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第1幕 『星の銀貨』のヒロインの場合 ⑥
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ルナが去った後、1人の若者がこの教会を訪れた。
「すみません。少しお伺いしたい事が・・っ!」
若者は教会から出て来た神父を見て驚いた。顔には青あざが出来、腕や足には包帯を巻いている。その姿があまりにも痛々しかった。
「神父様っ!一体・・この御怪我はどうされたのですかっ?!」
すると神父は泣き崩れた。
「わ・・・私は・・・可哀そうな娘を・・救ってやれませんでした・・・。」
「落ち着いて下さい、神父様。お話をお聞かせ願えませんか?」
若者と神父は礼拝堂の椅子に座ると、神父がポツリポツリと語り始めた。
この村にはとても信仰深い娘が住んでいたと言う事。娘の名前はルナ。とても貧しく、父親を早くに亡くして、母と2人暮らしをしていたが、その母も重い病にかかり亡くなってしまった事。借金の為に家を取られただけでなく、今は借金取りに追われている可哀そうなルナの事を涙ながらに語った。
「あの娘は本当に気立ても優しく、毎日欠かさず教会へお祈りに来ていました。貧しさでみすぼらしいなりをしていました。気の毒に・・身なりさえ整えば、あれ程美しい少女はいないと言うのに・・。父親は・・友人に騙されて借金を作ってしまったのです。あの娘は父親の借金返済の為に毎日遅くまで働いていたのです・・・。本当に哀れでなりません。何でも掴まれば娼館へ売られてしまうそうで・・。」
「神父様・・・もしやそのお怪我は・・?」
若者の問いに神父は答えた。
「はい・・・借金取りがルナを探しにやってきて・・・彼女の居場所を言うように脅迫されましたが、私は決して口を割りませんでした。この怪我は・・・それの代償です・・・。」
(な・・・なんて怖ろしい話なのだ・・・。ですが・・・神父様が自分の命の危険を犯してまでその娘を救おうとしていたとは・・・。ひょっとすると彼女こそ陛下の求めている女性なのでは無いだろうか・・・?)
そう、この若者こそ国王に信仰深い独身女性を探すように言いつけられたアーサーであった。
「神父様・・・そのルナと言う女性は・・・一体どちらへ向かったかお分かりになりますか?」
「も・・申し訳ございません・・・そこまでは・・・。しかし、ルナは信仰心の厚い娘です。毎日のお祈りは欠かしたことが無いほどの・・・なのでひょっとするとルナは次の教会を目指したかもしれません。」
神父の言葉にアーサーは感謝を述べた。
「神父様・・・教えていただき、ありがとうございます。少ないです金額ではありますが・・この教会に寄付をさせて下さい。」
アーサーは1枚の金貨を神父に手渡した。
「そ、そんな・・・こんな大層な金額・・受け取れませんっ!」
驚く神父にアーサーは言った。
「いいえ。これは我が主君からの命なのです。どうぞお受け取り下さい。私はこれからそのルナといいう少女のを後を追います。」
そして一礼するとアーサーは教会を後にした―。
「すみません。少しお伺いしたい事が・・っ!」
若者は教会から出て来た神父を見て驚いた。顔には青あざが出来、腕や足には包帯を巻いている。その姿があまりにも痛々しかった。
「神父様っ!一体・・この御怪我はどうされたのですかっ?!」
すると神父は泣き崩れた。
「わ・・・私は・・・可哀そうな娘を・・救ってやれませんでした・・・。」
「落ち着いて下さい、神父様。お話をお聞かせ願えませんか?」
若者と神父は礼拝堂の椅子に座ると、神父がポツリポツリと語り始めた。
この村にはとても信仰深い娘が住んでいたと言う事。娘の名前はルナ。とても貧しく、父親を早くに亡くして、母と2人暮らしをしていたが、その母も重い病にかかり亡くなってしまった事。借金の為に家を取られただけでなく、今は借金取りに追われている可哀そうなルナの事を涙ながらに語った。
「あの娘は本当に気立ても優しく、毎日欠かさず教会へお祈りに来ていました。貧しさでみすぼらしいなりをしていました。気の毒に・・身なりさえ整えば、あれ程美しい少女はいないと言うのに・・。父親は・・友人に騙されて借金を作ってしまったのです。あの娘は父親の借金返済の為に毎日遅くまで働いていたのです・・・。本当に哀れでなりません。何でも掴まれば娼館へ売られてしまうそうで・・。」
「神父様・・・もしやそのお怪我は・・?」
若者の問いに神父は答えた。
「はい・・・借金取りがルナを探しにやってきて・・・彼女の居場所を言うように脅迫されましたが、私は決して口を割りませんでした。この怪我は・・・それの代償です・・・。」
(な・・・なんて怖ろしい話なのだ・・・。ですが・・・神父様が自分の命の危険を犯してまでその娘を救おうとしていたとは・・・。ひょっとすると彼女こそ陛下の求めている女性なのでは無いだろうか・・・?)
そう、この若者こそ国王に信仰深い独身女性を探すように言いつけられたアーサーであった。
「神父様・・・そのルナと言う女性は・・・一体どちらへ向かったかお分かりになりますか?」
「も・・申し訳ございません・・・そこまでは・・・。しかし、ルナは信仰心の厚い娘です。毎日のお祈りは欠かしたことが無いほどの・・・なのでひょっとするとルナは次の教会を目指したかもしれません。」
神父の言葉にアーサーは感謝を述べた。
「神父様・・・教えていただき、ありがとうございます。少ないです金額ではありますが・・この教会に寄付をさせて下さい。」
アーサーは1枚の金貨を神父に手渡した。
「そ、そんな・・・こんな大層な金額・・受け取れませんっ!」
驚く神父にアーサーは言った。
「いいえ。これは我が主君からの命なのです。どうぞお受け取り下さい。私はこれからそのルナといいう少女のを後を追います。」
そして一礼するとアーサーは教会を後にした―。
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