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5-4 11回目の「死」の記憶
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その朝、王宮に激震が走った―。
コンコンコンコン
眠っていると、突然扉が激しくノックされる音で目が覚めた。時計を見るとまだ時刻は午前6時だった。
「シルビア様、起きて下さいっ!大変ですっ!」
扉の外で私のメイドになったリンの声が聞こえて来た。
「い、今起きるわ!リンは部屋へ入って!」
慌ててて飛び起き、扉に向かって声を掛けると、すぐにドアが開かれた。リンは部屋に入るなり、駆け寄ってくると言った。
「た、た、大変でございますっ!キリアン様が‥キリアン様が…っ!」
「落ち着いて、リン。キリアン様がどうしたの?」
「は、はい!実はキリアン様が殺されたのですっ!」
「…え?」
余りの突拍子もない言葉に私は思考が止まってしまった。嘘…。あのキリアンが殺された?昨夜ユベールと会って3人で話をしたばかりなのに?
「ま、まさか…嘘よね?」
「こんな嘘つけるはずありませんっ!それどころか、ユベール様がキリアン様を殺害した犯人とされ、捕らえられてしまったのです!」
「えっ?!ユベール様がっ?!」
そんな…!過去12回のループの中で、こんな展開は一度も無かった。過去私が繰り返してきた歴史の中では、7月6日まではアンリ王子の婚約者選びの試験を受けながら何事も無く平穏に過ごして来た。その中ではキリアンとの出会いも無かったし、ましてやユベールが捕らえられてしまった事など一度も無かった。
「アンリ王子は?アンリ王子は何と言ってるのっ?!」
「それが…昨夜から姿が見えないそうで‥」
「とにかく、着替えるわ!手伝ってくれる?!」
「はい!」
そしてわたしはリンの助けをかりながら急いで着がえを始めた―。
「リン、ユベール様は捕らえられたと言っていたけど‥今何所にいるの?」
「はい。地下牢に閉じ込められているそうです」
「地下牢…」
私はその地下牢を知っていた。何故なら11回目の死は地下牢で迎えたから―。
****
11回目の死‥あれは本当に理不尽な死だった。毎回そうであったように私は7月6日にアンリ王子の婚約者に選ばれた。そして迎えた7日の朝、いきなり眠っている所を王宮の騎士達が踏み込んできたのだ。驚く私に1人の騎士‥ユベールが告げた。私に2つの嫌疑がかかっていると。1つは選定試験の際に不正を働いた事、そしてもう1つはジュリエッタに毒を持って暗殺を企てたと言う事だった。何故、私がジュリエッタの暗殺に関わっていると根も葉もない噂が立ったのかは分からないが、とにかく身に覚えのない罪で私は地下牢に投獄されてしまった。
その地下牢は夏だと言うのにとても寒く、寝間着のまま連れて来られてしまった私に取っては耐え難い寒さだった。与えられたブランケット1枚を体に巻き付け、アンリ王子がやって来るのを私はひたすら待った。
どのくらい待ち続けただろうか…。
カツーン
カツーン
カツーン
響き渡る足音が次第に大きくなってくる。そして、鉄製の格子扉の奥に甲冑姿の人物が現れた。頭にもマスクをかぶり、顔が全く見えない。その人物は背中にさしてある剣をスラリと引き抜くと物言わず扉に剣を振り下ろした。
ガチャーンッ!!
「キャアッ!」
鍵が叩ききられ、激しい音を立てて鍵が床に転がる。
キイィ~…
さび付いた格子扉を騎士は剣を握りしめたまま牢屋の中に入って来た。
この人は誰?もしかして…私を助けに来てくれたの?だが…次の瞬間、私の期待はもろくも崩れ去っていく。
騎士は剣を振りかざし…
バサッ!!
気付けば私は袈裟がけに切られていた。
プシュウウウッ!!
途端に身体から激しく血が噴き出る。痛みは無かった。痛みと言うよりは激しい熱を感じた。
ドサッ…
冷たい石畳の上に倒れる私。
ゴーン
ゴーン
ゴーン
ああ…また鐘の音が聞こえる…。
こうして私は地下牢の中で誰かも分らない相手に殺された―。
コンコンコンコン
眠っていると、突然扉が激しくノックされる音で目が覚めた。時計を見るとまだ時刻は午前6時だった。
「シルビア様、起きて下さいっ!大変ですっ!」
扉の外で私のメイドになったリンの声が聞こえて来た。
「い、今起きるわ!リンは部屋へ入って!」
慌ててて飛び起き、扉に向かって声を掛けると、すぐにドアが開かれた。リンは部屋に入るなり、駆け寄ってくると言った。
「た、た、大変でございますっ!キリアン様が‥キリアン様が…っ!」
「落ち着いて、リン。キリアン様がどうしたの?」
「は、はい!実はキリアン様が殺されたのですっ!」
「…え?」
余りの突拍子もない言葉に私は思考が止まってしまった。嘘…。あのキリアンが殺された?昨夜ユベールと会って3人で話をしたばかりなのに?
「ま、まさか…嘘よね?」
「こんな嘘つけるはずありませんっ!それどころか、ユベール様がキリアン様を殺害した犯人とされ、捕らえられてしまったのです!」
「えっ?!ユベール様がっ?!」
そんな…!過去12回のループの中で、こんな展開は一度も無かった。過去私が繰り返してきた歴史の中では、7月6日まではアンリ王子の婚約者選びの試験を受けながら何事も無く平穏に過ごして来た。その中ではキリアンとの出会いも無かったし、ましてやユベールが捕らえられてしまった事など一度も無かった。
「アンリ王子は?アンリ王子は何と言ってるのっ?!」
「それが…昨夜から姿が見えないそうで‥」
「とにかく、着替えるわ!手伝ってくれる?!」
「はい!」
そしてわたしはリンの助けをかりながら急いで着がえを始めた―。
「リン、ユベール様は捕らえられたと言っていたけど‥今何所にいるの?」
「はい。地下牢に閉じ込められているそうです」
「地下牢…」
私はその地下牢を知っていた。何故なら11回目の死は地下牢で迎えたから―。
****
11回目の死‥あれは本当に理不尽な死だった。毎回そうであったように私は7月6日にアンリ王子の婚約者に選ばれた。そして迎えた7日の朝、いきなり眠っている所を王宮の騎士達が踏み込んできたのだ。驚く私に1人の騎士‥ユベールが告げた。私に2つの嫌疑がかかっていると。1つは選定試験の際に不正を働いた事、そしてもう1つはジュリエッタに毒を持って暗殺を企てたと言う事だった。何故、私がジュリエッタの暗殺に関わっていると根も葉もない噂が立ったのかは分からないが、とにかく身に覚えのない罪で私は地下牢に投獄されてしまった。
その地下牢は夏だと言うのにとても寒く、寝間着のまま連れて来られてしまった私に取っては耐え難い寒さだった。与えられたブランケット1枚を体に巻き付け、アンリ王子がやって来るのを私はひたすら待った。
どのくらい待ち続けただろうか…。
カツーン
カツーン
カツーン
響き渡る足音が次第に大きくなってくる。そして、鉄製の格子扉の奥に甲冑姿の人物が現れた。頭にもマスクをかぶり、顔が全く見えない。その人物は背中にさしてある剣をスラリと引き抜くと物言わず扉に剣を振り下ろした。
ガチャーンッ!!
「キャアッ!」
鍵が叩ききられ、激しい音を立てて鍵が床に転がる。
キイィ~…
さび付いた格子扉を騎士は剣を握りしめたまま牢屋の中に入って来た。
この人は誰?もしかして…私を助けに来てくれたの?だが…次の瞬間、私の期待はもろくも崩れ去っていく。
騎士は剣を振りかざし…
バサッ!!
気付けば私は袈裟がけに切られていた。
プシュウウウッ!!
途端に身体から激しく血が噴き出る。痛みは無かった。痛みと言うよりは激しい熱を感じた。
ドサッ…
冷たい石畳の上に倒れる私。
ゴーン
ゴーン
ゴーン
ああ…また鐘の音が聞こえる…。
こうして私は地下牢の中で誰かも分らない相手に殺された―。
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