106 / 108
5章 22 エイダの秘密 1
しおりを挟む
アンディの転移魔法で、私達は寮の前に降り立った。
「はい、着いたよ。ユニス」
アンディは私の肩から手を離した。
「え、ええ……ありがとう」
「色々あって疲れているのに、連れ回してごめん。今夜はゆっくり休んでね。おやすみ、ユニス」
「おやすみなさい、アンディ」
アンディは笑顔で手を振ると、男子寮へ向って去っていった。
その背中を見届けると、私は女子寮の扉を開けた――
「クラリスさん! 無事で良かったわ! ずっとずっと心配していたのよ?」
寮母さんは私を見るなり、寮母室から飛び出して抱きしめてきた。
「あ、あの?」
「本当に……無事に帰ってきてくれて良かったわ……」
寮母さんの声は涙ぐんでいる。
まさか……私のことを心配して泣いているのだろうか?
「寮母さん……心配かけてごめんなさい……」
私はそっと寮母さんの背中に手を回すのだった……。
****
寮母さんと今までどうしていたか説明した後、私は真っ直ぐにエイダの部屋へ向った。
――コンコン
ノックをすると、すぐに扉が開かれてエイダが姿を現した。
「クラリス、待っていたわ。さ、中に入って?」
「ええ、お邪魔するわ」
「どうぞ、ここに座って」
エイダにソファを進められ、向かい合わせでソファに座ると私は早速謝った。
「ごめんね。エイダ、待ったでしょう?」
「ううん、そんなこと無いわ。それでどうだったの? アンディに告白されたんでしょう?」
「え!?」
何故、エイダに分かってしまったのだろう? するとエイダが笑った。
「それで、告白の返事はどうしたの? 付き合うことにしたの?」
「それが……返事、出来なかったの……」
アンディから告白を受けたものの……私はその場で返事が出来なかったのだ。
「え!? どうして!?」
「だっていきなり告白されて、気持ちを受け入れて欲しいと急に言われても……どうしたら良いか分からなかったのだもの」
それにまさかアンディが自分に好意を寄せていたとは思いもしていなかったのだから。
「ふ~ん……それじゃ、アンディと付き合うことは決められなかったのね?」
エイダは頬杖をついた。
「ええ……軽はずみな気持ちで返事をすることは私には出来ないもの。アンディに悪いことをしてしまったわ」
「そうだったのね……でも、今の話を他の皆が聞いたら喜ぶと思うわ」
エイダは意味深な台詞を口にする。
「他の皆って……?」
「そんなのは決まっているじゃない。ザカリー、セシル、それにフレッドのことよ。あの人達は皆クラリスのことを好きなのよ」
「まさか……そんなはず無いわ」
ここは『ニルヴァーナ』のゲーム世界であり、私はヒロインに違いないけれどもこの世界はゲームの世界とは大きく話が変わってしまったのだから。
「どうしてそんなはず無いって言い切れるの?」
エイダが真顔で尋ねてくる。
「それは……皆の態度から……?」
ザカリーのことは良く分らないけれども、少なくともセシルとフレッドは私の単なる監視役なのだから。
すると、思いがけない言葉をエイダは口にした。
「それは違うわ。アンディだけじゃない。ザカリーもセシルもフレッドも……皆あなたに好意を抱いているわ。私にそれが分かってしまうのよ。 クラリス……ううん。ユニス」
そしてエイダは笑顔を私に向けてきた――
「はい、着いたよ。ユニス」
アンディは私の肩から手を離した。
「え、ええ……ありがとう」
「色々あって疲れているのに、連れ回してごめん。今夜はゆっくり休んでね。おやすみ、ユニス」
「おやすみなさい、アンディ」
アンディは笑顔で手を振ると、男子寮へ向って去っていった。
その背中を見届けると、私は女子寮の扉を開けた――
「クラリスさん! 無事で良かったわ! ずっとずっと心配していたのよ?」
寮母さんは私を見るなり、寮母室から飛び出して抱きしめてきた。
「あ、あの?」
「本当に……無事に帰ってきてくれて良かったわ……」
寮母さんの声は涙ぐんでいる。
まさか……私のことを心配して泣いているのだろうか?
「寮母さん……心配かけてごめんなさい……」
私はそっと寮母さんの背中に手を回すのだった……。
****
寮母さんと今までどうしていたか説明した後、私は真っ直ぐにエイダの部屋へ向った。
――コンコン
ノックをすると、すぐに扉が開かれてエイダが姿を現した。
「クラリス、待っていたわ。さ、中に入って?」
「ええ、お邪魔するわ」
「どうぞ、ここに座って」
エイダにソファを進められ、向かい合わせでソファに座ると私は早速謝った。
「ごめんね。エイダ、待ったでしょう?」
「ううん、そんなこと無いわ。それでどうだったの? アンディに告白されたんでしょう?」
「え!?」
何故、エイダに分かってしまったのだろう? するとエイダが笑った。
「それで、告白の返事はどうしたの? 付き合うことにしたの?」
「それが……返事、出来なかったの……」
アンディから告白を受けたものの……私はその場で返事が出来なかったのだ。
「え!? どうして!?」
「だっていきなり告白されて、気持ちを受け入れて欲しいと急に言われても……どうしたら良いか分からなかったのだもの」
それにまさかアンディが自分に好意を寄せていたとは思いもしていなかったのだから。
「ふ~ん……それじゃ、アンディと付き合うことは決められなかったのね?」
エイダは頬杖をついた。
「ええ……軽はずみな気持ちで返事をすることは私には出来ないもの。アンディに悪いことをしてしまったわ」
「そうだったのね……でも、今の話を他の皆が聞いたら喜ぶと思うわ」
エイダは意味深な台詞を口にする。
「他の皆って……?」
「そんなのは決まっているじゃない。ザカリー、セシル、それにフレッドのことよ。あの人達は皆クラリスのことを好きなのよ」
「まさか……そんなはず無いわ」
ここは『ニルヴァーナ』のゲーム世界であり、私はヒロインに違いないけれどもこの世界はゲームの世界とは大きく話が変わってしまったのだから。
「どうしてそんなはず無いって言い切れるの?」
エイダが真顔で尋ねてくる。
「それは……皆の態度から……?」
ザカリーのことは良く分らないけれども、少なくともセシルとフレッドは私の単なる監視役なのだから。
すると、思いがけない言葉をエイダは口にした。
「それは違うわ。アンディだけじゃない。ザカリーもセシルもフレッドも……皆あなたに好意を抱いているわ。私にそれが分かってしまうのよ。 クラリス……ううん。ユニス」
そしてエイダは笑顔を私に向けてきた――
868
お気に入りに追加
3,060
あなたにおすすめの小説
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
ヒロインの味方のモブ令嬢は、ヒロインを見捨てる
mios
恋愛
ヒロインの味方をずっとしておりました。前世の推しであり、やっと出会えたのですから。でもね、ちょっとゲームと雰囲気が違います。
どうやらヒロインに利用されていただけのようです。婚約者?熨斗つけてお渡ししますわ。
金の切れ目は縁の切れ目。私、鞍替え致します。
ヒロインの味方のモブ令嬢が、ヒロインにいいように利用されて、悪役令嬢に助けを求めたら、幸せが待っていた話。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい
廻り
恋愛
王太子妃シャルロット20歳は、前世の記憶が蘇る。
ここは小説の世界で、シャルロットは王太子とヒロインの恋路を邪魔する『悪女役』。
『断罪される運命』から逃れたいが、夫は離婚に応じる気がない。
ならばと、シャルロットは別居を始める。
『夫が離婚に応じたくなる計画』を思いついたシャルロットは、それを実行することに。
夫がヒロインと出会うまで、タイムリミットは一年。
それまでに離婚に応じさせたいシャルロットと、なぜか様子がおかしい夫の話。
モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~
咲桜りおな
恋愛
前世で大好きだった乙女ゲームの世界にモブキャラとして転生した伯爵令嬢のアスチルゼフィラ・ピスケリー。
ヒロインでも悪役令嬢でもないモブキャラだからこそ、推しキャラ達の恋物語を遠くから鑑賞出来る! と楽しみにしていたら、関わりたくないのに何故か悪役令嬢の兄である騎士見習いがやたらと絡んでくる……。
いやいや、物語の当事者になんてなりたくないんです! お願いだから近付かないでぇ!
そんな思いも虚しく愛しの推しは全力でわたしを口説いてくる。おまけにキラキラ王子まで絡んで来て……逃げ場を塞がれてしまったようです。
結構、ところどころでイチャラブしております。
◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆
前作「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」のスピンオフ作品。
この作品だけでもちゃんと楽しんで頂けます。
番外編集もUPしましたので、宜しければご覧下さい。
「小説家になろう」でも公開しています。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜
早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる