命がけの恋~13回目のデスループを回避する為、婚約者の『護衛騎士』を攻略する

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5-2 ユベールとキリアン

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「半月ぶりだな、シルビア。元気だったか?」

Yシャツにボトムスというラフな姿のユベールは腰に剣すらさしていなかった。
びっくりする位穏やかな声と顔で私を見下ろすユベールにどう対応してよいか分らず戸惑っていると、彼は眉を潜めた。

「何だ?その呆然とした顔は?ひょっとして尋ねて迷惑だったか?」

少しムッとした顔でユベールは私を見た。

「え?あ、あの…そんなつもりは無かったのです。ただ明日帰って来ると聞かされていたので、少し戸惑っただけです」

「え?俺が帰って来る話…知っていたのか?」

ユベールが意外そうな顔をした。

「はい、キリアン様に聞きました」

「何でキリアンに…まさか、シルビア。魔石探しの仲間はあいつにしたのか?」

「え?ええ。そうですけど…?」

するとユベールの態度が豹変し、突然私の両肩を掴んできた。何故?何故ユベールはこんなに怒っているのだろう?

「お前!あんな男を仲間にしたのかっ?!」

「え?!あ、あんな男って…?」

キリアンのどこが悪いのだろう?明るく、社交的なタイプの男性だと思うけれども。けど…ユベールを嫌っているように思えた。

「よりにもよってあんな男を…」

ユベールは溜息をつくと私の肩から手を下ろし、前髪をかき上げてジロリと私を睨みつけた。

「あの…ひょっとすると私の事、酷く怒っていますか?」

「ああ。怒っている。シルビア、お前が誰を仲間にするかはお前の自由だ。だが人を見る目が無さすぎる。キリアンだけは絶対に駄目だ。あいつは…」

その時、闇に包まれた廊下の奥で声が聞こえた。

「何だい?ユベール。帰ってきたばかりで慌てて何処へ行ったかと思えば…シルビアに会いに来てたのかい?しかも俺の悪口でも話していたのかな?」

現れたのは何とキリアンだった。

「キリアン…」

ユベールは何故かキリアンから私をかばうように前に立ちはだかった。

「お前…後をつけてきたのか?」

「ああ、まあな。何しろお前の部屋は俺の隣なんだから。帰ってきて早々に部屋を出たから何処へ行くのかと思ってつけてみたら…」

そしてキリアンはユベールの肩越しにチラリと私を見ると言った。

「まさかシルビアに会う為だったとはね。そんなに早く会いたかったのかい?」

え…?まさかユベールが私に…?ユベールの大きな背中を見て胸が高鳴ったその時…。

「違う、まだ残っているか心配だったから様子を見に来ただけだ。魔石探しに妥協して帰ったりしていないか確認しに来たんだ」

「!」

しかし…ユベールの言葉は私を失望させるものだった。思い上がっていた。ユベールが少しは私の事を気にかけてくれているかと思っていただけに…。思わずうつむいてしまった。するとキリアンが言った。

「あ~あ…可哀想に。シルビア、ショックを受けてるよ」

私に背中を見せていたユベールは私の表情に気付いていない。キリアンに指摘されて振り向いたユベールと目が合ってしまった。

「!シルビア…」

「ユベール様、私は…」

口を開きかけた時、キリアンが言った。

「ユベール、君はアンリ王子の旅行に同行していたから当然知らないだろうけど、彼女は本当に魔石探しを頑張っていたんだよ。アンリ王子の期待に応えるためにね。いつも終わる時間には真っ青になって、体力も激しく消耗して…最初のうちは立っていることも出来ないくらいに」

「何だって…?!お前、そんなに無理していたのか?!」

ユベールは驚いた様子で私を見た。

「は、はい…」

「でも仕方ないだろう?アンリ王子がシルビアに無茶ぶりの注文をつけるからさ。頑張るしか無いだろう」

「シルビア…魔石は何個集まったんだ?」

「恐らく80個は…」

「そうか、ならもう今月は無理するな。それだけ集まっているならアンリ王子の指定した基準には達しているのだから」

そしてキリアンを睨みつけた。

「何故、シルビアにそんなに無理をさせた?」

「待って下さい!何故キリアン様を責めるのですか?私が勝手に探しただけですよ?」

するとキリアンが言った。

「まぁ、確かに不測の事態に備えて魔石は沢山集めておいた方が良いとはアドバイスしたからね。何しろ彼女は初日に毒蛇に噛まれて死にかけたくらいだから」

「!」

ユベールの肩が大きく跳ね…私の方を振り向いた。

その瞳は動揺のためか、大きく震えていた―。


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