89 / 108
5章 5 仕方の無いこと
しおりを挟む
私とエイダが学生食堂に行くと、既に4人全員が揃っていた。
「2人とも、待っていたよ」
一番フレンドリーなアンディが真っ先に声をかけてきた。
「席を取っておいてくれて、ありがとう」
私がお礼を言うと、アンディがニコリと笑顔を向ける。
「2人は何がいい?」
セシルがメニュー表を差し出してきたので私とエイダは無難なところで、レディースセットを注文した――
****
「それで、初めての魔術の授業はどうだったんだ?」
食事が始まると、真っ先にフレッドが尋ねてきた。
「それが聞いてちょうだいよ。驚くことにロザリンが一緒のクラスだったのよ。しかもリオンまで!」
エイダが興奮気味に語る。
「何だって!? それは本当の話か!?」
ザカリーが驚きの声を上げる。
「こんなこと、冗談で言えるはずないわよ。ね、クラリス」
「え、ええ。そうなの……まさか女子学生のクラスに男子学生が来るとは思わなかったわ……」
皆の手前、あえてリオンの名前は口にしなかった。
「驚いたな……確かにロザリンとリオンは常に同じクラスに在籍していたが……まさか男女別の授業まで一緒に出ているとは……」
アンディが眉をひそめる。
「それじゃまるで、リオンはロザリンの保護者みたいじゃないか」
「いや、保護者というよりはロザリンに管理されているよなものだ。2人はまるで主従関係に近いと思う」
セシルの言葉にアンディは首を振る。
主従関係……。
6年前の火事で、リオンとロザリンの関係は大きく変わってしまったのだ。リオンは完全にロザリンに支配されてしまっている。
「……可愛そうだわ」
思わず、本音が口をついて出てしまった。
「え? クラリス……?」
エイダが怪訝そうに首を傾げる。視線を感じて顔を上げると、じっと私を見つめるセシルとフレッドの姿があった。
「ほ、ほら。私もロザリンに怒鳴られたでしょう? あの勢いで毎日ロザリンから怒られるのは辛いだろうなって思ったのよ」
セシルとフレッドの前でリオンに感情移入するわけにはいかず、慌てて取り繕った。
「そうだな。でもリオンが一緒にいるなら、今後ロザリンがクラリスに何か文句を言ってこようとしても止めてくれるんじゃないか?」
「うん、僕もそう思うよ。大体、あの授業は月に2回しかないからね。ところで話は変わるけど……」
ザカリーに続いてアンディが話題を変えてくれて、この話は終わりになった。
食事をしながら、6人での楽しい会話が続いている。
けれど、セシルとフレッドが時折じっと私を見つめてくることに居心地の悪さを感じずにはいられなかった。
……きっと、この様子では後で2人から呼び出しをされてしまうかもしれない。
憂鬱な気持ちを抱えながら、私は食事を続けるのだった。
――昼食後
皆で食べ終わったトレーをカウンターに運んでいると、背後からセシルが小さく声をかけてきた。
「クラリス、今夜話がある。21時に中庭のガゼボで待っているから」
振り向くと、セシルの隣にはフレッドの姿もある。彼は無言で私を見下ろしている。
やはり先程の件で、2人から釘を差されるのだろう。でも私の監視が彼らの役目なのだから仕方無いことだろう。
「……分かったわ、今夜9時ね」
「うん、待ってるよ」
セシルは笑顔で頷いた。
けれど……この日、結局私は約束を守ることが出来なかった――
「2人とも、待っていたよ」
一番フレンドリーなアンディが真っ先に声をかけてきた。
「席を取っておいてくれて、ありがとう」
私がお礼を言うと、アンディがニコリと笑顔を向ける。
「2人は何がいい?」
セシルがメニュー表を差し出してきたので私とエイダは無難なところで、レディースセットを注文した――
****
「それで、初めての魔術の授業はどうだったんだ?」
食事が始まると、真っ先にフレッドが尋ねてきた。
「それが聞いてちょうだいよ。驚くことにロザリンが一緒のクラスだったのよ。しかもリオンまで!」
エイダが興奮気味に語る。
「何だって!? それは本当の話か!?」
ザカリーが驚きの声を上げる。
「こんなこと、冗談で言えるはずないわよ。ね、クラリス」
「え、ええ。そうなの……まさか女子学生のクラスに男子学生が来るとは思わなかったわ……」
皆の手前、あえてリオンの名前は口にしなかった。
「驚いたな……確かにロザリンとリオンは常に同じクラスに在籍していたが……まさか男女別の授業まで一緒に出ているとは……」
アンディが眉をひそめる。
「それじゃまるで、リオンはロザリンの保護者みたいじゃないか」
「いや、保護者というよりはロザリンに管理されているよなものだ。2人はまるで主従関係に近いと思う」
セシルの言葉にアンディは首を振る。
主従関係……。
6年前の火事で、リオンとロザリンの関係は大きく変わってしまったのだ。リオンは完全にロザリンに支配されてしまっている。
「……可愛そうだわ」
思わず、本音が口をついて出てしまった。
「え? クラリス……?」
エイダが怪訝そうに首を傾げる。視線を感じて顔を上げると、じっと私を見つめるセシルとフレッドの姿があった。
「ほ、ほら。私もロザリンに怒鳴られたでしょう? あの勢いで毎日ロザリンから怒られるのは辛いだろうなって思ったのよ」
セシルとフレッドの前でリオンに感情移入するわけにはいかず、慌てて取り繕った。
「そうだな。でもリオンが一緒にいるなら、今後ロザリンがクラリスに何か文句を言ってこようとしても止めてくれるんじゃないか?」
「うん、僕もそう思うよ。大体、あの授業は月に2回しかないからね。ところで話は変わるけど……」
ザカリーに続いてアンディが話題を変えてくれて、この話は終わりになった。
食事をしながら、6人での楽しい会話が続いている。
けれど、セシルとフレッドが時折じっと私を見つめてくることに居心地の悪さを感じずにはいられなかった。
……きっと、この様子では後で2人から呼び出しをされてしまうかもしれない。
憂鬱な気持ちを抱えながら、私は食事を続けるのだった。
――昼食後
皆で食べ終わったトレーをカウンターに運んでいると、背後からセシルが小さく声をかけてきた。
「クラリス、今夜話がある。21時に中庭のガゼボで待っているから」
振り向くと、セシルの隣にはフレッドの姿もある。彼は無言で私を見下ろしている。
やはり先程の件で、2人から釘を差されるのだろう。でも私の監視が彼らの役目なのだから仕方無いことだろう。
「……分かったわ、今夜9時ね」
「うん、待ってるよ」
セシルは笑顔で頷いた。
けれど……この日、結局私は約束を守ることが出来なかった――
958
お気に入りに追加
3,060
あなたにおすすめの小説
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
ヒロインの味方のモブ令嬢は、ヒロインを見捨てる
mios
恋愛
ヒロインの味方をずっとしておりました。前世の推しであり、やっと出会えたのですから。でもね、ちょっとゲームと雰囲気が違います。
どうやらヒロインに利用されていただけのようです。婚約者?熨斗つけてお渡ししますわ。
金の切れ目は縁の切れ目。私、鞍替え致します。
ヒロインの味方のモブ令嬢が、ヒロインにいいように利用されて、悪役令嬢に助けを求めたら、幸せが待っていた話。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~
咲桜りおな
恋愛
前世で大好きだった乙女ゲームの世界にモブキャラとして転生した伯爵令嬢のアスチルゼフィラ・ピスケリー。
ヒロインでも悪役令嬢でもないモブキャラだからこそ、推しキャラ達の恋物語を遠くから鑑賞出来る! と楽しみにしていたら、関わりたくないのに何故か悪役令嬢の兄である騎士見習いがやたらと絡んでくる……。
いやいや、物語の当事者になんてなりたくないんです! お願いだから近付かないでぇ!
そんな思いも虚しく愛しの推しは全力でわたしを口説いてくる。おまけにキラキラ王子まで絡んで来て……逃げ場を塞がれてしまったようです。
結構、ところどころでイチャラブしております。
◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆
前作「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」のスピンオフ作品。
この作品だけでもちゃんと楽しんで頂けます。
番外編集もUPしましたので、宜しければご覧下さい。
「小説家になろう」でも公開しています。
悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい
廻り
恋愛
王太子妃シャルロット20歳は、前世の記憶が蘇る。
ここは小説の世界で、シャルロットは王太子とヒロインの恋路を邪魔する『悪女役』。
『断罪される運命』から逃れたいが、夫は離婚に応じる気がない。
ならばと、シャルロットは別居を始める。
『夫が離婚に応じたくなる計画』を思いついたシャルロットは、それを実行することに。
夫がヒロインと出会うまで、タイムリミットは一年。
それまでに離婚に応じさせたいシャルロットと、なぜか様子がおかしい夫の話。
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。
バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。
瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。
そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。
その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。
そして……。
本編全79話
番外編全34話
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる