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第1幕 『星の銀貨』のヒロインの場合 ①
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「お母さん・・・いや、お願い。私を置いて死なないで・・・。」
藁のベッドに横たわっている女性に少女が縋りついて泣いている。
骨と皮だけになってしまった痩せ細った身体は青白いを通り越して真っ白になっている。栄養状態が悪すぎて、髪の毛はパサつき、皮膚もカサカサに乾燥し、まるで枝のように見える。落ちくぼんだ眼の光も弱々しい。
誰が見てもこの女性が助かる見込みは無いと言う事が見て取れた。
そこは家と呼ぶにはあまりにも貧しい造りの家だった。木を簡単に組んで作っただけの壁はあちこちが腐食している。床板はボロボロで、家具と言えば小さな木のテーブルに椅子代わりの切り株が2つ。そして藁で作られた粗末なベッドが二つ。一応暖を取る為の暖炉は歩けれども、肝心の薪が無いので、火を起こす事も出来ない。
そして一人の少女が母親に縋って泣いていた。
彼女の名前はルナ。今年の春に18歳になったばかりの少女である。彼女の髪は輝くように美しい金の髪をしていたが、ブラシが無いので手入れをする事も出来ず、髪はくしゃくしゃに縮れ、それはみすぼらしいなりをしていた。来ている服も粗末で薄い木綿の長いワンピースに着古したエプロン、そして寒さ防止に知人から情けで貰った毛糸のストールを巻いていた。
「ルナ・・・ごめんね・・・。お前を1人ぼっちにしてしまうのが・・一番の心残りだわ・・・。」
蚊の鳴くようなか細い声で縋りつくルナに母は気力を振り絞り、必死で声を掛ける。
「いやよ!お母さん・・・私・・お母さんがいなければ・・この先どうやって生きて行けばいいの・・・?お願い・・私もっと一生懸命働くから一人にしないで・・。」
エメラルド色の瞳に涙を浮かべてルナは母親の手を握りしめながら涙を流す。すると母は言った。
「ル・・ルナ・・・よ、よく聞きなさい・・・。いつも神様は貴女を見守ってくれているわ・・。あ、貴女は信仰心の強い、優しい子・・。その心を忘れなければ・・きっと神様が・・・助けてくれるわ・・・。忘れないで・・・あ、貴女は1人じゃない・・って事を・・・。ル、ルナ・・・私の愛しい娘・・愛してる・・わ・・・。」
母の目から一筋の涙が流れ・・・そして動かなくなった。
「え・・?お母さん・・?」
ルナはハッとなって母の顔を見つめた。
「お母さんっ!お母さんっ!」
ルナは必死で母を揺すぶったが・・・二度と母は目を覚ます事は無かった。
「いやああああーっ!お母さーんっ!」
狭い家の中にルナの叫び声が響き渡った。
11月・・・木枯らしが吹き始める季節・・・この日、ルナは一人ぼっちになってしまった―。
藁のベッドに横たわっている女性に少女が縋りついて泣いている。
骨と皮だけになってしまった痩せ細った身体は青白いを通り越して真っ白になっている。栄養状態が悪すぎて、髪の毛はパサつき、皮膚もカサカサに乾燥し、まるで枝のように見える。落ちくぼんだ眼の光も弱々しい。
誰が見てもこの女性が助かる見込みは無いと言う事が見て取れた。
そこは家と呼ぶにはあまりにも貧しい造りの家だった。木を簡単に組んで作っただけの壁はあちこちが腐食している。床板はボロボロで、家具と言えば小さな木のテーブルに椅子代わりの切り株が2つ。そして藁で作られた粗末なベッドが二つ。一応暖を取る為の暖炉は歩けれども、肝心の薪が無いので、火を起こす事も出来ない。
そして一人の少女が母親に縋って泣いていた。
彼女の名前はルナ。今年の春に18歳になったばかりの少女である。彼女の髪は輝くように美しい金の髪をしていたが、ブラシが無いので手入れをする事も出来ず、髪はくしゃくしゃに縮れ、それはみすぼらしいなりをしていた。来ている服も粗末で薄い木綿の長いワンピースに着古したエプロン、そして寒さ防止に知人から情けで貰った毛糸のストールを巻いていた。
「ルナ・・・ごめんね・・・。お前を1人ぼっちにしてしまうのが・・一番の心残りだわ・・・。」
蚊の鳴くようなか細い声で縋りつくルナに母は気力を振り絞り、必死で声を掛ける。
「いやよ!お母さん・・・私・・お母さんがいなければ・・この先どうやって生きて行けばいいの・・・?お願い・・私もっと一生懸命働くから一人にしないで・・。」
エメラルド色の瞳に涙を浮かべてルナは母親の手を握りしめながら涙を流す。すると母は言った。
「ル・・ルナ・・・よ、よく聞きなさい・・・。いつも神様は貴女を見守ってくれているわ・・。あ、貴女は信仰心の強い、優しい子・・。その心を忘れなければ・・きっと神様が・・・助けてくれるわ・・・。忘れないで・・・あ、貴女は1人じゃない・・って事を・・・。ル、ルナ・・・私の愛しい娘・・愛してる・・わ・・・。」
母の目から一筋の涙が流れ・・・そして動かなくなった。
「え・・?お母さん・・?」
ルナはハッとなって母の顔を見つめた。
「お母さんっ!お母さんっ!」
ルナは必死で母を揺すぶったが・・・二度と母は目を覚ます事は無かった。
「いやああああーっ!お母さーんっ!」
狭い家の中にルナの叫び声が響き渡った。
11月・・・木枯らしが吹き始める季節・・・この日、ルナは一人ぼっちになってしまった―。
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