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第1幕 『星の銀貨』のヒロインの場合 ③
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「え・・・?陛下・・・?今何と仰られたのですか・・?」
若き国王の重鎮な家臣であるアーサーは言った。
「ああ、昨日私は神の声を聞いたのだ。この国を救うには、わが国で一番信仰深く、心の優しい女性を伴侶として迎える事だと・・・。だから私はその女性をこれから探そうと思っている。」
「しかし・・探すとは・・どの様にして探すのですか・・?」
アーサーの質問に国王は少し考えると言った。
「そうだな・・・まずは教会を当たってみよう。神父ならば教会に足繁く通う女性に心当たりがあるだろうからな。そこでアーサー。お前に頼みがある。どうかこの国の教会を全て当たって、信仰深い独身女性を探して来てくれないか?私は立場上どうしてもここを離れるわけにはいかないのだ。重鎮な家臣で・・・親友でもあるお前にしか頼めないのだ。」
国王は頭を下げた。
「・・・陛下。分かりました・・・顔を上げて下さい。どれだけ日数がかかるか分かりませんが・・・必ず、陛下のお目にかなう女性を探してまいります。」
「ああ・・・頼む・・・!」
そしてアーサーは信仰深い女性を探す旅に出た―。
一方、母を亡くして一人ぼっちになってしまったルナは借金返済の為に毎日朝から晩まで必死になって働いていたが、その生活も限界が近づいてきていた。
ルナの母親が亡くなり、季節は12月になっていた。
ますます寒さは厳しくなり、ルナは隙間風の入る寒い家の中で寒さに震えながら毎日くたくたになるまで働いていたのだが、一向に借金を返せる目途はたたなかった。
そんなある日・・・とうとう借金取りがルナの家にやって来たのだ。借金取りは亡き父の友人であった。
「ルナ。今までお前は俺の友人の娘だからと借金の返済を待っていてやったが、それももう限界だ。俺にだって生活がかかっているのだ。だから悪いが・・・明日の夜までにここを出て行ってくれ。」
「ええっ!そ、そんな・・・おじさん!ここを出て行ったら・・・私、住む場所を失ってしまうわっ!お願いですからどうか追い出さないでくださいっ!」
ルナは涙を浮かべて訴えた。
「駄目だっ!そんなにお金が欲しいなら・・・そうだ・・ルナ。お前は若くて磨けばきっと美しくなるから町へ行って娼館にでも行ったらどうだ?きっと雇ってくれるさ。そして男性客に気に入られればあわよくば、パトロンにでもしてくれるかもしれないぞ?」
「そ・・そんな・・・。」
ルナは青ざめた。
「まあ・・・経験が無ければ最初は怖いかもしれないしな・・・。よし、分かった。それなら俺がお前の初めての男になってやろうか?」
「!」
ルナが身構えた途端、借金取りはルナに掴みかかり床に押し倒してきた。
そしていやらしい手つきでルナの胸元をまさぐって来たとこで、ルナは恐怖のあまり悲鳴を上げると、近所に住む女性が何事かと飛び込んできた。
「ルナちゃん!どうしたんだいっ?!」
するとルナが借金取りの男に組み伏せられている姿が目に入った。
「あんた・・・っ!ルナちゃんに何するんだいっ!」
女は手近にあったほうきを掴むと男の頭を殴りつけた。
「ヒエエエエッ!」
借金取りは慌ててルナから離れると言った。
「い、いいか・・・。絶対明日の夜には出て行って貰うからなっ!」
「やかましいっ!さっさと姿を消しなっ!」
女性の迫力に押されて借金取りは逃げるように家から去って行った。
「大丈夫だったかい・・・?ルナちゃん・・・。」
「あ、ありがとうございます・・・。」
(ああ・・・とうとう・・・私は住む家も失ってしまうのね・・・。)
ルナは身体を震わせながら返事をするのだった―。
若き国王の重鎮な家臣であるアーサーは言った。
「ああ、昨日私は神の声を聞いたのだ。この国を救うには、わが国で一番信仰深く、心の優しい女性を伴侶として迎える事だと・・・。だから私はその女性をこれから探そうと思っている。」
「しかし・・探すとは・・どの様にして探すのですか・・?」
アーサーの質問に国王は少し考えると言った。
「そうだな・・・まずは教会を当たってみよう。神父ならば教会に足繁く通う女性に心当たりがあるだろうからな。そこでアーサー。お前に頼みがある。どうかこの国の教会を全て当たって、信仰深い独身女性を探して来てくれないか?私は立場上どうしてもここを離れるわけにはいかないのだ。重鎮な家臣で・・・親友でもあるお前にしか頼めないのだ。」
国王は頭を下げた。
「・・・陛下。分かりました・・・顔を上げて下さい。どれだけ日数がかかるか分かりませんが・・・必ず、陛下のお目にかなう女性を探してまいります。」
「ああ・・・頼む・・・!」
そしてアーサーは信仰深い女性を探す旅に出た―。
一方、母を亡くして一人ぼっちになってしまったルナは借金返済の為に毎日朝から晩まで必死になって働いていたが、その生活も限界が近づいてきていた。
ルナの母親が亡くなり、季節は12月になっていた。
ますます寒さは厳しくなり、ルナは隙間風の入る寒い家の中で寒さに震えながら毎日くたくたになるまで働いていたのだが、一向に借金を返せる目途はたたなかった。
そんなある日・・・とうとう借金取りがルナの家にやって来たのだ。借金取りは亡き父の友人であった。
「ルナ。今までお前は俺の友人の娘だからと借金の返済を待っていてやったが、それももう限界だ。俺にだって生活がかかっているのだ。だから悪いが・・・明日の夜までにここを出て行ってくれ。」
「ええっ!そ、そんな・・・おじさん!ここを出て行ったら・・・私、住む場所を失ってしまうわっ!お願いですからどうか追い出さないでくださいっ!」
ルナは涙を浮かべて訴えた。
「駄目だっ!そんなにお金が欲しいなら・・・そうだ・・ルナ。お前は若くて磨けばきっと美しくなるから町へ行って娼館にでも行ったらどうだ?きっと雇ってくれるさ。そして男性客に気に入られればあわよくば、パトロンにでもしてくれるかもしれないぞ?」
「そ・・そんな・・・。」
ルナは青ざめた。
「まあ・・・経験が無ければ最初は怖いかもしれないしな・・・。よし、分かった。それなら俺がお前の初めての男になってやろうか?」
「!」
ルナが身構えた途端、借金取りはルナに掴みかかり床に押し倒してきた。
そしていやらしい手つきでルナの胸元をまさぐって来たとこで、ルナは恐怖のあまり悲鳴を上げると、近所に住む女性が何事かと飛び込んできた。
「ルナちゃん!どうしたんだいっ?!」
するとルナが借金取りの男に組み伏せられている姿が目に入った。
「あんた・・・っ!ルナちゃんに何するんだいっ!」
女は手近にあったほうきを掴むと男の頭を殴りつけた。
「ヒエエエエッ!」
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「い、いいか・・・。絶対明日の夜には出て行って貰うからなっ!」
「やかましいっ!さっさと姿を消しなっ!」
女性の迫力に押されて借金取りは逃げるように家から去って行った。
「大丈夫だったかい・・・?ルナちゃん・・・。」
「あ、ありがとうございます・・・。」
(ああ・・・とうとう・・・私は住む家も失ってしまうのね・・・。)
ルナは身体を震わせながら返事をするのだった―。
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