19 / 119
第19話 昨夜の報告
しおりを挟む
翌日―
試作品として昨夜作ったペンケースをカバンに入れて、私は登校した。
「アンジェラお嬢様、今日は何時にお迎えに上がればいいですか?」
学園に着いて馬車を降りるとジムさんが尋ねて来た。
「今日は納品は無いから15時半に迎えに来てくれる?」
「え?そんなに早い時間で大丈夫なのですか?」
「ええ、実は手芸店に行きたいの。いつものお店」
「ああ、分りました『トワール』ですね?いいですよ。帰りに寄りましょう」
ジムさんが笑顔で返事をする。
『トワール』とは私の行きつけの手芸店だった。
「ええ、お願いね。それじゃ行って来るわね」
ジムさんに手を振ると彼も帽子を外して頭を下げた。
「はい、いってらっしゃいませ」
****
校舎へ向かう学生達に紛れて歩いていると背後から私の名を呼ぶ声が聞こえて来た。
「アンジェラーッ!」
ふり向くとペリーヌが早足でこちらへ向かって歩いて来る。
「おはよう、ペリーヌ」
立ち止まってペリーヌに挨拶した。
「おはよう、アンジェラ。教室まで一緒に行きましょう?」
「ええ」
そして私達は一緒に並んで歩き始めた。
「ねぇ、アンジェラ。ひょっとしてまた遅くまで裁縫をしていたんじゃないの?」
ペリーヌが尋ねて来た。
「え?やっぱり分った?」
「ええ、だって目の下にクマが出来てるわよ?」
「そう…実はね、昨夜突然ニコラスと両親が屋敷を訪ねて来たのよ」
「え?何故?」
ペリーヌが驚いた様に目を見開いた。そこで私は昨日の出来事を語った。
屋敷に帰るとニコラスがメイドを激怒していた事、そしてメイドに手を上げようとしたので立ちはだかると今度は私が叩かれそうになった事。それを父が止めに入ってくれた事を。
「全くニコラスは本当に迷惑な男ね。それで?話の続きは?」
「ええ、それでね…」
その時、私達の前方をパメラと彼女の3人の友人たちが歩いているのが目に入った。
「あら?珍しいわね。ニコラスが一緒にいないなんて」
ペリーヌが首を傾げながら言う。
「確かにそうね…あ。もしかして昨夜の出来事が原因かしら?」
「そう言えばまだ話を全部聞いていなかったわね。続きを教えてくれる?」
教室までの道のりはまだある。最後まで話をする余裕はありそうだ。そこで私はその後の続きを全て語った。我が屋敷でニコラスと両親が大喧嘩を始めたことや、今後私に手を上げるような真似を1回でもすれば私の方から婚約破棄を申し出る権利を得た事を全て語った。
「結局ニコラス達は22時に帰って行ったのよ。全く無駄な時間を取らされてしまったわ。お陰で昨夜はあまり作品作りに時間を取れなかったのよ」
「成程、それで昨夜は寝不足だったと言う訳ね?でも知らなかったわ…まさかパメラがニコラスの両親から嫌われていたなんてね。それなのに図々しくあの2人はべったりしていたのだから…でも、今一緒にいないと言う事は…ひょっとして何かあったんじゃないのかしら?」
ペリーヌはパメラたちを見ながら言った。
「ええ…そうかも知れないわね…。もし仮にパメラがニコラスの両親にくぎを刺されたとなれば、少しは自分の身の程をわきまえるんじゃないかしら?」
「そうよね。結局所詮パメラは平民だもの。自分がニコラスに大切にされているからって勘違いしていたのよ。でもそのニコラスから切られれば少しは自分の置かれている立場を自覚するかもね」
けれども、私とぺリーヌはパメラの事を良く理解していなかった。
パメラはニコラスに負けず劣らず愚かな人間だと言う事を―。
試作品として昨夜作ったペンケースをカバンに入れて、私は登校した。
「アンジェラお嬢様、今日は何時にお迎えに上がればいいですか?」
学園に着いて馬車を降りるとジムさんが尋ねて来た。
「今日は納品は無いから15時半に迎えに来てくれる?」
「え?そんなに早い時間で大丈夫なのですか?」
「ええ、実は手芸店に行きたいの。いつものお店」
「ああ、分りました『トワール』ですね?いいですよ。帰りに寄りましょう」
ジムさんが笑顔で返事をする。
『トワール』とは私の行きつけの手芸店だった。
「ええ、お願いね。それじゃ行って来るわね」
ジムさんに手を振ると彼も帽子を外して頭を下げた。
「はい、いってらっしゃいませ」
****
校舎へ向かう学生達に紛れて歩いていると背後から私の名を呼ぶ声が聞こえて来た。
「アンジェラーッ!」
ふり向くとペリーヌが早足でこちらへ向かって歩いて来る。
「おはよう、ペリーヌ」
立ち止まってペリーヌに挨拶した。
「おはよう、アンジェラ。教室まで一緒に行きましょう?」
「ええ」
そして私達は一緒に並んで歩き始めた。
「ねぇ、アンジェラ。ひょっとしてまた遅くまで裁縫をしていたんじゃないの?」
ペリーヌが尋ねて来た。
「え?やっぱり分った?」
「ええ、だって目の下にクマが出来てるわよ?」
「そう…実はね、昨夜突然ニコラスと両親が屋敷を訪ねて来たのよ」
「え?何故?」
ペリーヌが驚いた様に目を見開いた。そこで私は昨日の出来事を語った。
屋敷に帰るとニコラスがメイドを激怒していた事、そしてメイドに手を上げようとしたので立ちはだかると今度は私が叩かれそうになった事。それを父が止めに入ってくれた事を。
「全くニコラスは本当に迷惑な男ね。それで?話の続きは?」
「ええ、それでね…」
その時、私達の前方をパメラと彼女の3人の友人たちが歩いているのが目に入った。
「あら?珍しいわね。ニコラスが一緒にいないなんて」
ペリーヌが首を傾げながら言う。
「確かにそうね…あ。もしかして昨夜の出来事が原因かしら?」
「そう言えばまだ話を全部聞いていなかったわね。続きを教えてくれる?」
教室までの道のりはまだある。最後まで話をする余裕はありそうだ。そこで私はその後の続きを全て語った。我が屋敷でニコラスと両親が大喧嘩を始めたことや、今後私に手を上げるような真似を1回でもすれば私の方から婚約破棄を申し出る権利を得た事を全て語った。
「結局ニコラス達は22時に帰って行ったのよ。全く無駄な時間を取らされてしまったわ。お陰で昨夜はあまり作品作りに時間を取れなかったのよ」
「成程、それで昨夜は寝不足だったと言う訳ね?でも知らなかったわ…まさかパメラがニコラスの両親から嫌われていたなんてね。それなのに図々しくあの2人はべったりしていたのだから…でも、今一緒にいないと言う事は…ひょっとして何かあったんじゃないのかしら?」
ペリーヌはパメラたちを見ながら言った。
「ええ…そうかも知れないわね…。もし仮にパメラがニコラスの両親にくぎを刺されたとなれば、少しは自分の身の程をわきまえるんじゃないかしら?」
「そうよね。結局所詮パメラは平民だもの。自分がニコラスに大切にされているからって勘違いしていたのよ。でもそのニコラスから切られれば少しは自分の置かれている立場を自覚するかもね」
けれども、私とぺリーヌはパメラの事を良く理解していなかった。
パメラはニコラスに負けず劣らず愚かな人間だと言う事を―。
92
お気に入りに追加
4,726
あなたにおすすめの小説

ご自慢の聖女がいるのだから、私は失礼しますわ
ネコ
恋愛
伯爵令嬢ユリアは、幼い頃から第二王子アレクサンドルの婚約者。だが、留学から戻ってきたアレクサンドルは「聖女が僕の真実の花嫁だ」と堂々宣言。周囲は“奇跡の力を持つ聖女”と王子の恋を応援し、ユリアを貶める噂まで広まった。婚約者の座を奪われるより先に、ユリアは自分から破棄を申し出る。「お好きにどうぞ。もう私には関係ありません」そう言った途端、王宮では聖女の力が何かとおかしな騒ぎを起こし始めるのだった。

愛されない皇子妃、あっさり離宮に引きこもる ~皇都が絶望的だけど、今さら泣きついてきても知りません~
ネコ
恋愛
帝国の第二皇子アシュレイに嫁いだ侯爵令嬢クリスティナ。だがアシュレイは他国の姫と密会を繰り返し、クリスティナを悪女と糾弾して冷遇する。ある日、「彼女を皇妃にするため離縁してくれ」と言われたクリスティナは、あっさりと離宮へ引きこもる道を選ぶ。ところが皇都では不可解な問題が多発し、次第に名ばかり呼ばれるのはクリスティナ。彼女を手放したアシュレイや周囲は、ようやくその存在の大きさに気づくが、今さら彼女は戻ってくれそうもなく……。

本日より他人として生きさせていただきます
ネコ
恋愛
伯爵令嬢のアルマは、愛のない婚約者レオナードに尽くし続けてきた。しかし、彼の隣にはいつも「運命の相手」を自称する美女の姿が。家族も周囲もレオナードの一方的なわがままを容認するばかり。ある夜会で二人の逢瀬を目撃したアルマは、今さら怒る気力も失せてしまう。「それなら私は他人として過ごしましょう」そう告げて婚約破棄に踏み切る。だが、彼女が去った瞬間からレオナードの人生には不穏なほつれが生じ始めるのだった。

公爵令息は妹を選ぶらしいので私は旅に出ます
ネコ
恋愛
公爵令息ラウルの婚約者だったエリンは、なぜかいつも“愛らしい妹”に優先順位を奪われていた。正当な抗議も「ただの嫉妬だろう」と取り合われず、遂に婚約破棄へ。放り出されても涙は出ない。ならば持ち前の治癒魔法を活かして自由に生きよう――そう決めたエリンの旅立ち先で、運命は大きく動き出す。

愛してくれない婚約者なら要りません
ネコ
恋愛
伯爵令嬢リリアナは、幼い頃から周囲の期待に応える「完璧なお嬢様」を演じていた。ところが名目上の婚約者である王太子は、聖女と呼ばれる平民の少女に夢中でリリアナを顧みない。そんな彼に尽くす日々に限界を感じたリリアナは、ある日突然「婚約を破棄しましょう」と言い放つ。甘く見ていた王太子と聖女は彼女の本当の力に気づくのが遅すぎた。

領地運営は私抜きでどうぞ~もう勝手におやりください~
ネコ
恋愛
伯爵領を切り盛りするロザリンは、優秀すぎるがゆえに夫から嫉妬され、冷たい仕打ちばかり受けていた。ついに“才能は認めるが愛してはいない”と告げられ離縁を迫られたロザリンは、意外なほどあっさり了承する。すべての管理記録と書類は完璧に自分の下へ置いたまま。この領地を回していたのは誰か、あなたたちが思い知る時が来るでしょう。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる