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第1幕 『星の銀貨』のヒロインの場合 ②
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「可愛そうに・・・。ルナちゃん。去年父親を亡くしたばかりなのに、今度は母親まで亡くしてしまうなんて・・・。」
「本当ね・・・。何でもあの家も既に借金の抵当に入っているって話だし・・・。」
「今に住む処も失ってしまうかもな・・・。」
お葬式に集まった村人たちの囁き声がルナの耳にも届いていたが、もう何も考える事が出来なくなっていた。
本来であれば、教会でお葬式を上げるお金すらルナは持っていなかったが、信仰心の厚いルナを良く知っている教会の神父さんが特別に無償でお葬式を上げてくれたのだ。
カーンカーン・・・。
死者を弔うための教会の鐘が鳴り響く中、村の参列者達がルナの母親の眠っている棺を担ぎ上げて共同墓地へと運ぶ。お金の無い村人たちはこの教会の裏手にある共同墓地へ埋められることになっているのだ。
やがて真新しい棺は降ろされ、村人たちの手によって土が掘られ、ルナの母親の棺は穴に埋められ、上から土を被せられていく。
それら一連の行動をルナはまるで他人事のように見守っていた。
そんなルナを見かねたのか一人の近所に住む女性が声を掛けてきた。
「ルナちゃん・・・。」
「あ・・おばさん・・。」
ルナは虚ろな瞳で女性を見上げた。
「これ・・少ないけど貰ってくれる?」
女性は麻袋をルナに手渡してきた。
「これは・・?何ですか・・?」
「小麦よ。ごめんね・・我が家も貧しくて・・これ位しかしてあげられないのよ・・。」
「おばさん・・・。」
ルナはとうとう我慢が出来ず、女性に縋りつくと肩を震わせて涙した。
「いいのよ・・・ルナちゃん。泣きたいだけ今は・・お泣きなさい・・・。」
その頃―
この国の美しく、若き国王は嘆いていた。
「一体国の飢饉はいつになったら治まるのだろう・・・。」
王室のバルコニーへ出ると遠くから教会の鐘の音が響き渡って来る。
「ああ・・・また誰かが無くなったのだ・・・。」
国王はまだ20歳になったばかりの若者であった。父を先月病で亡くし、即位したばかりである。今、彼が嘆いているのは1年以上前からこの国を襲っている飢饉である。日照りが続き、土地は干からび、大勢の村人たちが飢えて死んでいった。
何とかしなければならないと思っているのに妙案が無い。
この国王は信心深い人間であった。
王宮に造られた教会へ行き、神に祈りを捧げた。
「神よ・・・どうか我が国をお救い下さい・・・。」
国王は何日も何日も眠らずに祈りを捧げ、ついに祈りが神に届いた。
『若き国王よ・・・お前は信仰深い若者だからお前の願いを聞き入れよう・・・この国で一番信仰深く、心優しい女性を探し出し、伴侶として迎えるのだ。さすればそなたの願いを聞き入れよう。期限は12月24日までとする。良いか?それまでに必ず伴侶を見つけ出すのだ・・・。』
そして神の声は遠ざかっていった―。
「本当ね・・・。何でもあの家も既に借金の抵当に入っているって話だし・・・。」
「今に住む処も失ってしまうかもな・・・。」
お葬式に集まった村人たちの囁き声がルナの耳にも届いていたが、もう何も考える事が出来なくなっていた。
本来であれば、教会でお葬式を上げるお金すらルナは持っていなかったが、信仰心の厚いルナを良く知っている教会の神父さんが特別に無償でお葬式を上げてくれたのだ。
カーンカーン・・・。
死者を弔うための教会の鐘が鳴り響く中、村の参列者達がルナの母親の眠っている棺を担ぎ上げて共同墓地へと運ぶ。お金の無い村人たちはこの教会の裏手にある共同墓地へ埋められることになっているのだ。
やがて真新しい棺は降ろされ、村人たちの手によって土が掘られ、ルナの母親の棺は穴に埋められ、上から土を被せられていく。
それら一連の行動をルナはまるで他人事のように見守っていた。
そんなルナを見かねたのか一人の近所に住む女性が声を掛けてきた。
「ルナちゃん・・・。」
「あ・・おばさん・・。」
ルナは虚ろな瞳で女性を見上げた。
「これ・・少ないけど貰ってくれる?」
女性は麻袋をルナに手渡してきた。
「これは・・?何ですか・・?」
「小麦よ。ごめんね・・我が家も貧しくて・・これ位しかしてあげられないのよ・・。」
「おばさん・・・。」
ルナはとうとう我慢が出来ず、女性に縋りつくと肩を震わせて涙した。
「いいのよ・・・ルナちゃん。泣きたいだけ今は・・お泣きなさい・・・。」
その頃―
この国の美しく、若き国王は嘆いていた。
「一体国の飢饉はいつになったら治まるのだろう・・・。」
王室のバルコニーへ出ると遠くから教会の鐘の音が響き渡って来る。
「ああ・・・また誰かが無くなったのだ・・・。」
国王はまだ20歳になったばかりの若者であった。父を先月病で亡くし、即位したばかりである。今、彼が嘆いているのは1年以上前からこの国を襲っている飢饉である。日照りが続き、土地は干からび、大勢の村人たちが飢えて死んでいった。
何とかしなければならないと思っているのに妙案が無い。
この国王は信心深い人間であった。
王宮に造られた教会へ行き、神に祈りを捧げた。
「神よ・・・どうか我が国をお救い下さい・・・。」
国王は何日も何日も眠らずに祈りを捧げ、ついに祈りが神に届いた。
『若き国王よ・・・お前は信仰深い若者だからお前の願いを聞き入れよう・・・この国で一番信仰深く、心優しい女性を探し出し、伴侶として迎えるのだ。さすればそなたの願いを聞き入れよう。期限は12月24日までとする。良いか?それまでに必ず伴侶を見つけ出すのだ・・・。』
そして神の声は遠ざかっていった―。
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