転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います

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3章4 これが私の運命

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「監視って……それは、私が禁忌魔法を使ったからですか?」

「そうだよ」

先生が頷く。

「だ、だけど私は人助けの為に……無意識であの魔法を使ったのですよ? 別に罪を犯す為とかではなく……」

まさか、私は罪人として裁かれてしまうのだろうか? こんな目が覚めたばかりで
何処かに収監されてしまう……?

「君が人助けの為に禁忌魔法を使ったことは、良く分かっているよ。だが、それでもあの魔法を一度でも発動したことがあると、重要人物として魔術協会に監視されることになるんだよ。あの魔法は、本当に恐ろしいからね」

「そんな……」

父も母も沈痛な面持ちで私達の会話を聞いている。恐らく両親も今まで散々訴え続けてきたのであろう。

「何もそんなに悲観的に思うことはないよ。監視されるからと言っても、拘束されるわけでもずっと拘束されるわけでもない。今までと同じ暮らしをすればいい。そうだな……お目付け役と言った方がいいかもしれない。そんなに身構えることではないよ」

「お目付け役……ですか? でも先生は医者ですよね? なのに何故……」

「禁忌魔法を使った者の処遇について、詳しく知っているかと思っているのだろう?」

「はい……」

「ここは病院と言っても、特殊な病院なんだ。自分の魔力で身体に異変をきたしてしまった人々を治療、監視する病院なんだよ」

すると父が重々しく口を開いた。

「初めはリオンと同じ病院に運び込まれたのだよ。だがユニスは別人のような外見に変わってしまったし、一向に目が覚める気配がない。だからこの病院に転院させたのだ。それで何故、こんなことになってしまったのか……原因が判明したのだ」

「原因は分かっても、正確な治療法がまだ無くてね。こちらが出来ることと言えば、生命を維持させるための魔力が込められたドームの中で君が目覚めるのを待つしか無かったんだ。でも6年かかったとはいえ、目が覚めて本当に良かった。中には目覚めること無く亡くなっていく人もいるからね」

「そう……だったのですか?」

その言葉にゾクッとした。
それでは両親が年月以上に年をとってしまうのも無理はないだろう。私は本当に両親を心配させてしまったのだ。

「とにかく、君は6年間という歳月を眠ったまま過ごしてしまった。まずはこの病院でしっかり体力作りと勉強しながら、9月の大学入学に向けて頑張ろう」

え……? 大学?
先生の言葉に私は顔を上げた。

「先生、大学って言うのは?」

「そうだった、色々まだ説明不足だったね。ユニス。君は3ヶ月後には大学生になる」

「大学生に……」

まさか子供だった私が、眠っている間に前世の自分の年齢と然程変わらなくなっていたとは思いもしなかった。

「ユニス、君には初等部の頃から通っていた『ニルヴァーナ』学園の大学部に進学してもらうよ。この学園には、魔術協会の支部があるからね」

「……」

私は口を閉ざし、黙って先生の話を聞いていた。やはりゲームと同じ流れだ。
ヒロインは9月に『ニルヴァーナ』学園の大学に新入生として入学している。

すると先生は突然両親に声をかけた。

「すみません。ここから先はユニスさんにだけ話をしたいので、少し席を外して頂けませんか?」

その言葉に両親は少しの間、互いの顔を無言で見つめ合っていたが……。

「分かりました。先生の言う通りにします」
「ユニス、また後でね」

「はい」

私が返事をすると両親は部屋を出ていき、2人きりになると再び先生が話し始めた。

「さて。君が禁忌の魔法に手を染めて外見が変わってしまったということは、絶対に他の人たちには知られてはいけない。何故ならあの魔法は違法だからだ」

「も、もし……知られてしまったら……?」

「そうなると力を誰にも悪用させないためにも、君をどこかに隔離しなければならなくなる。だがそんな生活は嫌だろう?」

「分かりました。誰にも知られないように注意します」

「よし。素直に自分の今の状況を受け入れられるのだから、君はやはり賢いね。それでは早速だけど今日から新しい名前を名乗ってもらうことにするよ」

「新しい名前……」

「これから君は『クラリス・レナー』と名乗ってもらう。いいね?」

クラリス・レナー。
その名前は、まさしく『ニルヴァーナ』のヒロインの名前だ。

この世界に転生して、ヒロインの名前だけを思い出せなかったのは、私がまだ本来の自分に目覚めていなかったからなのかもしれない。

「……そういうことだったのね」

恐らく、これが私の運命。
思わずポツリとつぶやきが漏れてしまった。

「え? 何か言ったかい?」

「いいえ、何でもありません」

弱々しく笑みを浮かべた。

こうして6年ぶりに目覚めた私は、ユニス・ウェルナーを捨てて生きていくことになるのだった――
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