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5-17 剣とユベール
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「シルビア、部屋まで送る」
アンリ王子の部屋を出るとすぐにユベールは言った。
「え?でも…」
「でも?何だ?」
「ユベール様はこれから近衛騎士団の方々の所へ行ってアンリ王子の護衛を依頼しに行くのですよね?」
「ああ、そうだ」
「なら私は1人で部屋に戻れますから、どうぞ近衛騎士団の方々の元へ行って下さい」
「…」
するとユベールは眉間にしわを寄せると言った。
「何を言ってるんだ?お前を1人で部屋に帰せるはず無いだろう?それに今日の魔石探しの時間が終わるまでは傍にいる」
「えっ?!」
思わず大きな声を上げてしまった。するとユベールは何を勘違いしたのか、少し考え込むと言った。
「そうだな。考えてみるとお前の部屋で17時までやり過ごすのはまずいかもしれない。いつ魔石を狙う輩が来るかもしれないし…。よし、俺の部屋へ行けばいい」
「えぇっ?!」
もっと大きな声が出てしまった。
「よし、そうと決まればすぐに行こう」
そしてユベールは私の返事を聞く事もなく、右手をガシッと握りしめると歩きはじめた。そんなユベールに私はただついていくしかなかった―。
****
部屋の前に到着するとユベールは鍵を取り出し、鍵穴に差すとカチャリと回してドアを開けた。
キィ~…
「ほら、入れよ」
ユベールに軽く背中をポンと押され、私は恐る恐る部屋の中へと足を踏み入れた。
「お、お邪魔します…」
おっかなびっくりユベールの部屋へ入り、まず一番最初に目についたのは大きな掃き出し窓のバルコニーだった。窓には濃紺なカーテンが掛けらている。そして壁には何本もの剣が飾られていた。
「剣が…」
私の目はある1本の剣に釘付けになっていた。その剣は12回目の死を迎えた時に私の胸を貫いたユベールの剣だった。あの時のユベールは…私を冷たい目で見ていた。そして迷うことなく私の胸を剣で貫いて…。私は死んだ…。
その時の痛みや恐怖が何故か今私の脳裏に鮮明に浮かび上がった。
「イヤアアアッ!!」
私は頭を抱えて床に座り込んでしまった。
「シルビアッ?!どうしたんだっ?!シルビアッ!」
ユベールが必死になって私の名前を叫んでいるのは理解できるが、あの剣を見ただけで、あの時と同じ情景を追体験しているかのような錯覚に陥ってしまった。
「剣が‥剣が…っ!」
「剣がどうした?今までだって沢山見て来ただろう?!」
ユベールが私の肩を掴んで自分の方をグイッと向かせた。
「いや…あの剣は…あの剣だけは駄目…」
気付けば私はうわ言の様にある1本の剣をじっと見つめながら呟いていた。
「あの剣…?ハッ!まさか…っ!」
ユベールは何かに気付いたのか突然立ち上がった。一方の私は怖くて怖くてガタガタ震えながら両肩を抑えていた。その時、ユベールが声を掛けて来た。
「シルビア。安心しろっ!もうあの剣は隠したからっ!もう見えないように布でくるんだ!」
「え…?」
ユベールには…私がどの剣で怯えていたのか分かったのだろうか?けれど恐る恐る壁を見てみると、前回のループで私を貫いた剣は消えていた。
「あ、ありがとうございます…」
それでもまだ恐怖の為に身体の震えが治まらない。
「シルビア…大丈夫か…?」
ユベールが私の肩にそっと手を置いた。
「ユ、ユベール様…!」
私は先ほどの恐怖が拭いきれず、思わずユベールの身体に縋りついていた。
「シ、シルビアッ?」
頭の上で明らかにユベールの動揺した声が聞こえた。
「す、すみません…も、もう少しだけこのままで…おねがいします…」
顔を上げてユベールの方を見上げた。
「シルビア…」
すると何故かユベールの顔が徐々に近づいて来た。私は思わずその美しい顔に見惚れてしまっていた。
そして気付けば…私はユベールに口付けされていた―。
アンリ王子の部屋を出るとすぐにユベールは言った。
「え?でも…」
「でも?何だ?」
「ユベール様はこれから近衛騎士団の方々の所へ行ってアンリ王子の護衛を依頼しに行くのですよね?」
「ああ、そうだ」
「なら私は1人で部屋に戻れますから、どうぞ近衛騎士団の方々の元へ行って下さい」
「…」
するとユベールは眉間にしわを寄せると言った。
「何を言ってるんだ?お前を1人で部屋に帰せるはず無いだろう?それに今日の魔石探しの時間が終わるまでは傍にいる」
「えっ?!」
思わず大きな声を上げてしまった。するとユベールは何を勘違いしたのか、少し考え込むと言った。
「そうだな。考えてみるとお前の部屋で17時までやり過ごすのはまずいかもしれない。いつ魔石を狙う輩が来るかもしれないし…。よし、俺の部屋へ行けばいい」
「えぇっ?!」
もっと大きな声が出てしまった。
「よし、そうと決まればすぐに行こう」
そしてユベールは私の返事を聞く事もなく、右手をガシッと握りしめると歩きはじめた。そんなユベールに私はただついていくしかなかった―。
****
部屋の前に到着するとユベールは鍵を取り出し、鍵穴に差すとカチャリと回してドアを開けた。
キィ~…
「ほら、入れよ」
ユベールに軽く背中をポンと押され、私は恐る恐る部屋の中へと足を踏み入れた。
「お、お邪魔します…」
おっかなびっくりユベールの部屋へ入り、まず一番最初に目についたのは大きな掃き出し窓のバルコニーだった。窓には濃紺なカーテンが掛けらている。そして壁には何本もの剣が飾られていた。
「剣が…」
私の目はある1本の剣に釘付けになっていた。その剣は12回目の死を迎えた時に私の胸を貫いたユベールの剣だった。あの時のユベールは…私を冷たい目で見ていた。そして迷うことなく私の胸を剣で貫いて…。私は死んだ…。
その時の痛みや恐怖が何故か今私の脳裏に鮮明に浮かび上がった。
「イヤアアアッ!!」
私は頭を抱えて床に座り込んでしまった。
「シルビアッ?!どうしたんだっ?!シルビアッ!」
ユベールが必死になって私の名前を叫んでいるのは理解できるが、あの剣を見ただけで、あの時と同じ情景を追体験しているかのような錯覚に陥ってしまった。
「剣が‥剣が…っ!」
「剣がどうした?今までだって沢山見て来ただろう?!」
ユベールが私の肩を掴んで自分の方をグイッと向かせた。
「いや…あの剣は…あの剣だけは駄目…」
気付けば私はうわ言の様にある1本の剣をじっと見つめながら呟いていた。
「あの剣…?ハッ!まさか…っ!」
ユベールは何かに気付いたのか突然立ち上がった。一方の私は怖くて怖くてガタガタ震えながら両肩を抑えていた。その時、ユベールが声を掛けて来た。
「シルビア。安心しろっ!もうあの剣は隠したからっ!もう見えないように布でくるんだ!」
「え…?」
ユベールには…私がどの剣で怯えていたのか分かったのだろうか?けれど恐る恐る壁を見てみると、前回のループで私を貫いた剣は消えていた。
「あ、ありがとうございます…」
それでもまだ恐怖の為に身体の震えが治まらない。
「シルビア…大丈夫か…?」
ユベールが私の肩にそっと手を置いた。
「ユ、ユベール様…!」
私は先ほどの恐怖が拭いきれず、思わずユベールの身体に縋りついていた。
「シ、シルビアッ?」
頭の上で明らかにユベールの動揺した声が聞こえた。
「す、すみません…も、もう少しだけこのままで…おねがいします…」
顔を上げてユベールの方を見上げた。
「シルビア…」
すると何故かユベールの顔が徐々に近づいて来た。私は思わずその美しい顔に見惚れてしまっていた。
そして気付けば…私はユベールに口付けされていた―。
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