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第21話 いいがかり
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ひと気の無い中庭へ来るとパメラは私の方を振り向き、言った。
「アンジェラさん、貴女…ニコラスに、いえ。ニコラスのお父様に私の事を何と言ったの?今朝彼の屋敷にいつもの様に一緒に登校しようと迎えに行ったのに使用人に追い返されてしまったのよ?もうここへは来るなと言われたわ。貴女のせいでしょう?何か私の悪口を吹き込んだわね?」
「私は別に何も言っていないわよ?憶測で物を言わないでくれる?」
そう、パメラ。貴女の事はね…。
本当は昨夜あの場でパメラの話もしたかったが、話が長引きそうだったので口にしなかったのだ。何しろ今の私は本当に忙しいのだから。恐らく伯爵は今私に婚約破棄を告げられるのを必死で阻止しようと、パメラを追い払うように使用人達に命じたのかもしれない。
「嘘言わないでよ。酷い人ね」
「別に嘘なんか言ってないわ。話は終わりね。もう教室に戻ってもいいかしら?」
そして背中を向けて歩き始めるとパメラが叫んだ。
「こ、この悪女っ!」
「…何ですって?」」
聞きずてならない台詞に振り向く。
「そうよ、貴女は悪女よ。私と言う恋人がニコラスにいるのに貴族だからと言う理由だけで、ちゃっかり彼の婚約者に収まっているんだから。この泥棒!」
「泥棒…?泥棒ですって?」
誰が好き好んであのニコラスの婚約者になったと思っているのだ。私の家は子爵家。そしてニコラスは伯爵家だ。いわばその関係は上司と部下の様な間柄だ。上司が部下に息子の嫁になってくれと頼まれれば、そう簡単に断れるはずはない。だから私はやむを得ず、婚約者となったのだ。
そして昨夜愚かなニコラスがやらかしてくれた事で、私から彼に婚約破棄を告げる権利を得る事が出来た。
それなのにパメラに『泥棒』呼ばわりされるのは不本意だった。もうこれ以上パメラの話に付き合うつもりは無かった。
「言いたい事はそれだけ?変な言いがかりをつけるのはやめてくれる?何故今日追い返されてしまったのか尋ねる相手を間違えているわね。私では無くニコラスに尋ねるべきでしょう?」
「そ、それは…」
そこでパメラは何故か黙る。何か理由があるのかもしれないが、私にとってはどうでも良かった。
「話は終わりよ。それじゃ私は教室に戻るから」
そして私はパメラの返事も聞かずに中庭を後にした―。
****
教室に戻ると、授業開始の10分前だった。席に着席すると近くに座っていた男子学生が珍しいことに声を掛けて来た。
「ベルモンドさん」
「何?」
「さっき、別のクラスの女子が君の机の側に来ていたよ」
「え?」
「それで何をしているのか尋ねたら、友達に借りていた万年筆を返しに来たけど、不在だったから入れておくと言ってたんだ。でも違う女子生徒の机に用があったみたいだよ。『間違えた。この机じゃ無かったみたい』と言って教室から出て行ったから」
「…そうだったの?教えてくれてありがとう」
「どう致しまして」
「…」
私は少しの間、考えた。何だか嫌な予感がする。
そこで鞄の中を広げて中を確かめ…私はあることに気が付いた。
「…やられたわ…」
私のカバンの中からペリーヌに渡そうと思っていたペン立てが消えていた―。
「アンジェラさん、貴女…ニコラスに、いえ。ニコラスのお父様に私の事を何と言ったの?今朝彼の屋敷にいつもの様に一緒に登校しようと迎えに行ったのに使用人に追い返されてしまったのよ?もうここへは来るなと言われたわ。貴女のせいでしょう?何か私の悪口を吹き込んだわね?」
「私は別に何も言っていないわよ?憶測で物を言わないでくれる?」
そう、パメラ。貴女の事はね…。
本当は昨夜あの場でパメラの話もしたかったが、話が長引きそうだったので口にしなかったのだ。何しろ今の私は本当に忙しいのだから。恐らく伯爵は今私に婚約破棄を告げられるのを必死で阻止しようと、パメラを追い払うように使用人達に命じたのかもしれない。
「嘘言わないでよ。酷い人ね」
「別に嘘なんか言ってないわ。話は終わりね。もう教室に戻ってもいいかしら?」
そして背中を向けて歩き始めるとパメラが叫んだ。
「こ、この悪女っ!」
「…何ですって?」」
聞きずてならない台詞に振り向く。
「そうよ、貴女は悪女よ。私と言う恋人がニコラスにいるのに貴族だからと言う理由だけで、ちゃっかり彼の婚約者に収まっているんだから。この泥棒!」
「泥棒…?泥棒ですって?」
誰が好き好んであのニコラスの婚約者になったと思っているのだ。私の家は子爵家。そしてニコラスは伯爵家だ。いわばその関係は上司と部下の様な間柄だ。上司が部下に息子の嫁になってくれと頼まれれば、そう簡単に断れるはずはない。だから私はやむを得ず、婚約者となったのだ。
そして昨夜愚かなニコラスがやらかしてくれた事で、私から彼に婚約破棄を告げる権利を得る事が出来た。
それなのにパメラに『泥棒』呼ばわりされるのは不本意だった。もうこれ以上パメラの話に付き合うつもりは無かった。
「言いたい事はそれだけ?変な言いがかりをつけるのはやめてくれる?何故今日追い返されてしまったのか尋ねる相手を間違えているわね。私では無くニコラスに尋ねるべきでしょう?」
「そ、それは…」
そこでパメラは何故か黙る。何か理由があるのかもしれないが、私にとってはどうでも良かった。
「話は終わりよ。それじゃ私は教室に戻るから」
そして私はパメラの返事も聞かずに中庭を後にした―。
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教室に戻ると、授業開始の10分前だった。席に着席すると近くに座っていた男子学生が珍しいことに声を掛けて来た。
「ベルモンドさん」
「何?」
「さっき、別のクラスの女子が君の机の側に来ていたよ」
「え?」
「それで何をしているのか尋ねたら、友達に借りていた万年筆を返しに来たけど、不在だったから入れておくと言ってたんだ。でも違う女子生徒の机に用があったみたいだよ。『間違えた。この机じゃ無かったみたい』と言って教室から出て行ったから」
「…そうだったの?教えてくれてありがとう」
「どう致しまして」
「…」
私は少しの間、考えた。何だか嫌な予感がする。
そこで鞄の中を広げて中を確かめ…私はあることに気が付いた。
「…やられたわ…」
私のカバンの中からペリーヌに渡そうと思っていたペン立てが消えていた―。
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