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第6話 氷の貴公子のプライド 2
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その日を境に、ロイはこっそり仕事場へ行きアリアドネを観察するのが日課になっていた。誰にも気づかれないように遠目からじっと見つめる。
大好きだった姉の姿に生き写しのアリアドネを見ているだけでロイは微かな幸せを感じていた。
そしてそんな矢先、ロイに転機が訪れた――
****
「え……? 監視ですか?」
ロイがオズワルドの執務室に呼び出されて告げられたのはエルウィンの監視だった。
「そうだ、最近エルウィンにお気に入りの人物が出来たのだ。名前はアリアドネ・ステニウス。奴は気付いていないようだが、エルウィンに嫁ぐ為にこの城へやってきた女だ。今はリアと名乗っている」
「リア……」
ロイのつぶやきにオズワルドは口角を上げた。
「心当たりがあるだろう? 金色の髪の女性だ。……何となくお前の姉に似ているな」
「!」
その言葉にロイは反応する。するとますますオズワルドは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「お前が最近用もないのに足繁く仕事場へ通っているのは知っている。中に入るわけでもなく、外からアリアドネの様子を伺っていただろう?」
「……そうです」
「あの女にミカエルとウリエルの専属侍女を任せようと思っている。実はつい先日、二人の侍女のゾーイがエルウィンの寝室に忍び込んで奴の逆鱗に触れて侍女の座を解任させられたのだ」
「……」
ロイは黙って話を聞いている。
「アリアドネの母親はステニウス伯爵家で働いていた下女だったが、父親は伯爵家の者だ。一応貴族の血は引いてるし、ミカエルとウリエルの侍女を任せるには適任だろう」
「何故、俺にその話をするのです?」
「それはな……エルウィンを監視するために、ミカエルとウリエルの専属護衛騎士にお前を任命しようと思っているからだ。もちろん、アリアドネが二人の侍女を引き受ければ、彼女も護衛の対象になる」
「!」
ピクリとロイの身体が反応する。
「エルウィンがアリアドネを気にかけているのは分かっている。彼女がミカエルたちの侍女になれば、奴も足繁く三人の元へ通うだろう。そこでお前が専属護衛騎士として、つけば監視しやすくなるだろう?」
「何故……エルウィンの監視をするのですか?」
ロイの言葉にオズワルドが肩をすくめる。
「そんなのは決まっているだろう? 奴の弱点を利用し……反乱を起こすのだ。あの様に血の気の多い若者にこの『アイゼンシュタット』城の城主が務まるはずもない。もっとふさわしい者が目の前にいると思わないか?」
「……そうですね。俺もそう思います」
無表情で頷くロイにオズワルドは満足そうに頷く。
「お前ならそう答えると思った。どうだ? 姉の面影を良く映したアリアドネの側にいられるのかもしれないのだぞ?」
「俺にどうしろというのですか?」
「今すぐ仕事場へ行き、アリアドネをここへ連れてくるのだ。私があの女にミカエルとウリエルの専属侍女になるように命じる」
「もし断られたら……どうするのです?」
「なに、案ずることはない。あの女は私の言うことを聞くだろう。必ずな……」
ロイの質問にオズワルドは不気味な笑みを浮かべるのだった――
大好きだった姉の姿に生き写しのアリアドネを見ているだけでロイは微かな幸せを感じていた。
そしてそんな矢先、ロイに転機が訪れた――
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「え……? 監視ですか?」
ロイがオズワルドの執務室に呼び出されて告げられたのはエルウィンの監視だった。
「そうだ、最近エルウィンにお気に入りの人物が出来たのだ。名前はアリアドネ・ステニウス。奴は気付いていないようだが、エルウィンに嫁ぐ為にこの城へやってきた女だ。今はリアと名乗っている」
「リア……」
ロイのつぶやきにオズワルドは口角を上げた。
「心当たりがあるだろう? 金色の髪の女性だ。……何となくお前の姉に似ているな」
「!」
その言葉にロイは反応する。するとますますオズワルドは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「お前が最近用もないのに足繁く仕事場へ通っているのは知っている。中に入るわけでもなく、外からアリアドネの様子を伺っていただろう?」
「……そうです」
「あの女にミカエルとウリエルの専属侍女を任せようと思っている。実はつい先日、二人の侍女のゾーイがエルウィンの寝室に忍び込んで奴の逆鱗に触れて侍女の座を解任させられたのだ」
「……」
ロイは黙って話を聞いている。
「アリアドネの母親はステニウス伯爵家で働いていた下女だったが、父親は伯爵家の者だ。一応貴族の血は引いてるし、ミカエルとウリエルの侍女を任せるには適任だろう」
「何故、俺にその話をするのです?」
「それはな……エルウィンを監視するために、ミカエルとウリエルの専属護衛騎士にお前を任命しようと思っているからだ。もちろん、アリアドネが二人の侍女を引き受ければ、彼女も護衛の対象になる」
「!」
ピクリとロイの身体が反応する。
「エルウィンがアリアドネを気にかけているのは分かっている。彼女がミカエルたちの侍女になれば、奴も足繁く三人の元へ通うだろう。そこでお前が専属護衛騎士として、つけば監視しやすくなるだろう?」
「何故……エルウィンの監視をするのですか?」
ロイの言葉にオズワルドが肩をすくめる。
「そんなのは決まっているだろう? 奴の弱点を利用し……反乱を起こすのだ。あの様に血の気の多い若者にこの『アイゼンシュタット』城の城主が務まるはずもない。もっとふさわしい者が目の前にいると思わないか?」
「……そうですね。俺もそう思います」
無表情で頷くロイにオズワルドは満足そうに頷く。
「お前ならそう答えると思った。どうだ? 姉の面影を良く映したアリアドネの側にいられるのかもしれないのだぞ?」
「俺にどうしろというのですか?」
「今すぐ仕事場へ行き、アリアドネをここへ連れてくるのだ。私があの女にミカエルとウリエルの専属侍女になるように命じる」
「もし断られたら……どうするのです?」
「なに、案ずることはない。あの女は私の言うことを聞くだろう。必ずな……」
ロイの質問にオズワルドは不気味な笑みを浮かべるのだった――
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