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4章1 私の願い
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アンディとザカリーの3人で話をした翌朝――
「ふわ……」
寮の食堂で欠伸が出そうになるのを必死で堪えていると、隣で食事をしているエイダが尋ねてきた。
「どうしたの、クラリス。随分眠そうね?」
「え、ええ。少し寝不足で」
「そう言えば、昨夜何処かに出掛けたみたいだけど、それが寝不足の原因?」
エイダは必要以上のことを聞いてくることはない。それは今も昔も変わらない。私は彼女のそういうところが好きだった。
「そんなところね。夜の学園を歩いてみたかった」
曖昧な説明でごまかす。
学生寮は基本、門限が設けられていない。学生たちは全員寮の扉の鍵を渡されているので出入り自由なのだ。
ただし、異性の出入りは禁止されている。
昨夜は結局22時過ぎまで3人で話をしていたので、寝るのが0時を過ぎてしまっていたのだ。
「そうだったのね……はい、これあげる」
突然、エイダがフルーツの乗った皿を寄こしてきた。
「え? どうしたの?」
「フルーツを食べれば目も覚めるわよね?」
「い、いいわよ。だってエイダの分を貰うわけにはいかないわ」
「私ならいいのよ。 そんなにお腹もすいていないし。それに……フルーツ好きでしょう?」
確かに私はフルーツが大好きだった。でも、エイダの断定的な言い方が気になる。
まるで最初から私がフルーツ好きなことを知っているような口ぶりに聞こえてしまう。
まさか……?
「ありがと、それじゃお言葉に甘えて貰うわね?」
少しの疑問を抑えて、私はフルーツの皿を受け取った。
皿の上にはメロンとオレンジ、イチゴが乗っている。
「ええ、どうぞ」
早速、イチゴを口に入れ……つい笑みがこぼれてしまう。
「……」
何故かエイダは私をじっと見つめている。
「どうかしたの?」
「いいえ、美味しそうに食べていると思っただけよ」
その時。
強い視線を感じて顔を上げると、こちらを睨みつけている女子学生がいた。
その女子学生は、昨日私に文句を言ってきたブレンダだった。彼女は私と目が合うと、すぐに顔をそらせてしまった。
どうやら、彼女は私のことが相当気に入らないらしい。
これから4年間、あのような視線を向けられてしまうのだろうか……。
「どうかしたの? クラリス」
エイダが尋ねてきた。
「ううん、何でも無いわ」
否定したものの、エイダは気付いた様だ。
「あぁ……昨日の彼女ね。気にすること無いわ、あの人は中等部の頃からアンディ様のファンクラブに入っていたのよ」
「え? ファンクラブ?」
そんな話は初耳だ。確かに初等部の頃から人気はあったけれども、まさかファンクラブがあったなんて……。
「しかも、リーダーは彼女なのよ。何しろ自分でファンクラブを立ち上げた人だから」
「そうだったの……」
どうやら私は厄介な人物に目をつけられてしまったようだ。
「大丈夫よ、女子寮で何かクラリスに文句を言ってきても私がいるから。それにクラリスには頼もしいナイトが2人もいるじゃない」
「ナイト……?」
ひょっとして、セシルとフレッドのことを言っているのだろうか?
あの二人はそんな関係では無いのに。単に彼らは私を監視する為に側にいるだけ。
けれど、そんなことはエイダに説明できるはずも無い。
「ね、クラリス。今日は授業開始初日だし、クラスは違うけれども一緒に大学へ行きましょうよ」
エイダと必要以上に仲良くなってはいけないと思いつつ、それでも私はやはり彼女ともう一度親友になりたかった。
「ええ、そうね」
私は笑顔で返事をした。
そして……早速トラブルが起きてしまった――
「ふわ……」
寮の食堂で欠伸が出そうになるのを必死で堪えていると、隣で食事をしているエイダが尋ねてきた。
「どうしたの、クラリス。随分眠そうね?」
「え、ええ。少し寝不足で」
「そう言えば、昨夜何処かに出掛けたみたいだけど、それが寝不足の原因?」
エイダは必要以上のことを聞いてくることはない。それは今も昔も変わらない。私は彼女のそういうところが好きだった。
「そんなところね。夜の学園を歩いてみたかった」
曖昧な説明でごまかす。
学生寮は基本、門限が設けられていない。学生たちは全員寮の扉の鍵を渡されているので出入り自由なのだ。
ただし、異性の出入りは禁止されている。
昨夜は結局22時過ぎまで3人で話をしていたので、寝るのが0時を過ぎてしまっていたのだ。
「そうだったのね……はい、これあげる」
突然、エイダがフルーツの乗った皿を寄こしてきた。
「え? どうしたの?」
「フルーツを食べれば目も覚めるわよね?」
「い、いいわよ。だってエイダの分を貰うわけにはいかないわ」
「私ならいいのよ。 そんなにお腹もすいていないし。それに……フルーツ好きでしょう?」
確かに私はフルーツが大好きだった。でも、エイダの断定的な言い方が気になる。
まるで最初から私がフルーツ好きなことを知っているような口ぶりに聞こえてしまう。
まさか……?
「ありがと、それじゃお言葉に甘えて貰うわね?」
少しの疑問を抑えて、私はフルーツの皿を受け取った。
皿の上にはメロンとオレンジ、イチゴが乗っている。
「ええ、どうぞ」
早速、イチゴを口に入れ……つい笑みがこぼれてしまう。
「……」
何故かエイダは私をじっと見つめている。
「どうかしたの?」
「いいえ、美味しそうに食べていると思っただけよ」
その時。
強い視線を感じて顔を上げると、こちらを睨みつけている女子学生がいた。
その女子学生は、昨日私に文句を言ってきたブレンダだった。彼女は私と目が合うと、すぐに顔をそらせてしまった。
どうやら、彼女は私のことが相当気に入らないらしい。
これから4年間、あのような視線を向けられてしまうのだろうか……。
「どうかしたの? クラリス」
エイダが尋ねてきた。
「ううん、何でも無いわ」
否定したものの、エイダは気付いた様だ。
「あぁ……昨日の彼女ね。気にすること無いわ、あの人は中等部の頃からアンディ様のファンクラブに入っていたのよ」
「え? ファンクラブ?」
そんな話は初耳だ。確かに初等部の頃から人気はあったけれども、まさかファンクラブがあったなんて……。
「しかも、リーダーは彼女なのよ。何しろ自分でファンクラブを立ち上げた人だから」
「そうだったの……」
どうやら私は厄介な人物に目をつけられてしまったようだ。
「大丈夫よ、女子寮で何かクラリスに文句を言ってきても私がいるから。それにクラリスには頼もしいナイトが2人もいるじゃない」
「ナイト……?」
ひょっとして、セシルとフレッドのことを言っているのだろうか?
あの二人はそんな関係では無いのに。単に彼らは私を監視する為に側にいるだけ。
けれど、そんなことはエイダに説明できるはずも無い。
「ね、クラリス。今日は授業開始初日だし、クラスは違うけれども一緒に大学へ行きましょうよ」
エイダと必要以上に仲良くなってはいけないと思いつつ、それでも私はやはり彼女ともう一度親友になりたかった。
「ええ、そうね」
私は笑顔で返事をした。
そして……早速トラブルが起きてしまった――
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