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5章 20 揉めるヒーローたち
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エイダの説得のおかげだろう。
ソレイユ伯爵夫妻は自分たちがロザリンをわがままに育ててしまった結果、このようなことになってしまったことを心から詫びた。
そして赤児に戻ってしまったロザリンを連れて、帰っていった。
――その後。
「クラリス、本当に君には悪いことをしてしまった。反省しているよ。そして……ありがとう」
エントランスまで私達を見送りに出てきたリオンが私に謝罪の言葉を述べてきた。
「リオン……」
するとリオンは、フッと笑った。
「何故だろう? 君を見ていると……すごく懐かしい人を思い出すんだ。外見は全く違うのに……ね。不思議だよ」
「え……?」
リオンは……まさか、私の正体に気付いた……?
そのとき。
「リオン、あまりクラリスに馴れ馴れしくしないでくれないか?」
突然ザカリーが私とリオンの前に立ちはだかった。
「そうだ、お前はクラリスに最低なことをした男なんだ。もう金輪際、彼女に近づいたら承知しないからな」
グイッとフレッドが私の肩を引き寄せてくる。
「え? ちょ、ちょっと2人とも……」
性格が似ているザカリーとフレッドは、余程リオンが気に入らないのか睨みつけている。
「だ、大丈夫だよ。もう二度とあんな真似はしないと約束するよ。大体、こんなに大勢に守られているんじゃ、俺の入り込む隙なんかあるはずないしね」
リオンは苦笑し、チラリと私に視線を送る。
「ほら、クラリスが困っているだろう。フレッド、その手を離せよ」
セシルが私の肩を抱いていたフレッドの手を離した。
「それじゃ、帰ろう。クラリス」
そして私に笑顔を向ける。
「ええ、そうね」
すると、隣にいたエイダが私の耳元で囁いた。
「ねぇ、クラリス。後で大事な話があるの。寮に戻ったら、2人きりで話をさせて?」
「ええ、勿論よ」
当然私は頷いた。
だって、エイダにはまだまだ聞きたいことが沢山あるのだから。
そこへアンディが突然私とエイダの話に入ってきた。
「何? 何か2人で話をしていたのかい?」
「ええ。女同士大事な話よ。ね? クラリス」
「そうね」
エイダの言葉に頷く。
「そうか……実は僕もクラリスと2人だけで大事な話がしたいんだ。皆は先に帰っていてくれないかな?」
アンディの言葉に、私を除いたその場にいる全員が一斉に問い詰めてきた。
「何だって? 一体何考えてるんだよ。お前は!」
「そうだ! 大体2人だけで何を話すつもりだ!」
フレッドとザカリーが文句を言ってきた。
「クラリスは疲れているだろうから、早く帰ったほうがいいんじゃないか?」
珍しくセシルが不機嫌そうにしている。
「後で、ちゃんとクラリスを送ってくれるなら私は別に構わないけどね」
エイダは肩をすくめる。
「え? ちょっと皆……」
リオンは突然始まった口論に戸惑っている。私を中心に、何故かこの世界のヒーローたちの間で揉め事が始まってしまった。
「あ、あのね。アンディ……」
困った私はアンディに声をかけたとき。
「全く、皆うるさいなぁ。行こう、クラリス」
「え?」
アンディが私の肩を抱き寄せたその途端、眼の前の景色が突然変わった――
ソレイユ伯爵夫妻は自分たちがロザリンをわがままに育ててしまった結果、このようなことになってしまったことを心から詫びた。
そして赤児に戻ってしまったロザリンを連れて、帰っていった。
――その後。
「クラリス、本当に君には悪いことをしてしまった。反省しているよ。そして……ありがとう」
エントランスまで私達を見送りに出てきたリオンが私に謝罪の言葉を述べてきた。
「リオン……」
するとリオンは、フッと笑った。
「何故だろう? 君を見ていると……すごく懐かしい人を思い出すんだ。外見は全く違うのに……ね。不思議だよ」
「え……?」
リオンは……まさか、私の正体に気付いた……?
そのとき。
「リオン、あまりクラリスに馴れ馴れしくしないでくれないか?」
突然ザカリーが私とリオンの前に立ちはだかった。
「そうだ、お前はクラリスに最低なことをした男なんだ。もう金輪際、彼女に近づいたら承知しないからな」
グイッとフレッドが私の肩を引き寄せてくる。
「え? ちょ、ちょっと2人とも……」
性格が似ているザカリーとフレッドは、余程リオンが気に入らないのか睨みつけている。
「だ、大丈夫だよ。もう二度とあんな真似はしないと約束するよ。大体、こんなに大勢に守られているんじゃ、俺の入り込む隙なんかあるはずないしね」
リオンは苦笑し、チラリと私に視線を送る。
「ほら、クラリスが困っているだろう。フレッド、その手を離せよ」
セシルが私の肩を抱いていたフレッドの手を離した。
「それじゃ、帰ろう。クラリス」
そして私に笑顔を向ける。
「ええ、そうね」
すると、隣にいたエイダが私の耳元で囁いた。
「ねぇ、クラリス。後で大事な話があるの。寮に戻ったら、2人きりで話をさせて?」
「ええ、勿論よ」
当然私は頷いた。
だって、エイダにはまだまだ聞きたいことが沢山あるのだから。
そこへアンディが突然私とエイダの話に入ってきた。
「何? 何か2人で話をしていたのかい?」
「ええ。女同士大事な話よ。ね? クラリス」
「そうね」
エイダの言葉に頷く。
「そうか……実は僕もクラリスと2人だけで大事な話がしたいんだ。皆は先に帰っていてくれないかな?」
アンディの言葉に、私を除いたその場にいる全員が一斉に問い詰めてきた。
「何だって? 一体何考えてるんだよ。お前は!」
「そうだ! 大体2人だけで何を話すつもりだ!」
フレッドとザカリーが文句を言ってきた。
「クラリスは疲れているだろうから、早く帰ったほうがいいんじゃないか?」
珍しくセシルが不機嫌そうにしている。
「後で、ちゃんとクラリスを送ってくれるなら私は別に構わないけどね」
エイダは肩をすくめる。
「え? ちょっと皆……」
リオンは突然始まった口論に戸惑っている。私を中心に、何故かこの世界のヒーローたちの間で揉め事が始まってしまった。
「あ、あのね。アンディ……」
困った私はアンディに声をかけたとき。
「全く、皆うるさいなぁ。行こう、クラリス」
「え?」
アンディが私の肩を抱き寄せたその途端、眼の前の景色が突然変わった――
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