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5−5 地下牢のユベール
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カツーン
カツーン
冷たい地下牢へ続く石の階段。私は足元に気をつけながら、壁に手をついて歩いていた。この王宮に地下牢がある事は王宮で暮らす人々は誰もが知っている。ただし地下牢の正確な場所を知っているのは王族と一部の人間たちのみである。そして私はこの地下牢の場所を知る数少ない人間であった。部外者の私が何故知っているのか…それは言うまでもない。11回目の死を私は地下牢で迎えたからだ。
カツーン!
地下牢へ続く階段を最後まで下りきると、改めて身体の芯から冷え込むあまりの寒さに両肩を抱きかかえて身震いした。私が閉じ込められたのは7月。だが、今はまだ2月。この寒さは恐らく外にいる時より寒いのではないだろうか?
白い息を吐きながら私はユベールの身が心配でならなかった。この寒さでユベールは無事でいられているのだろうか?いくら騎士とは言え、人が耐えきれる寒さでは無い。
私は今リュックを背負ってこの地下牢へとやってきたのだ。中にはマフラーや手袋、毛布…思いつく限りの防寒アイテムを持ってここまで降りてきた。かなり重く、滑る階段を降りるのは怖かったが、ユベールが寒さで凍えていることを思えば、どうってことは無かった。
「ユベール様…どこですか?ユベール様…」
地下牢はとても薄暗い。天井と地下牢のないぶに松明が灯されてはあるが、ここは光が全く届かない地下牢。とてもではないが十分な明かりとは言えない。
「ユベール様…」
1つ1つ牢屋の中を覗いていく。どうしていないのだろう?ひょっとするとまだ他に地下牢があるのだろうか?
その時、かすかに声が聞こえた。
「う…」
それは何とも弱々しい声だった。
「ユベール様っ?!」
カツンカツンと足音を立てながら、慌てて声のする方へ駆けていくと、鋭い声を浴びせられた。
「誰だっ?!」
「ユベール様!私です!シルビアですっ!」
「シルビア…?シルビアなのかっ?!」
ガシャーンッ!!
鉄格子が激しく音を立てている牢屋があった。ユベールが近くにいる!
「ユベール様っ!」
叫ぶと、声が聞こえてきた。
「ここだっ!シルビアッ!」
その声は力強かった。
「ユベール様っ!」
私はユベールがいる地下牢へ駆け寄ると、彼は凍りつきそうな冷たい鉄格子を握りしめていた。彼はいつもどおりの騎士の服を着用していたが、上着は着ていない。薄暗い炎の下でも顔色が青ざめているのが見て取れた。
「ユ、ユベール様…」
鉄格子を握りしめているユベールの手に自分の手を乗せた。その手はとても冷え切っていた。私は冷え切った彼の手を包み込むように上から握りしめ、ユベールを見上げた。
「シルビア…何故、この場所を知ってるんだ?どうして…ここにやってきたんだ?」
「私が何故この地下牢の場所を知っているのか…それは…今は明かす事は出来ません。だけど…どうしてここにやってきたのかは答えることが出来ます。何故ここに着たのか?そんなの決まってるじゃないですかっ!ユベール様が心配だったからですっ!」
「シルビア…ッ!」
ユベールは驚いたように私を見た。
「ユベール様、こんな地下牢にそんな薄着では今に死んでしまいますっ!ユベール様はキリアン様を殺すはずありません!きっと何かの間違いです!私が何とかしますので、それまではどうか耐えて下さい、私色々持ってきたんですよ!」
リュックを床に置き、持参してきた毛布やマフラー、手袋を次々と取り出し、鉄格子越しにユベールに押し付けるように手渡すと言った。
「ユベール様っ!頑張って下さいっ!必ず、必ずここから出してもらえるように私がアンリ王子を説得しますからっ!」
気付けば目に涙が浮かんでいた。こんなに寒い地下牢…いくら強靭なユベールだってそう長くは持たないかも知れない…!そう思うと泣けてきた。
「!」
ユベールの目が大きく見開かれた。
「シルビア…お前、何故そこまで俺に…?」
「それは…」
カツーン
カツーン
言いかけた時、足音が近付いて来た―。
カツーン
冷たい地下牢へ続く石の階段。私は足元に気をつけながら、壁に手をついて歩いていた。この王宮に地下牢がある事は王宮で暮らす人々は誰もが知っている。ただし地下牢の正確な場所を知っているのは王族と一部の人間たちのみである。そして私はこの地下牢の場所を知る数少ない人間であった。部外者の私が何故知っているのか…それは言うまでもない。11回目の死を私は地下牢で迎えたからだ。
カツーン!
地下牢へ続く階段を最後まで下りきると、改めて身体の芯から冷え込むあまりの寒さに両肩を抱きかかえて身震いした。私が閉じ込められたのは7月。だが、今はまだ2月。この寒さは恐らく外にいる時より寒いのではないだろうか?
白い息を吐きながら私はユベールの身が心配でならなかった。この寒さでユベールは無事でいられているのだろうか?いくら騎士とは言え、人が耐えきれる寒さでは無い。
私は今リュックを背負ってこの地下牢へとやってきたのだ。中にはマフラーや手袋、毛布…思いつく限りの防寒アイテムを持ってここまで降りてきた。かなり重く、滑る階段を降りるのは怖かったが、ユベールが寒さで凍えていることを思えば、どうってことは無かった。
「ユベール様…どこですか?ユベール様…」
地下牢はとても薄暗い。天井と地下牢のないぶに松明が灯されてはあるが、ここは光が全く届かない地下牢。とてもではないが十分な明かりとは言えない。
「ユベール様…」
1つ1つ牢屋の中を覗いていく。どうしていないのだろう?ひょっとするとまだ他に地下牢があるのだろうか?
その時、かすかに声が聞こえた。
「う…」
それは何とも弱々しい声だった。
「ユベール様っ?!」
カツンカツンと足音を立てながら、慌てて声のする方へ駆けていくと、鋭い声を浴びせられた。
「誰だっ?!」
「ユベール様!私です!シルビアですっ!」
「シルビア…?シルビアなのかっ?!」
ガシャーンッ!!
鉄格子が激しく音を立てている牢屋があった。ユベールが近くにいる!
「ユベール様っ!」
叫ぶと、声が聞こえてきた。
「ここだっ!シルビアッ!」
その声は力強かった。
「ユベール様っ!」
私はユベールがいる地下牢へ駆け寄ると、彼は凍りつきそうな冷たい鉄格子を握りしめていた。彼はいつもどおりの騎士の服を着用していたが、上着は着ていない。薄暗い炎の下でも顔色が青ざめているのが見て取れた。
「ユ、ユベール様…」
鉄格子を握りしめているユベールの手に自分の手を乗せた。その手はとても冷え切っていた。私は冷え切った彼の手を包み込むように上から握りしめ、ユベールを見上げた。
「シルビア…何故、この場所を知ってるんだ?どうして…ここにやってきたんだ?」
「私が何故この地下牢の場所を知っているのか…それは…今は明かす事は出来ません。だけど…どうしてここにやってきたのかは答えることが出来ます。何故ここに着たのか?そんなの決まってるじゃないですかっ!ユベール様が心配だったからですっ!」
「シルビア…ッ!」
ユベールは驚いたように私を見た。
「ユベール様、こんな地下牢にそんな薄着では今に死んでしまいますっ!ユベール様はキリアン様を殺すはずありません!きっと何かの間違いです!私が何とかしますので、それまではどうか耐えて下さい、私色々持ってきたんですよ!」
リュックを床に置き、持参してきた毛布やマフラー、手袋を次々と取り出し、鉄格子越しにユベールに押し付けるように手渡すと言った。
「ユベール様っ!頑張って下さいっ!必ず、必ずここから出してもらえるように私がアンリ王子を説得しますからっ!」
気付けば目に涙が浮かんでいた。こんなに寒い地下牢…いくら強靭なユベールだってそう長くは持たないかも知れない…!そう思うと泣けてきた。
「!」
ユベールの目が大きく見開かれた。
「シルビア…お前、何故そこまで俺に…?」
「それは…」
カツーン
カツーン
言いかけた時、足音が近付いて来た―。
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