余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@コミカライズ連載中

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ケリーの章 ㉑ 待ちわびていたプロポーズ

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 翌朝6時―

 結局昨夜はヨハン先生とは一度も顔を合わすこと無く朝を迎えてしまった。

「朝食の準備をしないと…」

ノロノロと起き上がったものの、頭が重くて身体もだるい。それに何だか少し寒気もする。本当は体を休めたかったけれどもヨハン先生に迷惑を掛けることは出来ないから―。


****

 厨房で私はヨハン先生と自分の分、二人分の朝食の準備をしていた。刻んだ野菜を鍋で煮込んだ野菜スープ。フライパンで卵とベーコンを焼いたベーコンエッグ。そして昨日パン屋さんで買ってきたテーブルパンに手作りのいちごジャムを添えて…。

「おはよう、ケリー」

テーブルに出来上がった料理を並べていところにヨハン先生が降りてきた。

ヨハン先生っ!

昨夜の事を思い出し、ドキリとしたけれどもヨハン先生はいつもと変わらぬ様子で私に笑顔を向けてくれる。

「ああ、今朝の朝食も美味しそうだね。いつもありがとう、ケリー。本当に君には感謝しているよ」

「は、はい…」

だけど、その言葉の端々にどこかいつもと違う雰囲気を感じるのは…私の気の所為だろうか…?

「それじゃ、食事にしようか?」

「はい、そうですね」

2人で向かい合わせに座った時、ヨハン先生が私の顔を何故かじっと見つめて来る。それが気恥ずかしくて、私は先生に声を掛けた。

「あ、あの…先生…?」

するとヨハン先生が眉をしかめると言った。

「ケリー。ひょっとすると…どこか具合が悪いんじゃないのかい?」

「え…?」

どうして分かったのだろう。なるべく自然に振る舞っていたつもりなのに…。

「いえ、そんな事はありません。大丈夫ですから」

けれどヨハン先生は無言で席を立つと、ポケットから体温計を出してきた。

「ケリー。熱を測ってご覧」

「…はい…」

体温計を受け取るとキャップを開けて中身を取り出し、体温計を口に咥えた―。


「華氏100.4(38℃)…」

ヨハン先生の表情が険しくなる。

「ケリー。君はこんなに熱が高いのに、いつも通り起きて朝食の準備をしたのかい?」

「はい。それが私の仕事ですから…」

俯いて答える。だって…ヨハン先生のお役に立てなければ私がここに置かせてもらえる意味がないから。

「ケリー。朝食を食べたらすぐに部屋へ行って休むんだ。片付けも僕がしておくから。今日は1日ゆっくり寝ているんだよ?」

「え?ですが先生はお仕事が…。それに診療所のお手伝いも…」

「その事なら大丈夫。診療所の手伝いならジョアンさんに頼むから。それに今日は予約の患者さんも少ないし、それほど混まないはずだよ。ケリーは何も心配することは無いよ」

ジョアンさんは診療所の3件お隣に住んでいる主婦で、診療所が忙しい時は臨時でお手伝いに来てくれる女性だ。
でも…そうか。私がいなくても…ヨハン先生は何も困ることはないんだ…。思わずうなだれると、ヨハン先生が心配そうに声を掛けてきた。

「どうしたんだい?ケリー。もしかして具合が悪化したんじゃないのかい?後で漢方薬を処方するから、今日はゆっくり休むんだよ」

「はい…ありがとうございます」

私は小さな声で返事をした。

けれど…不謹慎かも知れないけれど、思いもかけず体調を崩したことで昨夜の事を尋ねられなくて良かった…。

私はほんの少しだけホッとした―。







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