命がけの恋~13回目のデスループを回避する為、婚約者の『護衛騎士』を攻略する

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
86 / 107

5−7 カロン

しおりを挟む
「う…」

突如背後でうめき声がきこえた。見るとユベールが私を抱きとめていたのだ。

「ユベール様っ!しっかりして下さいっ!」

すると背後で扉の閉まる音が聞こえた。

キィ~…

ハッとなって振り向くと、カロンが牢屋の鍵を掛けるところだった。

「待って!」

慌てて扉へ向かって駆け出すも間に合わなかった。

ガチャンッ!

私の叫び声もむなしく、鍵は無情にもかけられてしまった。

「ハッハッハッ!せいぜい、その中で王の許しが得られるまでおとなしくしている事だな。最もこの寒さだ、どの程度お前たちが持つか分からないがな?」

白い息を吐きながらカロンが仲間たちと私達を見てあざ笑っている。

「カロン…貴様…っ!」

ユベールが悔しげに歯を噛み締めている。カロンはニヤニヤ笑みを浮かべながら、突如鉄格子から手が伸びてきて私は顎を掴まれてしまった。

「へぇ~…暗がりだったからよく分からなかったが、こうやって見てみるとお前…中々器量良しじゃないか…どうだ?俺の女になるって言うならここから出してやるぞ?」

「カロンッ!!」

背後でユベールの声が聞こえた。すると突然カロンが今度は私の首に腕を回してきた。そしてゾッとする声で言う。

「おっと、動くなよユベール。お前が動けばこの女の首をへし折るぞ?」

「うっ…」

ユベールは悔しげにその場に止まった。それを見るとカロンは再び私の耳元で言う。

「どうだ?お前はアンリ王子の婚約者候補でやってきているが…王子にはジュリエッタという恋人がいる。例えお前が婚約者になって結婚したとしても真の夫婦になることはない。俺がお前の男になってやろうか?」

そして私の身体を弄ってきた。いや…気持ち悪い…。

「やめろッ!カロンッ!」

ユベールが叫ぶ。

「ユ…ユベール様っ!」

こんな、ユベールの前でこんな事をされるなんて…寒さで身体もかじかんで言うことを効かない。だけど…!

ガブッ!!

私はカロンの右掌に思い切り噛み付いた。

「痛ってーっ!!何しやがる!このアマっ!」

バシイッ!!

激しい衝撃が頬に走り、目から火花が飛んだ。叩かれたんだ。一瞬意識が遠くなりかけた。

グラリ

衝撃で身体がよろめく。脳震盪をおこしかけたのか目眩がする。

「シルビアッ!」

ユベールが駆け寄り背後から抱きとめてくれた。

「カロンッ!貴様…っ!よくもシルビアにっ!」

「フンッ!その女が生意気だからだっ!行くぞ皆っ!」

カロンが仲間たちを連れて牢屋から去っていくのをぼんやりする頭で私は見つめていた。

「シルビア、シルビア…しっかりしろ…」

ユベールが悲しげな声で私を胸にしっかり抱きしめてくる。ユベール…。私の事を心配してくれるの…?

「だ…大丈夫…です。私なら…」

だって私が死ぬのはもっと先、7月7日だ。その日がくるまでは…。そこで私の意識は闇に沈んだ―。


****

 カチコチカチコチ…


 温かい…時計の音と共に近くで話し声が聞こえてくる。


「全く…僕が来なければどうするつもりだったんだい?ユベール」

アンリ王子の声が聞こえる。

「ああ、分かってる。アンリ王子には感謝している…」

「でも、これで君は僕にまた1つ借りが出来たんだからね?これからも僕の手足となって働いて貰うからな」

「…ああ、勿論だ…」

「それじゃ、僕は行くよ。ジュリエッタを待たせているからね。ユベール、君は行かないのかい?ジュリエッタが僕たちの為にお茶を用意してくれているんだよ?」

「いや、俺は…シルビアの傍にいる」

傍にいる…。

ドクン

自分の心臓の鼓動が大きくなった気がした。

「ふ~ん…ユベール。何だか変わったね。」

それだけ言うとアンリ王子の足音だろうか?カツカツと遠ざかって行き、扉の開閉音が聞こえ…静かになった。

「ふぅ…」

ユベールのため息を付く声が聞こえ、こちらへ近付いてくる気配を感じた―。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています

窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。 シナリオ通りなら、死ぬ運命。 だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい! 騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します! というわけで、私、悪役やりません! 来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。 あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……! 気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。 悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——?

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

処理中です...