命がけの恋~13回目のデスループを回避する為、婚約者の『護衛騎士』を攻略する

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
92 / 107

5−13 脅迫

しおりを挟む
 眩しい朝日が顔に当たり、再び私は目が覚めた。そして気が付いた。私の隣に眠っていたはずのユベールの姿が消えていた。

「やっぱり…帰ったんだ…」

そして何故ユベールが私の部屋にやってきたのか理解した。部屋にあるテーブルの上にはお皿の上にフルーツが乗っていたのだ。それにあれほどの寒気も消えている。

「きっと寒がっている私を温めてくれたんだ…」

そして私の熱が下がったのを確認して自分の部屋に戻ったに違いない。
ベッドから降りると、クローゼットに向かい着替えを始めた―。



 着替えを終え、テーブルに向かって朝食代わりにフルーツを食べていると部屋の扉がノックされた。

コンコン

「シルビア様。お目覚めでしょうか?中へ入ってもよろしいでしょうか?」

それはメイドのリンの声だった。

「ええ、起きてるわ」

声をかけるとカチャリとドアが開かれ、トレーを持ったリンが部屋の中に入ってきた。

「まぁ!シルビア様、もうお召になっていたのですか?今朝食をお持ちしたのですが。それで具合の方はいかがですか?」

トレーの上にはスープとミルク粥が乗っていた。

「もう体調はすっかり良くなったわ。今日は魔石探しに参加するわ。お料理持ってきてくれてありがとう、それも頂くわ。何も食べないで眠ってしまったからお腹がすいてしまって」

「ではこちらに置いておきますね」

リンはテーブルの上に料理が乗ったトレーを乗せてくれた。

「ええ、ありがとう」

「それでは失礼致します」

リンは頭を下げると部屋から出て行った。そして私はまだ湯気の立つ温かい料理に手を伸ばした―。



 朝食を食べ終えた後、私は考えた。キリアンが亡くなった今、私1人では到底魔石探しは無理である。1人では魔石を手に取ることも出来ないし、その上仮に魔石を奪いに現れた人物が襲ってきたらひとたまりも無い。

「やっぱり、町に行って傭兵を雇わないと…女性を雇えば安心よね?」

自分に言い聞かせるように言い、椅子から立ち上がると出かける準備を始めた―。


 朝9時―


ゴーン
ゴーン
ゴーン

 魔石探しの時間になった。上着を着こむと私は部屋を後にした。


エントランスを出て、城の外へ出た途端背後でシュッと音が聞こえた。

ビシッ!!

何と目の前の大木に弓矢が刺さったのだ。

「え…っ?!」

余りの突然の出来事に腰が抜けてその場に座り込んでしまった。そ、そんな…私、今狙われた…?

ザッ
ザッ
ザッ

背後で足音が近付いてくる。そして声を掛けられた。

「さぁ、死にたくなければ魔石を渡すんだ」

ドスの効いた男の声が聞こえた。震えながら振り向くと、そこには大柄な傭兵が立っていた。

「あ、ありません…」

私は震えながらも何とか答える。


「はあっ?!俺はなぁ、雇い主から聞いてんだよっ!お前が魔石の在り処を探す能力があるってなっ!相当集まっているんだろうっ?!さっさと寄こせ!」

男はスラリと剣を抜くと、喉元に剣を突きつけた。怖いけど…持っていないものはどうしようもない。それに私はもう12回も死んでいるのだ。いざとなれば覚悟は出来ている。

「ほ、本当に持っていないんですっ!私のパートナーの騎士の方に渡していたんです!で、でもその方は昨日殺されて…その時に魔石も奪われてしまって、私は1つも持っていないんですっ!…うっ!」

喉に鋭い痛みが走った。そして生暖かい血が喉から滴るのを感じた。

「そんな話を信じると思っているのか?今のは薄く皮膚裂いただけだが…次はそうはいかないぞ?」

「そ、そんな事言われても…あうっ!!」

男が剣を振るった途端、今度は左腕に鋭い痛みが走った。今度は左腕を切られたのだ。ぶ厚いコートがすっぱり切られ、そこから血がにじみ出ている。

「うぅ・・・」

腕を押さえつけ、何とか痛みに耐える。

「ほんの少し剣がかすっただけだ。大した傷じゃない」

その時…。

「もうその位にしておきなさい。後は私が魔石を持っていないか調べるから」

扉の奥から現れたのは見覚えのある令嬢だった。そして私に近付いてくる。

「や、やめて…来ないで…」

逃げようにも腰が抜けて動けない。

「そうはいかないわ。これから魔石を隠し持っていないか探さなくちゃいけないんだから!さぁ、早くコートを脱ぎなさいっ!」

「わ、分かったわ…」

傷口の痛みに耐え、何とか上着を脱ぐと乱暴に奪われた。令嬢は奪ったコートをガサゴソあさり、つまらなそうにため息を付いた。

「その服にはポケットは無さそうね…まさか本当に持ってないの?」

「だから…そう言ったでしょう…?」

「フン!」

その令嬢はつまらなそうに私にコートを投げて寄越すと男に言った。

「行きましょう。時間の無駄だったわ」

そして地面に座り込んでいる私を残して、その場を去って行った―。


しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています

窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。 シナリオ通りなら、死ぬ運命。 だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい! 騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します! というわけで、私、悪役やりません! 来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。 あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……! 気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。 悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——?

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

処理中です...