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4章5 聞こえてきた声
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ヒーローたちに取り囲まれ、息の詰まるような1時限目のガイダンスが終わった。
2時限目は男女別れてのガイダンスで、内心私はホッとしていた。
「クラリス、女子学生の2時限目のガイダンスが行われる場所は知っているかい?」
右隣に座っていたアンディが話しかけてきた。
「知ってるわ。南校舎の大教室で行われるのよね」
「1人で心配だな……俺が連れて行ってやろう」
左隣のザカリーが声をかけてきた。
「え? い、いいわよ。それくらい、1人で行けるわ」
「だが、この校舎は広い。迷ったら2時限目に間に合わなくなる」
「だけど、男子学生のガイダンスは東校舎よ? 全く正反対の場所だから私を送っていったら間に合わなくなるかもしれないじゃない」
何故、こんなにザカリーは構ってくるのだろう? もしかして私と2人だけで話したいことでもあるのだろうか?
「クラリスを送るなら、俺達の役目だ。そうだろう? セシル」
するとフレッドが会話に入り、セシルに同意を求めてきた。
「え? あ……そ、そうだね」
不意に話を振られたセシルは慌てて返事をする。
「そこまで君たちに付きまとわれたら、さすがにクラリスだって息が詰まるんじゃないかなぁ?」
アンディが笑顔で凄いセリフを言うと、フレッドは彼を無言で睨みつけた。
「アンディの言うとおりだ。大体、先に教室へ連れて行くと言ったのは俺だぞ?」
ザカリーの言葉にフレッドが言い返す。
「お前にそんな資格はないんだよ」
「何……? それはどういう意味だよ?」
私の意思をそっちのけで、ついに2人の睨み合いが始まってしまった。
「ちょっと2人とも。落ち着けよ」
「そうだよ。なら行きと帰りで役割を分担したらどうだい?」
セシルが止めに入り、アンディはとんでもないことを提案してきた。
周囲では険悪なムードが漂っている私達をみてヒソヒソと話している。その状況がいたたまれなかった。
「何だ? あれは痴話喧嘩か?」
「あの女子学生を4人が取り合ってるんじゃないか?」
「いやね~……ちょっと、美人だからって」
「本当、気に入らないわ」
とうとう私に対する批判まで始まってしまった。
もうこれ以上、ここにいるのは限界だ。
「あ、あの! 私1人で行ってくるから付き添いは大丈夫よ!」
ガタッと席を立つとカバンを抱えて、驚き顔の4人の男性たちの間をすり抜けるように教室から走り出た――
「ふぅ……一体何だったの……?」
カバンを抱えながら、私は1人で廊下を歩いていた。
あの様子だと、恐らくザカリーはセシルやフレッドに聞かれたくない話がしたいのだろう。そしてフレッドは私に余計なことを喋らせないために……。
でも、あんな状況は他の人たちから見れば誤解を招かれてもおかしくない。
ますます女子学生の風当たりが強くなってしまった。
ため息をつき、時計を見ると次のガイダンスまで残り時間10分を切っていた。
「早く南校舎へ急がなきゃ」
余計なトラブルで、教室を出るのがすっかり遅くなってしまった。
何気なく窓に視線を動かすと、美しい中庭が見えている。
「そうだわ、中庭を通り抜ければ南校舎に行けるじゃない」
近道を思い出した私は早速、中庭へ出る扉をくぐり抜けて外へと出た。
「……綺麗な中庭ね……」
樹木が立ち並び、美しく整えられた芝生を歩いていたとき。
「私の前で、他の女子学生と話をしないでよ!!」
突然女性のヒステリックな声が中庭に響き渡り、驚きで肩が跳ねてしまった。
「な、何?」
声が聞こえた方向を振り返ると、茂みの奥から見え隠れしている男女の姿があった。
「違うよ、あれは校舎の場所を聞かれたから教えただけだったじゃないか」
男性の困った声が聞こえる。
「それでも駄目よ!! 私との約束を忘れたの!? リオンッ!!」
え……?
その名前に、思わず息を呑んだ――
2時限目は男女別れてのガイダンスで、内心私はホッとしていた。
「クラリス、女子学生の2時限目のガイダンスが行われる場所は知っているかい?」
右隣に座っていたアンディが話しかけてきた。
「知ってるわ。南校舎の大教室で行われるのよね」
「1人で心配だな……俺が連れて行ってやろう」
左隣のザカリーが声をかけてきた。
「え? い、いいわよ。それくらい、1人で行けるわ」
「だが、この校舎は広い。迷ったら2時限目に間に合わなくなる」
「だけど、男子学生のガイダンスは東校舎よ? 全く正反対の場所だから私を送っていったら間に合わなくなるかもしれないじゃない」
何故、こんなにザカリーは構ってくるのだろう? もしかして私と2人だけで話したいことでもあるのだろうか?
「クラリスを送るなら、俺達の役目だ。そうだろう? セシル」
するとフレッドが会話に入り、セシルに同意を求めてきた。
「え? あ……そ、そうだね」
不意に話を振られたセシルは慌てて返事をする。
「そこまで君たちに付きまとわれたら、さすがにクラリスだって息が詰まるんじゃないかなぁ?」
アンディが笑顔で凄いセリフを言うと、フレッドは彼を無言で睨みつけた。
「アンディの言うとおりだ。大体、先に教室へ連れて行くと言ったのは俺だぞ?」
ザカリーの言葉にフレッドが言い返す。
「お前にそんな資格はないんだよ」
「何……? それはどういう意味だよ?」
私の意思をそっちのけで、ついに2人の睨み合いが始まってしまった。
「ちょっと2人とも。落ち着けよ」
「そうだよ。なら行きと帰りで役割を分担したらどうだい?」
セシルが止めに入り、アンディはとんでもないことを提案してきた。
周囲では険悪なムードが漂っている私達をみてヒソヒソと話している。その状況がいたたまれなかった。
「何だ? あれは痴話喧嘩か?」
「あの女子学生を4人が取り合ってるんじゃないか?」
「いやね~……ちょっと、美人だからって」
「本当、気に入らないわ」
とうとう私に対する批判まで始まってしまった。
もうこれ以上、ここにいるのは限界だ。
「あ、あの! 私1人で行ってくるから付き添いは大丈夫よ!」
ガタッと席を立つとカバンを抱えて、驚き顔の4人の男性たちの間をすり抜けるように教室から走り出た――
「ふぅ……一体何だったの……?」
カバンを抱えながら、私は1人で廊下を歩いていた。
あの様子だと、恐らくザカリーはセシルやフレッドに聞かれたくない話がしたいのだろう。そしてフレッドは私に余計なことを喋らせないために……。
でも、あんな状況は他の人たちから見れば誤解を招かれてもおかしくない。
ますます女子学生の風当たりが強くなってしまった。
ため息をつき、時計を見ると次のガイダンスまで残り時間10分を切っていた。
「早く南校舎へ急がなきゃ」
余計なトラブルで、教室を出るのがすっかり遅くなってしまった。
何気なく窓に視線を動かすと、美しい中庭が見えている。
「そうだわ、中庭を通り抜ければ南校舎に行けるじゃない」
近道を思い出した私は早速、中庭へ出る扉をくぐり抜けて外へと出た。
「……綺麗な中庭ね……」
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突然女性のヒステリックな声が中庭に響き渡り、驚きで肩が跳ねてしまった。
「な、何?」
声が聞こえた方向を振り返ると、茂みの奥から見え隠れしている男女の姿があった。
「違うよ、あれは校舎の場所を聞かれたから教えただけだったじゃないか」
男性の困った声が聞こえる。
「それでも駄目よ!! 私との約束を忘れたの!? リオンッ!!」
え……?
その名前に、思わず息を呑んだ――
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