17 / 124
ケリーの章 ⑰ 待ちわびていたプロポーズ
しおりを挟む
3人でローラさんの手作りのお弁当を頂いた。ジャムや生クリーム、ハムやレタスなどの様々な具材の入った可愛らしいロールサンド、スコーンにチキンサラダ、そしてデザートにプディング…。
「とっても美味しかったです、ローラさん」
すっかり御馳走になった私は笑顔で言った。
「フフ…良かったわ。料理上手なケリーに褒められるなんて」
ローラさんが食後の紅茶を飲みながら笑顔で私を見た。
「そ、そんな。私なんてまだまだです…」
「何言ってるの?オリバーに聞いたけど、ヨハン先生が言ってたそうよ?ケリーは仕事だけじゃなく、家事も得意だって。特にお料理の腕前は素晴らしいって褒めていたそうよ?」
「え…?ヨハン先生が…?」
するとローラさんはチラリと中庭の方を見た。そこにはヨハン先生の手作りのブランコに乗って遊んでいるアメリアの姿がある。
「アメリアも今ブランコで遊んでいるし…ケリー。そろそろ何があったのか、教えてくれるかしら?
「は、はい…」
私はテーブルの上で手をギュッと組むと言った。
「実は…私、ほんの数日前…ヨハン先生の紹介でマリー・ブラウン夫人と、そのご子息のトマスさんと言う方とレストランでお会いしたのです」
「え…?もしかして、ブラウンって…『リンデン』の富豪の商家の事?」
マリーさんが意外そうな顔を見せた。
「はい、そのブラウンさんです」
「そう言えば、オリバーが言っていたわ。今ブラウン家では跡取り息子のお嫁さんになる女性を探しているって…そこで若い独身女性達が騒いでいたそうよ。だけど最近になって候補の女性が決まったらしいのだけど…」
ローラさんの話に私は血の気が引いた。まさか、私がその候補者…?
「大丈夫?!ケリー。顔色が真っ青よ?しっかりして!」
ローラさんが声を掛けて来た。
「あ、あの…実は、私昨晩トマスさんに誘われて2人で一緒に食事をしているんです。でも、まさか候補者が私って事は無いですよね?私は小学校を途中で辞めているくらい、貧しい家柄の出身なんです。学だって無いのに…。それにこの町には私なんかよりもずっと素敵な女性達が沢山います。だからこんな私が…選ばれるはずが…」
段々声が小さくなっていく。そんな私をローラさんはじっと見つめていたが、やがて口を開くと言った。
「ケリー。貴女は何も知らなかったかもしれないけれど…ここ『リンデン』では貴女は評判の娘だったのよ?気立てが良くて明るくて…笑顔が素敵な女性って言う事で」
「え?そ、そんなはずは…」
「実はね、オリバーから聞いたのだけど、今まで幾つもヨハン先生のところにケリーの縁談の申し込みが来ていたらしいのよ。だけど、それら全てをヨハン先生が断っていたんですって。だから余程ケリーを手放したくないんだろうなって話していたけど…本当はそうじゃ無かったのかしらね…」
私にお見合い話が過去にも持ち込まれていたことを知ったのも初めてだし、その話をヨハン先生がお断りしていたのも初耳だった。けれど、それ以上に私が気になるのはローラさんの話しだった。
「あの…本当はそうじゃ無かった…って一体どういう意味でしょうか?」
「ええ。ヨハン先生は…ひょっとすると待っていたのかもしれないわ。より条件のいいお見合いの話が来るのを…」
「そ、そんな…」
けれど、脳裏にヨハン先生の言葉が蘇る。
< ブラウン商会はここ『リンデン』の町の富豪だから、生活に苦労することは無いと思うよ >
ヨハン先生が私にそう告げた事を―。
「とっても美味しかったです、ローラさん」
すっかり御馳走になった私は笑顔で言った。
「フフ…良かったわ。料理上手なケリーに褒められるなんて」
ローラさんが食後の紅茶を飲みながら笑顔で私を見た。
「そ、そんな。私なんてまだまだです…」
「何言ってるの?オリバーに聞いたけど、ヨハン先生が言ってたそうよ?ケリーは仕事だけじゃなく、家事も得意だって。特にお料理の腕前は素晴らしいって褒めていたそうよ?」
「え…?ヨハン先生が…?」
するとローラさんはチラリと中庭の方を見た。そこにはヨハン先生の手作りのブランコに乗って遊んでいるアメリアの姿がある。
「アメリアも今ブランコで遊んでいるし…ケリー。そろそろ何があったのか、教えてくれるかしら?
「は、はい…」
私はテーブルの上で手をギュッと組むと言った。
「実は…私、ほんの数日前…ヨハン先生の紹介でマリー・ブラウン夫人と、そのご子息のトマスさんと言う方とレストランでお会いしたのです」
「え…?もしかして、ブラウンって…『リンデン』の富豪の商家の事?」
マリーさんが意外そうな顔を見せた。
「はい、そのブラウンさんです」
「そう言えば、オリバーが言っていたわ。今ブラウン家では跡取り息子のお嫁さんになる女性を探しているって…そこで若い独身女性達が騒いでいたそうよ。だけど最近になって候補の女性が決まったらしいのだけど…」
ローラさんの話に私は血の気が引いた。まさか、私がその候補者…?
「大丈夫?!ケリー。顔色が真っ青よ?しっかりして!」
ローラさんが声を掛けて来た。
「あ、あの…実は、私昨晩トマスさんに誘われて2人で一緒に食事をしているんです。でも、まさか候補者が私って事は無いですよね?私は小学校を途中で辞めているくらい、貧しい家柄の出身なんです。学だって無いのに…。それにこの町には私なんかよりもずっと素敵な女性達が沢山います。だからこんな私が…選ばれるはずが…」
段々声が小さくなっていく。そんな私をローラさんはじっと見つめていたが、やがて口を開くと言った。
「ケリー。貴女は何も知らなかったかもしれないけれど…ここ『リンデン』では貴女は評判の娘だったのよ?気立てが良くて明るくて…笑顔が素敵な女性って言う事で」
「え?そ、そんなはずは…」
「実はね、オリバーから聞いたのだけど、今まで幾つもヨハン先生のところにケリーの縁談の申し込みが来ていたらしいのよ。だけど、それら全てをヨハン先生が断っていたんですって。だから余程ケリーを手放したくないんだろうなって話していたけど…本当はそうじゃ無かったのかしらね…」
私にお見合い話が過去にも持ち込まれていたことを知ったのも初めてだし、その話をヨハン先生がお断りしていたのも初耳だった。けれど、それ以上に私が気になるのはローラさんの話しだった。
「あの…本当はそうじゃ無かった…って一体どういう意味でしょうか?」
「ええ。ヨハン先生は…ひょっとすると待っていたのかもしれないわ。より条件のいいお見合いの話が来るのを…」
「そ、そんな…」
けれど、脳裏にヨハン先生の言葉が蘇る。
< ブラウン商会はここ『リンデン』の町の富豪だから、生活に苦労することは無いと思うよ >
ヨハン先生が私にそう告げた事を―。
0
お気に入りに追加
915
あなたにおすすめの小説
魔王と囚われた王妃 ~断末魔の声が、わたしの心を狂わせる~
長月京子
恋愛
絶世の美貌を謳われた王妃レイアの記憶に残っているのは、愛しい王の最期の声だけ。
凄惨な過去の衝撃から、ほとんどの記憶を失ったまま、レイアは魔界の城に囚われている。
人界を滅ぼした魔王ディオン。
逃亡を試みたレイアの前で、ディオンは共にあった侍女のノルンをためらいもなく切り捨てる。
「――おまえが、私を恐れるのか? ルシア」
恐れるレイアを、魔王はなぜかルシアと呼んだ。
彼と共に過ごすうちに、彼女はわからなくなる。
自分はルシアなのか。一体誰を愛し夢を語っていたのか。
失われ、蝕まれていく想い。
やがてルシアは、魔王ディオンの真実に辿り着く。
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む
浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。
「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」
一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。
傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語
【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
【完結】記憶が戻ったら〜孤独な妻は英雄夫の変わらぬ溺愛に溶かされる〜
凛蓮月
恋愛
【完全完結しました。ご愛読頂きありがとうございます!】
公爵令嬢カトリーナ・オールディスは、王太子デーヴィドの婚約者であった。
だが、カトリーナを良く思っていなかったデーヴィドは真実の愛を見つけたと言って婚約破棄した上、カトリーナが最も嫌う醜悪伯爵──ディートリヒ・ランゲの元へ嫁げと命令した。
ディートリヒは『救国の英雄』として知られる王国騎士団副団長。だが、顔には数年前の戦で負った大きな傷があった為社交界では『醜悪伯爵』と侮蔑されていた。
嫌がったカトリーナは逃げる途中階段で足を踏み外し転げ落ちる。
──目覚めたカトリーナは、一切の記憶を失っていた。
王太子命令による望まぬ婚姻ではあったが仲良くするカトリーナとディートリヒ。
カトリーナに想いを寄せていた彼にとってこの婚姻は一生に一度の奇跡だったのだ。
(記憶を取り戻したい)
(どうかこのままで……)
だが、それも長くは続かず──。
【HOTランキング1位頂きました。ありがとうございます!】
※このお話は、以前投稿したものを大幅に加筆修正したものです。
※中編版、短編版はpixivに移動させています。
※小説家になろう、ベリーズカフェでも掲載しています。
※ 魔法等は出てきませんが、作者独自の異世界のお話です。現実世界とは異なります。(異世界語を翻訳しているような感覚です)
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる