿呼ばわりした。
「何てことなの…。そうだと分かっていれば昨夜の段階で私から婚約破棄を申し出たのに…」
母がため息をついた。
「いやいや、母さん。それは無理だ。アンジェラ本人から婚約破棄を宣言しなければコンラート伯爵夫妻は認めてくれないよ」
父が母に説明する。
「それより、本日ニコラス様は何をしに屋敷を訪ねてきたのでしょう?学校は休んだし…そちらが気になります」
私の言葉に兄が反応した。
「何っ?!あの馬鹿がこの屋敷に来たのかっ?!」
「ええ、そうなのよ。でも面倒だったから部屋には招き入れたけど放置しておいたわ。何も文句を言わずにいつの間にか帰っていたみたいね。あら、今日のお魚は特に美味しいわね」
母は魚料理を口にし、満足げに笑みを浮かべる。
「そうだな。それにしてもニコラス様はよほど暇なお方なのだろう。まぁ伝言も残さずに帰られたのだから大した用事は無かったのだろう」
父はワインを美味しそうに飲みながら語る。
「それでアンジェラ。明日はお休みだからまた開店準備に町へ行くのかしら?」
母が尋ねてきた。
「いいえ。明日はお店には行きません。父とパメラの父親の経営する農園に行ってきます」
すると兄が目を輝かせた。
「何だって?そんな面白い…いや、重要な問題を抱えている農園に行くのなら当然僕も一緒に行かなければ。いいですよね?父上」
「うむ、そうだな。悪徳経営者を裁く…いや、実態を知るには良い機会かもしれないし…なら3人で行こう」
「「はい」」
私と兄は同時に返事をし…明日は急遽3人でパメラの父親が経営する農園に視察?に行くことが決定した―。
****
22時―
自室に戻り、入浴を済ませた私は刺繍をしていた。
「アンジェラ様。ハーブティーが入りました」
ミルバが声を掛けてきた。
「ありがとう、ミルバ」
刺繍の手を止めると目の前に湯気の立つティーカップをミルバが置いてくれた。
「素敵な香りね…これはカモミールティーかしら?」
「はい、そうです。安眠効果がありますよ?今日アンジェラ様が学校で不愉快な目に遭われたと聞かされたので」
「う~ん…不愉快な目にならほぼ毎日遭っていたのだけどね…」
「え?そうだったのですか?!」
ミルバが目を丸くする。
「ええ、でもわざわざ報告するほどのものでもなかったし…黙っていたのだけど、流石に今回は見過ごせなかったのよ」
そして一口ハーブティーを飲む。
「うん、美味しい…」
そして私はミルバに言った、
「やっぱり悪い事をする人間は放置しておくと駄目ね。放っておくとエスカレートするもの。悪い芽は早めに摘み取って置かなくちゃ。そうしないと良い品物は作れないわ。例えばこのハーブティーのようにね?」
「え?は、はい。そのとおりですね」
「あ~お茶が美味しい」
そして私は残りのハーブティーを飲み干した―。
家族全員揃っての夕食の席で父が話しをした。
「母さん、ダンテ。聞いてくれ。今日、学校でアンジェラが大変な目に遭ったそうだ」
「え?何があったんだ?」
兄の食事をする動きが止まり、私を見た。
「はい、実は…」
そこで私は母と兄に父に説明した時と同様の話をすると2人とも驚いた様子で私を見た。
「何だって?!あの馬鹿はパメラとかいう平民女と結託して今迄お前に嫌がらせを働いていたのか?!」
ついに兄はニコラスの固有名詞すら出さずに馬鹿呼ばわりした。
「何てことなの…。そうだと分かっていれば昨夜の段階で私から婚約破棄を申し出たのに…」
母がため息をついた。
「いやいや、母さん。それは無理だ。アンジェラ本人から婚約破棄を宣言しなければコンラート伯爵夫妻は認めてくれないよ」
父が母に説明する。
「それより、本日ニコラス様は何をしに屋敷を訪ねてきたのでしょう?学校は休んだし…そちらが気になります」
私の言葉に兄が反応した。
「何っ?!あの馬鹿がこの屋敷に来たのかっ?!」
「ええ、そうなのよ。でも面倒だったから部屋には招き入れたけど放置しておいたわ。何も文句を言わずにいつの間にか帰っていたみたいね。あら、今日のお魚は特に美味しいわね」
母は魚料理を口にし、満足げに笑みを浮かべる。
「そうだな。それにしてもニコラス様はよほど暇なお方なのだろう。まぁ伝言も残さずに帰られたのだから大した用事は無かったのだろう」
父はワインを美味しそうに飲みながら語る。
「それでアンジェラ。明日はお休みだからまた開店準備に町へ行くのかしら?」
母が尋ねてきた。
「いいえ。明日はお店には行きません。父とパメラの父親の経営する農園に行ってきます」
すると兄が目を輝かせた。
「何だって?そんな面白い…いや、重要な問題を抱えている農園に行くのなら当然僕も一緒に行かなければ。いいですよね?父上」
「うむ、そうだな。悪徳経営者を裁く…いや、実態を知るには良い機会かもしれないし…なら3人で行こう」
「「はい」」
私と兄は同時に返事をし…明日は急遽3人でパメラの父親が経営する農園に視察?に行くことが決定した―。
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22時―
自室に戻り、入浴を済ませた私は刺繍をしていた。
「アンジェラ様。ハーブティーが入りました」
ミルバが声を掛けてきた。
「ありがとう、ミルバ」
刺繍の手を止めると目の前に湯気の立つティーカップをミルバが置いてくれた。
「素敵な香りね…これはカモミールティーかしら?」
「はい、そうです。安眠効果がありますよ?今日アンジェラ様が学校で不愉快な目に遭われたと聞かされたので」
「う~ん…不愉快な目にならほぼ毎日遭っていたのだけどね…」
「え?そうだったのですか?!」
ミルバが目を丸くする。
「ええ、でもわざわざ報告するほどのものでもなかったし…黙っていたのだけど、流石に今回は見過ごせなかったのよ」
そして一口ハーブティーを飲む。
「うん、美味しい…」
そして私はミルバに言った、
「やっぱり悪い事をする人間は放置しておくと駄目ね。放っておくとエスカレートするもの。悪い芽は早めに摘み取って置かなくちゃ。そうしないと良い品物は作れないわ。例えばこのハーブティーのようにね?」
「え?は、はい。そのとおりですね」
「あ~お茶が美味しい」
そして私は残りのハーブティーを飲み干した―。
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