呪いをかけられた小国の姫は従者と共に旅に出る

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
19 / 24

2-4 労働に汗を流す姫 1

しおりを挟む
 朝食を食べ終えるとユリアナはレイリアを連れて敷地内にある物置へと向かい、戸を開けて中に入った。小屋の中には様々な農耕器具が置いてあるばかりか、野菜の種や肥料等も沢山用意されている。

「レイリア、まずはそこにあるスコップと鍬を持ってついていらっしゃい」

ユリアナは自身のスコップ、鍬を持つと指示した。

「う……お、重い……。ねえ、重くて持てないのだけど!」

レイリアは言われたスコップと鍬を持とうとしたが両方とも重すぎて、とても持てたものでは無かった。

「あら、そうなの? 困ったわねえ……。あ、それならいい方法があったわ」

ユリアナはレイリアのスコップと鍬を握りしめると、祈りを込める。すると2本とも一瞬眩い光を放った。

「何をしているの?」

するとユリアナは先ほどのスコップと鍬をレイリアに手渡した。

「さあ、持ってごらんなさい」

言われた通りにスコップと鍬を持ってみると驚く事に先程とは違い、軽くなっている。

「え! 何故こんなに軽くなったの!?」

「そのスコップと鍬に質量変換の魔力をかけたのよ。これなら貴女も持てるでしょう?」

「そうね……。と言うよりは魔法でこんなに便利な事が出来るなら、わざわざ畑なんか作る必要ないんじゃないの? 料理を出せる魔法だってあるはずでしょう?」

「いいえ、それでは鍛錬になりません」

「否定しなかったって事はあるのよね? 勿体ぶらないで教えなさいよ!」

(ああ……また私はおばあ様に酷い事を言ってる)

けれど、この口からついて出て来る言葉をレイリアは止める事が出来なかった。

「いいですか、レイリア。人間は苦労しなければ成長しません。何かを成し遂げるにはどんなに辛くてもそれをやり遂げなければならない事もあるのです。これは貴女の精神力を鍛える為に必要な事なのです」

あまりにも真剣な眼差しのユリアナを見て、レイリアは黙って頷くのだった。


その後、レイリアはユリアナに畑の耕し方を教えて貰いながら太陽が真上に上るまで一生懸命畑を耕し終えた。
ふと、レイリアはある事に気がついた。

「ねえ、季節はもう秋から冬になろうとしているのよ? 今更畑に植えて育つ種なんかあるの?」

「大丈夫よ、ここは外界から閉ざされた空間だと言ったでしょう? 魔力によって1年中快適な季節になっているのよ。だからどんな種を植えても必ず育ちます」

「ふーん、まさかそこまで便利になってるとはね~」

「では、まずジャガイモ・トマト・キャベツ・そして麦を植えましょうか?」

ユリアナはそれぞれ袋から種を取り出して蒔き始めた。
レイリアもそれに習って同じように蒔く。そして土をかぶせて畑の側にある井戸からポンプを引いて、ペダルを踏んで水を撒いた。

「この種は私が特別に魔力を注いで作った特殊な種です。1週間もすれば収穫出来ますよ」

「1週間!? それは確かに早過ぎるけど……。それまでの食糧はちゃんとあるのでしょうね?」

「ええ、大丈夫。氷室には野菜や小麦粉が備蓄されているから問題ありませんよ。それではレイリア、これから昼食を作りましょう」

「ええっ!? 疲れたから少し休ませてよ!」

「そんな事を言っていたら食事する事が出来なくなりますよ」

そう言われてしまえば、レイリアは大人しく従うしかなかった――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敗戦して嫁ぎましたが、存在を忘れ去られてしまったので自給自足で頑張ります!

桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。 ※※※※※※※※※※※※※ 魔族 vs 人間。 冷戦を経ながらくすぶり続けた長い戦いは、人間側の敗戦に近い状況で、ついに終止符が打たれた。 名ばかりの王族リュシェラは、和平の証として、魔王イヴァシグスに第7王妃として嫁ぐ事になる。だけど、嫁いだ夫には魔人の妻との間に、すでに皇子も皇女も何人も居るのだ。 人間のリュシェラが、ここで王妃として求められる事は何もない。和平とは名ばかりの、敗戦国の隷妃として、リュシェラはただ静かに命が潰えていくのを待つばかり……なんて、殊勝な性格でもなく、与えられた宮でのんびり自給自足の生活を楽しんでいく。 そんなリュシェラには、実は誰にも言えない秘密があった。 ※※※※※※※※※※※※※ 短編は難しいな…と痛感したので、慣れた文字数、文体で書いてみました。 お付き合い頂けたら嬉しいです!

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

処理中です...