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5−8 奪われた魔石とアンリ王子の命令
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ユベールがベッドに近付いてきた。もしかすると先程の会話…聞いてはいけなかったかもしれない。そう思った私はユベールが来る前にブランケットをかぶって寝たふりをすることにした。
「…」
ユベールが私のすぐ側にやってきた。
「シルビア…」
ブランケットをかぶった私にはユベールの表情が分からない。声だけで感情を読み取るしか無かった。私の名前を呼ぶその声は…どこか苦しげに聞こえた。
「すまなかった。俺のせいで…」
違う、これはユベールのせいではない。ひょっとすると…キリアンが殺されてしまったのは私のせいかもしれない。私が彼をパートナーに選んだから。彼に…魔石を預けたから。
「お前を殴ったカロン…俺が必ず仕返ししてやる。同じ目に…いや、それ以上の苦痛を味合わせてやる」
憎悪に満ちたその声にゾッとした。…どうしよう、完全に起きるタイミングを失ってしまった。
「本当に…すまなかった」
ユベールがブランケットの上から私の身体に触れてきた。起きるなら…今がチャンスかもしれない。
「う~ん…」
わざとらしかったかも知れないが私はうめき声を上げると、モゾモゾと動いた。
「シルビア?!」
ユベールの声と同時に私はゆっくりブランケットを剥がして目を擦りながらユベールを見た。…わざとらしくなかっただろうか?
「ユベール様…」
そして起き上がろうと身体を起こした途端、グラリと目が回った。
「あ…」
思わずベッドの上でよろめいた時、ユベールが支えてきた。
「シルビアッ!」
ユベールの胸に倒れ込む形になった私は慌てて言った。
「も、申し訳ありません」
そしてユベールの胸を軽く押すように離れると、改めてユベールを見た。
「無理するな。脳震盪を起こしていたんだ。まだ休んでいたほうがいい」
「はい…」
ゆっくりベッドに身を沈めると私は尋ねた。
「あの後…一体何が合ったのですか?」
すると傍らに椅子があったのか、ユベールは座ると言った。
「あの後…お前が持ってきてくれた防寒アイテムで2人で毛布にくるまって…お前が凍えないようにずっと身体をさすっていた。それから暫くしてアンリ王子がやってきて牢屋の鍵を開けてくれたんだ。アンリ王子は出掛けていて不在だった。その隙を狙った殺人事件だったんだ。俺が地下牢に閉じ込められたのをアンリ王子に伝えてくれたのがジュリエッタだったんだ。ジュリエッタのお陰で…俺達は助かったんだ」
ユベールの顔はどこか少し嬉しそうに見えた。きっと…ジュリエッタが自分の為に行動してくれたのがうれしかたのだろう。心のなかでため息を付くと私は言った。
「あの、ところでここは何処ですか?」
「ああ、ここは救護室だ」
「救護室…」
確か私の部屋は救護室の上の階だ。
「今、何時でしょうか?」
「あ、ああ。今は午後2時だ」
「2時…もうそんな時間だったのですか…」
「大丈夫か?シルビア」
ユベールは何処かソワソワしているように見える。私はピンときた。ああ…ひょっとするとジュリエッタの元へ行きたいのだろうと。先程の会話でジュリエッタがお茶の準備をしてくれているのは知っている。
「はい、私はもう大丈夫です。なので…アンリ王子とジュリエッタ様のところへ行って下さい」
「え?いいのか…」
ユベールが以外そうな顔をした。
「はい、どうぞ。私も体調が回復したら本日は部屋へ戻ります。」
「しかし…1人にすれば危険じゃ…」
「大丈夫ですよ。遠慮せずに行って下さい」
「あ、ああ…悪いな」
ユベールは立ち上がると扉へ向かった。その時、私は肝心な事を思い出した。
「ユベール様」
「何だ?」
ユベールが振り返った。
「魔石は…どうなったのでしょう?」
「それが…見つからなかったんだ」
「そうなのですか?」
「それで…アンリ王子が言ったんだ。お前にもう一度魔石探しをやり直す様に伝えるようにと命じられた」
「!」
そんな…!
「ユベール様は…どう思いますか?」
「俺は…頑張るしか無いと…思ってる」
ユベールは申し訳無さそうに言う。でも…予想通りの言葉だった。
「分かりました。明日から…頑張ります」
「ああ、そうだな。それじゃ…」
ユベールは今度こそ部屋から去って行った。
「ユベール様…」
1人になると私はポツリと呟いた―。
「…」
ユベールが私のすぐ側にやってきた。
「シルビア…」
ブランケットをかぶった私にはユベールの表情が分からない。声だけで感情を読み取るしか無かった。私の名前を呼ぶその声は…どこか苦しげに聞こえた。
「すまなかった。俺のせいで…」
違う、これはユベールのせいではない。ひょっとすると…キリアンが殺されてしまったのは私のせいかもしれない。私が彼をパートナーに選んだから。彼に…魔石を預けたから。
「お前を殴ったカロン…俺が必ず仕返ししてやる。同じ目に…いや、それ以上の苦痛を味合わせてやる」
憎悪に満ちたその声にゾッとした。…どうしよう、完全に起きるタイミングを失ってしまった。
「本当に…すまなかった」
ユベールがブランケットの上から私の身体に触れてきた。起きるなら…今がチャンスかもしれない。
「う~ん…」
わざとらしかったかも知れないが私はうめき声を上げると、モゾモゾと動いた。
「シルビア?!」
ユベールの声と同時に私はゆっくりブランケットを剥がして目を擦りながらユベールを見た。…わざとらしくなかっただろうか?
「ユベール様…」
そして起き上がろうと身体を起こした途端、グラリと目が回った。
「あ…」
思わずベッドの上でよろめいた時、ユベールが支えてきた。
「シルビアッ!」
ユベールの胸に倒れ込む形になった私は慌てて言った。
「も、申し訳ありません」
そしてユベールの胸を軽く押すように離れると、改めてユベールを見た。
「無理するな。脳震盪を起こしていたんだ。まだ休んでいたほうがいい」
「はい…」
ゆっくりベッドに身を沈めると私は尋ねた。
「あの後…一体何が合ったのですか?」
すると傍らに椅子があったのか、ユベールは座ると言った。
「あの後…お前が持ってきてくれた防寒アイテムで2人で毛布にくるまって…お前が凍えないようにずっと身体をさすっていた。それから暫くしてアンリ王子がやってきて牢屋の鍵を開けてくれたんだ。アンリ王子は出掛けていて不在だった。その隙を狙った殺人事件だったんだ。俺が地下牢に閉じ込められたのをアンリ王子に伝えてくれたのがジュリエッタだったんだ。ジュリエッタのお陰で…俺達は助かったんだ」
ユベールの顔はどこか少し嬉しそうに見えた。きっと…ジュリエッタが自分の為に行動してくれたのがうれしかたのだろう。心のなかでため息を付くと私は言った。
「あの、ところでここは何処ですか?」
「ああ、ここは救護室だ」
「救護室…」
確か私の部屋は救護室の上の階だ。
「今、何時でしょうか?」
「あ、ああ。今は午後2時だ」
「2時…もうそんな時間だったのですか…」
「大丈夫か?シルビア」
ユベールは何処かソワソワしているように見える。私はピンときた。ああ…ひょっとするとジュリエッタの元へ行きたいのだろうと。先程の会話でジュリエッタがお茶の準備をしてくれているのは知っている。
「はい、私はもう大丈夫です。なので…アンリ王子とジュリエッタ様のところへ行って下さい」
「え?いいのか…」
ユベールが以外そうな顔をした。
「はい、どうぞ。私も体調が回復したら本日は部屋へ戻ります。」
「しかし…1人にすれば危険じゃ…」
「大丈夫ですよ。遠慮せずに行って下さい」
「あ、ああ…悪いな」
ユベールは立ち上がると扉へ向かった。その時、私は肝心な事を思い出した。
「ユベール様」
「何だ?」
ユベールが振り返った。
「魔石は…どうなったのでしょう?」
「それが…見つからなかったんだ」
「そうなのですか?」
「それで…アンリ王子が言ったんだ。お前にもう一度魔石探しをやり直す様に伝えるようにと命じられた」
「!」
そんな…!
「ユベール様は…どう思いますか?」
「俺は…頑張るしか無いと…思ってる」
ユベールは申し訳無さそうに言う。でも…予想通りの言葉だった。
「分かりました。明日から…頑張ります」
「ああ、そうだな。それじゃ…」
ユベールは今度こそ部屋から去って行った。
「ユベール様…」
1人になると私はポツリと呟いた―。
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