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4章9 言い争い
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「俺達に何の用だ?」
フレッドは返事をしながら、さり気なく私を自分の背後に隠した。
「あなたに用は無いわ。用があるのは後ろに隠れている、そこの女よ!」
ロザリンの声には憎悪が混じっている。その凄まじい迫力に、背筋がぞっとする。
「ロザリン。廊下でそんな大きな声を出すのは、やめたほうがいいよ」
リオンがロザリンを止めている……けれど、その声は何処か弱々しい。
「リオンは黙っていて頂戴! あの女は勝手に私達の話を盗み聞きしていたのよ? 謝罪の言葉を貰うまでは許さないんだから!」
やっぱり、ロザリンに姿を見られていたのだ。
しかもリオンまで一緒にいるなんて……身体が思わず震える。
すると私の代わりにフレッドが返事をした。
「あぁ、その話なら俺も聞いた。教室へ行く近道の為に中庭を歩いていたら大きな声に、驚いて見てしまったらしい。別に盗み聞きをしたわけじゃないぞ」
「あなたになんか聞いていないわ! 私はそこの女に言ってるのよ!」
ますますロザリンの声が大きくなる。
「フ、フレッド……私、彼女に謝るわ……」
「駄目だ、お前は何も話すな。万一声で気づかれてしまったらどうする?」
小声でフレッドに訴えると、首を振られてしまった。
「だけど……」
すると再びロザリンが怒鳴ってきた。
「そこの2人! 一体何をこそこそ話しているのよ!!」
「ロザリン、落ち着けよ」
「リオンは口出ししないで!! 男の陰にコソコソ隠れているんじゃないわよ!
見かねた様子でリオンがロザリンを宥めるも、言うことを聞かない。
「彼女は内気で人前で話すのは苦手なんだ。どうしても気に入らないって言うなら俺が謝る。すまなかった、どうか許してやって欲しい」
するとフレッドが私の代わりに謝罪の言葉を述べた。
「ふ~ん……よほど、その女が大切なのね? ひょっとして貴方の恋人か婚約者なのかしら?」
「俺にとって彼女は……守らなければならない相手だからな」
「え……? 」
その言葉はあまりにも意外だった。私はフレッドやセシルに取って単なる監視対象者だとばかり思っていた。
だけど本当は私を守る為に……?
「あ、そう! やっぱり美人は得よね? そんなに大切に思われるなんて……! なのに、私は……!」
「いい加減にするんだ! ロザリン!」
今まで弱気な態度を見せていたリオンの様子が変わった。
「何よ! リオンッ! 私に指図する気!」
「ああ、するよ。俺の事はどれほど罵って貰っても構わない。だが、全く関係ない相手に八つ当たりするのはやめるんだ!」
「八つ当たりですって……!?」
「そうだ、ロザリンのやっていることは八つ当たりもいいところだ!」
「酷いわ……! 人の気もしらないで! リオンのバカッ!」
ロザリンは叫ぶと走り去ってしまった。
「ロザリン! 待ってくれ!」
リオンもロザリンの後を追いかけようとし……一度こちらを振り返った。
「2人とも、嫌な思いをさせてすまなかった。俺の方から彼女には良く言い聞かせておくから……どうか彼女を責めないでくれないか? 頼む」
「そっちこそ、よくあの女に言い聞かせておくべきだな。他人に八つ当たりするなって、それより早く追いかけたほうが良いんじゃないか? 見失うぞ」
「分かってる。本当に悪かったよ」
リオンは踵を返すとロザリンの後を追って行く。その後姿を見届けるとフレッドがボソリと口を開いた。
「……行ったな。全く迷惑な奴らだ」
「え、ええ……。ありがとうフレッド。それに迷惑かけてごめんなさい」
「これで良く分かっただろう?」
謝罪の言葉を述べると、フレッドは私の方を向いた。
「そうね……」
「あの2人に関わると、ろくな目に遭わないって身を持って知っただろう? これに懲りて、二度と彼らに近づこうとするな。いいか?」
じっと私を見つめてくるフレッド。
「貴方の言う通り、もう絶対に近づかないわ」
「それと、学園内でも1人になるな。必ず俺達か、あと……さっきの友人と一緒に行動しろ」
「え? それじゃ……」
「確かに、さっきは過去の自分を知っている相手には近づくなと言ったが……状況は変わった。厄介なロザリンに目をつけられてしまったからな。あの友人は信頼できるんだろう?」
「勿論よ。エイダは私の大切な親友だから」
私は自身を持って頷いた。
「そうか、ならいい。それじゃ、行くぞ」
そして私の手を繋いできたので、思わず彼を見上げてしまった。
「……はぐれない為にだ。クラリスはただでさえ目立つからな」
「分かったわ」
そして私とフレッドは手を繋いだまま、セシルたちの待つ学生食堂へ向った――
フレッドは返事をしながら、さり気なく私を自分の背後に隠した。
「あなたに用は無いわ。用があるのは後ろに隠れている、そこの女よ!」
ロザリンの声には憎悪が混じっている。その凄まじい迫力に、背筋がぞっとする。
「ロザリン。廊下でそんな大きな声を出すのは、やめたほうがいいよ」
リオンがロザリンを止めている……けれど、その声は何処か弱々しい。
「リオンは黙っていて頂戴! あの女は勝手に私達の話を盗み聞きしていたのよ? 謝罪の言葉を貰うまでは許さないんだから!」
やっぱり、ロザリンに姿を見られていたのだ。
しかもリオンまで一緒にいるなんて……身体が思わず震える。
すると私の代わりにフレッドが返事をした。
「あぁ、その話なら俺も聞いた。教室へ行く近道の為に中庭を歩いていたら大きな声に、驚いて見てしまったらしい。別に盗み聞きをしたわけじゃないぞ」
「あなたになんか聞いていないわ! 私はそこの女に言ってるのよ!」
ますますロザリンの声が大きくなる。
「フ、フレッド……私、彼女に謝るわ……」
「駄目だ、お前は何も話すな。万一声で気づかれてしまったらどうする?」
小声でフレッドに訴えると、首を振られてしまった。
「だけど……」
すると再びロザリンが怒鳴ってきた。
「そこの2人! 一体何をこそこそ話しているのよ!!」
「ロザリン、落ち着けよ」
「リオンは口出ししないで!! 男の陰にコソコソ隠れているんじゃないわよ!
見かねた様子でリオンがロザリンを宥めるも、言うことを聞かない。
「彼女は内気で人前で話すのは苦手なんだ。どうしても気に入らないって言うなら俺が謝る。すまなかった、どうか許してやって欲しい」
するとフレッドが私の代わりに謝罪の言葉を述べた。
「ふ~ん……よほど、その女が大切なのね? ひょっとして貴方の恋人か婚約者なのかしら?」
「俺にとって彼女は……守らなければならない相手だからな」
「え……? 」
その言葉はあまりにも意外だった。私はフレッドやセシルに取って単なる監視対象者だとばかり思っていた。
だけど本当は私を守る為に……?
「あ、そう! やっぱり美人は得よね? そんなに大切に思われるなんて……! なのに、私は……!」
「いい加減にするんだ! ロザリン!」
今まで弱気な態度を見せていたリオンの様子が変わった。
「何よ! リオンッ! 私に指図する気!」
「ああ、するよ。俺の事はどれほど罵って貰っても構わない。だが、全く関係ない相手に八つ当たりするのはやめるんだ!」
「八つ当たりですって……!?」
「そうだ、ロザリンのやっていることは八つ当たりもいいところだ!」
「酷いわ……! 人の気もしらないで! リオンのバカッ!」
ロザリンは叫ぶと走り去ってしまった。
「ロザリン! 待ってくれ!」
リオンもロザリンの後を追いかけようとし……一度こちらを振り返った。
「2人とも、嫌な思いをさせてすまなかった。俺の方から彼女には良く言い聞かせておくから……どうか彼女を責めないでくれないか? 頼む」
「そっちこそ、よくあの女に言い聞かせておくべきだな。他人に八つ当たりするなって、それより早く追いかけたほうが良いんじゃないか? 見失うぞ」
「分かってる。本当に悪かったよ」
リオンは踵を返すとロザリンの後を追って行く。その後姿を見届けるとフレッドがボソリと口を開いた。
「……行ったな。全く迷惑な奴らだ」
「え、ええ……。ありがとうフレッド。それに迷惑かけてごめんなさい」
「これで良く分かっただろう?」
謝罪の言葉を述べると、フレッドは私の方を向いた。
「そうね……」
「あの2人に関わると、ろくな目に遭わないって身を持って知っただろう? これに懲りて、二度と彼らに近づこうとするな。いいか?」
じっと私を見つめてくるフレッド。
「貴方の言う通り、もう絶対に近づかないわ」
「それと、学園内でも1人になるな。必ず俺達か、あと……さっきの友人と一緒に行動しろ」
「え? それじゃ……」
「確かに、さっきは過去の自分を知っている相手には近づくなと言ったが……状況は変わった。厄介なロザリンに目をつけられてしまったからな。あの友人は信頼できるんだろう?」
「勿論よ。エイダは私の大切な親友だから」
私は自身を持って頷いた。
「そうか、ならいい。それじゃ、行くぞ」
そして私の手を繋いできたので、思わず彼を見上げてしまった。
「……はぐれない為にだ。クラリスはただでさえ目立つからな」
「分かったわ」
そして私とフレッドは手を繋いだまま、セシルたちの待つ学生食堂へ向った――
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