転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
104 / 108

5章 20 揉めるヒーローたち

しおりを挟む
 エイダの説得のおかげだろう。
 
ソレイユ伯爵夫妻は自分たちがロザリンをわがままに育ててしまった結果、このようなことになってしまったことを心から詫びた。
そして赤児に戻ってしまったロザリンを連れて、帰っていった。


――その後。

「クラリス、本当に君には悪いことをしてしまった。反省しているよ。そして……ありがとう」

エントランスまで私達を見送りに出てきたリオンが私に謝罪の言葉を述べてきた。

「リオン……」

するとリオンは、フッと笑った。

「何故だろう? 君を見ていると……すごく懐かしい人を思い出すんだ。外見は全く違うのに……ね。不思議だよ」

「え……?」

リオンは……まさか、私の正体に気付いた……?

そのとき。

「リオン、あまりクラリスに馴れ馴れしくしないでくれないか?」

突然ザカリーが私とリオンの前に立ちはだかった。

「そうだ、お前はクラリスに最低なことをした男なんだ。もう金輪際、彼女に近づいたら承知しないからな」

グイッとフレッドが私の肩を引き寄せてくる。

「え? ちょ、ちょっと2人とも……」

性格が似ているザカリーとフレッドは、余程リオンが気に入らないのか睨みつけている。

「だ、大丈夫だよ。もう二度とあんな真似はしないと約束するよ。大体、こんなに大勢に守られているんじゃ、俺の入り込む隙なんかあるはずないしね」

リオンは苦笑し、チラリと私に視線を送る。

「ほら、クラリスが困っているだろう。フレッド、その手を離せよ」

セシルが私の肩を抱いていたフレッドの手を離した。

「それじゃ、帰ろう。クラリス」

そして私に笑顔を向ける。

「ええ、そうね」

すると、隣にいたエイダが私の耳元で囁いた。

「ねぇ、クラリス。後で大事な話があるの。寮に戻ったら、2人きりで話をさせて?」

「ええ、勿論よ」

当然私は頷いた。
だって、エイダにはまだまだ聞きたいことが沢山あるのだから。

そこへアンディが突然私とエイダの話に入ってきた。

「何? 何か2人で話をしていたのかい?」

「ええ。女同士大事な話よ。ね? クラリス」

「そうね」

エイダの言葉に頷く。

「そうか……実は僕もクラリスと2人だけで大事な話がしたいんだ。皆は先に帰っていてくれないかな?」

アンディの言葉に、私を除いたその場にいる全員が一斉に問い詰めてきた。

「何だって? 一体何考えてるんだよ。お前は!」

「そうだ! 大体2人だけで何を話すつもりだ!」

フレッドとザカリーが文句を言ってきた。

「クラリスは疲れているだろうから、早く帰ったほうがいいんじゃないか?」

珍しくセシルが不機嫌そうにしている。

「後で、ちゃんとクラリスを送ってくれるなら私は別に構わないけどね」

エイダは肩をすくめる。

「え? ちょっと皆……」

リオンは突然始まった口論に戸惑っている。私を中心に、何故かこの世界のヒーローたちの間で揉め事が始まってしまった。

「あ、あのね。アンディ……」

困った私はアンディに声をかけたとき。

「全く、皆うるさいなぁ。行こう、クラリス」

「え?」

アンディが私の肩を抱き寄せたその途端、眼の前の景色が突然変わった――


しおりを挟む
感想 362

あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

ヒロインの味方のモブ令嬢は、ヒロインを見捨てる

mios
恋愛
ヒロインの味方をずっとしておりました。前世の推しであり、やっと出会えたのですから。でもね、ちょっとゲームと雰囲気が違います。 どうやらヒロインに利用されていただけのようです。婚約者?熨斗つけてお渡ししますわ。 金の切れ目は縁の切れ目。私、鞍替え致します。 ヒロインの味方のモブ令嬢が、ヒロインにいいように利用されて、悪役令嬢に助けを求めたら、幸せが待っていた話。

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

今世ではあなたと結婚なんてお断りです!

水川サキ
恋愛
私は夫に殺された。 正確には、夫とその愛人である私の親友に。 夫である王太子殿下に剣で身体を貫かれ、死んだと思ったら1年前に戻っていた。 もう二度とあんな目に遭いたくない。 今度はあなたと結婚なんて、絶対にしませんから。 あなたの人生なんて知ったことではないけれど、 破滅するまで見守ってさしあげますわ!

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

処理中です...