5 / 24
1-2 闇からの侵略者
しおりを挟む
『マリネス王国』に到着したジークベルトたちは目の前の光景に息を飲んだ。
青い空に美しい海、漁業が盛んだったはずの国。
それが今や空は不気味な色で染まり、海はどす黒く悪臭を放っていた。
荒れ果てた街は濃い霧に覆われて、人々の姿は一切見られない。
「な……何なんだ? 一体何が起こったと言うのだ?」
白銀の鎧姿のジークベルトは恐ろしい光景を信じられない気持ちで見つめた。
他の兵士達もざわついている。
「ジークベルト、これはかなりまずい状況だぞ。やはり何者かが魔術を使い、この国を荒廃させたのではないか?」
ヨハネスがジークベルトの隣に馬を付け、周囲を見渡した。
「ああ……そうだな……」
ジークベルトは美しい顔に眉を顰めた。額には冷汗が流れている。
「とにかく、まずはあの城を目指そう」
ジークベルトは剣を抜き、山頂にそびえ立つ城を指した。特に城の周囲は禍々しい雲に覆われ、雷が鳴り響いている。
――その時。
「グルルル……」
恐ろしいうめき声が周囲から聞こえてきた。
ジークベルトとヨハネスは魔力を帯びた剣を構え、騎士達も剣を引き抜く。
――ジャリッ
砂を踏むような足音が徐々に近づいてくる。
(くっ……霧が濃すぎて敵の姿が見えない!)
焦るジークベルト。
出来れば魔力は温存しておきたかったが、敵の姿が見えなければ戦う事すら出来ない。
「我が剣に命じる! この霧を払え!」
ジークベルトは魔力を注ぎ込み、剣を薙ぎ払った。一気に周囲の霧は消える。
そして姿を現したのは……。
「グ、グール……」
「そんな…‥何故ここに!?」
騎士達の間でざわめきが起こった。それもそのはず。
グールは太古の昔に存在した悪鬼で人々の間で恐れられていたからだ。しかし伝承によれば魔導士たちによって滅ぼされたと言われていた。
そのグールが今、自分たちの目の前にいるのだ。
体長2mはあろうかと思われる緑色の身体は筋肉で覆われていた。瞳は白く濁り、大きく開けた口からは鋭い牙が覗いている。
武器は所持していなかったが爪は鋭く尖っていた。
「およそグールの数は約5~60体と言うところか……」
冷静さを保つジークベルト。
「ああ、そうだな。所でジーク。お前はアイツらの弱点を当然知ってるよな?」
ヨハネスはジークベルトの背後に立ち、剣を構えながら尋ねる。
「当然だ。聞くまでも無い」
そして兵士たちに叫んだ。
「皆の、よく聞け! 奴らの弱点は鉄だ! 鉄の剣に持ち替えろ! そして眉間を狙え!!」
「はい!!」
いずれも精鋭揃いの騎士たちは一斉に返事をすると鉄の剣に持ち替え、グールめがけて掛け声を上げて突進して行った。
ジークベルトは自らの剣に命じた。
「我が剣よ! この身に炎をまとえ!!」
途端にジークベルトの剣は炎に包まれる。
「行くぞ!!」
ジークベルトは剣を振りかざすとグールの群れに突っ込んで行き、次々と炎の剣で薙ぎ払い、グールを倒していった。
ヨハネスも魔剣でグールを着実に倒している。
やがて辺りは静まり返ると、全てのグールは倒されていた。
勿論一人の犠牲者も出さずに。
ジークベルトは倒したグールを真っ青な顔で見つめている。
そこへヨハネスがかけより、ジークベルトの肩を叩いた。
「やったな、ジーク。全て倒し……え!?」
倒れていたのはこの国の兵士達だった。彼らは皆ジークベルト達の手によって絶命していたのだ。
「ま、まさか……」
ヨハネスの顔が青ざめる。
「……どうやら私達が戦っていた相手は『マリネス王国』の兵士達だったみたいだ」
ジークベルトは唇を噛み締めた。
「まさか……魔術を使って……?」
――その時。
「レ・レイリア様!?」
護衛のミハエルが驚きの声をあげる。
「何だって!?」
ジークベルトは驚いて振り向くと、そこには震えるレイリアの姿があった――
青い空に美しい海、漁業が盛んだったはずの国。
それが今や空は不気味な色で染まり、海はどす黒く悪臭を放っていた。
荒れ果てた街は濃い霧に覆われて、人々の姿は一切見られない。
「な……何なんだ? 一体何が起こったと言うのだ?」
白銀の鎧姿のジークベルトは恐ろしい光景を信じられない気持ちで見つめた。
他の兵士達もざわついている。
「ジークベルト、これはかなりまずい状況だぞ。やはり何者かが魔術を使い、この国を荒廃させたのではないか?」
ヨハネスがジークベルトの隣に馬を付け、周囲を見渡した。
「ああ……そうだな……」
ジークベルトは美しい顔に眉を顰めた。額には冷汗が流れている。
「とにかく、まずはあの城を目指そう」
ジークベルトは剣を抜き、山頂にそびえ立つ城を指した。特に城の周囲は禍々しい雲に覆われ、雷が鳴り響いている。
――その時。
「グルルル……」
恐ろしいうめき声が周囲から聞こえてきた。
ジークベルトとヨハネスは魔力を帯びた剣を構え、騎士達も剣を引き抜く。
――ジャリッ
砂を踏むような足音が徐々に近づいてくる。
(くっ……霧が濃すぎて敵の姿が見えない!)
焦るジークベルト。
出来れば魔力は温存しておきたかったが、敵の姿が見えなければ戦う事すら出来ない。
「我が剣に命じる! この霧を払え!」
ジークベルトは魔力を注ぎ込み、剣を薙ぎ払った。一気に周囲の霧は消える。
そして姿を現したのは……。
「グ、グール……」
「そんな…‥何故ここに!?」
騎士達の間でざわめきが起こった。それもそのはず。
グールは太古の昔に存在した悪鬼で人々の間で恐れられていたからだ。しかし伝承によれば魔導士たちによって滅ぼされたと言われていた。
そのグールが今、自分たちの目の前にいるのだ。
体長2mはあろうかと思われる緑色の身体は筋肉で覆われていた。瞳は白く濁り、大きく開けた口からは鋭い牙が覗いている。
武器は所持していなかったが爪は鋭く尖っていた。
「およそグールの数は約5~60体と言うところか……」
冷静さを保つジークベルト。
「ああ、そうだな。所でジーク。お前はアイツらの弱点を当然知ってるよな?」
ヨハネスはジークベルトの背後に立ち、剣を構えながら尋ねる。
「当然だ。聞くまでも無い」
そして兵士たちに叫んだ。
「皆の、よく聞け! 奴らの弱点は鉄だ! 鉄の剣に持ち替えろ! そして眉間を狙え!!」
「はい!!」
いずれも精鋭揃いの騎士たちは一斉に返事をすると鉄の剣に持ち替え、グールめがけて掛け声を上げて突進して行った。
ジークベルトは自らの剣に命じた。
「我が剣よ! この身に炎をまとえ!!」
途端にジークベルトの剣は炎に包まれる。
「行くぞ!!」
ジークベルトは剣を振りかざすとグールの群れに突っ込んで行き、次々と炎の剣で薙ぎ払い、グールを倒していった。
ヨハネスも魔剣でグールを着実に倒している。
やがて辺りは静まり返ると、全てのグールは倒されていた。
勿論一人の犠牲者も出さずに。
ジークベルトは倒したグールを真っ青な顔で見つめている。
そこへヨハネスがかけより、ジークベルトの肩を叩いた。
「やったな、ジーク。全て倒し……え!?」
倒れていたのはこの国の兵士達だった。彼らは皆ジークベルト達の手によって絶命していたのだ。
「ま、まさか……」
ヨハネスの顔が青ざめる。
「……どうやら私達が戦っていた相手は『マリネス王国』の兵士達だったみたいだ」
ジークベルトは唇を噛み締めた。
「まさか……魔術を使って……?」
――その時。
「レ・レイリア様!?」
護衛のミハエルが驚きの声をあげる。
「何だって!?」
ジークベルトは驚いて振り向くと、そこには震えるレイリアの姿があった――
13
お気に入りに追加
131
あなたにおすすめの小説
敗戦して嫁ぎましたが、存在を忘れ去られてしまったので自給自足で頑張ります!
桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。
※※※※※※※※※※※※※
魔族 vs 人間。
冷戦を経ながらくすぶり続けた長い戦いは、人間側の敗戦に近い状況で、ついに終止符が打たれた。
名ばかりの王族リュシェラは、和平の証として、魔王イヴァシグスに第7王妃として嫁ぐ事になる。だけど、嫁いだ夫には魔人の妻との間に、すでに皇子も皇女も何人も居るのだ。
人間のリュシェラが、ここで王妃として求められる事は何もない。和平とは名ばかりの、敗戦国の隷妃として、リュシェラはただ静かに命が潰えていくのを待つばかり……なんて、殊勝な性格でもなく、与えられた宮でのんびり自給自足の生活を楽しんでいく。
そんなリュシェラには、実は誰にも言えない秘密があった。
※※※※※※※※※※※※※
短編は難しいな…と痛感したので、慣れた文字数、文体で書いてみました。
お付き合い頂けたら嬉しいです!

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました
toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。
残酷シーンが多く含まれます。
誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。
両親に
「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」
と宣言した彼女は有言実行をするのだった。
一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。
4/5 21時完結予定。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる