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5-1 ある会話

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 あの日以来、私は死にかける程の事件に巻き込まれることは無かった。魔石探しは相変わらず体力の消耗が激しかったが、魔石の力にさらされる事にも身体が少しずつ慣れて来たのか、以前よりは多少身体は楽になっていた。そしてキリアンについても同じことが言えた。仲間になった初日は彼が私の傍から離れた途端、過去に命を落とした原因のひとつである毒蛇に噛まれた事で、不信感を抱いていた。けれどそれ以降は、魔石を奪おうとする者達を守ってくれたので、彼に対する疑念も徐々に消えて行った。


 魔石探しを始めて半月が経過した頃―

「そう言えば、知ってるかい?シルビア」

2人でダイニングルームで昼の食事を取っていた時の事、不意にキリアンが声を掛けて来た。

「何ですか?」

スプーンでスープをすくって飲みながら返事をした。

「明日、アンリ王子たちが城に帰って来るって話さ」

「!」

ユベールが…明日帰って来る…。だけど…。

「そうですか」

私は何食わぬ顔でサラダを口に入れた。

「あれ?それだけの反応なのかい?」

キリアンはフォークに刺したウィンナーを口に入れるとおどけた顔をした。

「それだけ?とは?」

「もっと喜ぶかと思ったけどな」

「別に喜ぶことはありません。アンリ王子が城に帰って来ても、私のする事は決まっていますから」

第一…私はもうユベールを自分のパートナーにする事は出来ないのだから。何故ならアンリ王子が許さないだろうし、それにユベールの好きな女性はジュリエッタなのだから。このまま距離を置いた方がいいのだ。私は…ユベールの信頼を得る事が出来たと思っている。過去12回のループに置いて、ここまで親しくなれたのは今回が初めてだから。なので今なら彼は私を殺す事は無いだろう。
多分、私はユベールを攻略する事が出来たはず。私の事を殺すには惜しい人間と思ってくれているに違いない。私はユベールが期待を裏切らないと信じている。

「ふ~ん…随分そっけないんだな。アンリ王子の事を言ったつもりはないのに」

キリアンはテーブルの上に乗っているフルーツに手を伸ばすと言った。

「…」

私は返事をしなかった。キリアンが何の話をしているのかは分かり切っていた。

「それじゃ、俺はこのまま引き続き魔石探しのパートナーを続けてもいいんだね?」

「ええ、キリアン様のご迷惑でなければお願いします」

もう今更次のパートナーを見つける気にもなれなかった。

「迷惑なんて思ってもいないさ。これからもよろしく、シルビア」

キリアンが右手を差し出して来たので、私も右手を差し出すとその手を強く握りしめられた―。


****

午後5時―

魔石探しの終わりの時間になった。

「はあ、はあ…」

荒い息を吐きながら廊下の壁に寄りかかり、私は言った。

「今日も…1日お付き合い頂き、ありがとうございました」

キリアンは腰のベルトに括り付けた袋の中に魔石を入れると言った。

「いや、俺は平気さ。それよりもシルビアの方が大変じゃないか。」

「大丈夫です…少し休めば体力も戻って来るので」

「そうなのかい?なら…いいけど」

「ところで今、魔石は何個集まっていますか?」

「そうだな…正確な数はまだ数えていないけど、多分80個はあると思うよ?」

「80ですか?」

「ああ。そうだよ」

「良かった…」

これで少しはゆっくり出来るかもしれない。

「シルビア、それじゃまた明日な」

「はい。また明日よろしくお願いします」

そして私とキリアンはその場で別れた―。


****

22時―

いつもの日課で私は自室で日記を書いていた。デスループを回避するために毎日日記を書かさず付けていたからだ。

「う~ん…」

日記を書き終え、伸びをした時ノックの音がした。

コンコン

「え…?」

誰だろう?こんな時間に…?

「誰ですか?」

扉の前に立ち、声を掛けた。

「俺だ、ユベールだ」

「えっ?!」

ガチャ

驚いて扉を開けた。するとそこには懐かしいユベールが半月ぶりに私の目の前に立っていた―。







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