69 / 107
4−8 甘くないアンリ王子
しおりを挟む
「シルビア、君はパートナーはユベールだけだったよね?」
アンリ王子は分かりきっている事を尋ねてくる。
「はい、そうです」
「何故ユベール以外他に仲間を作っておかなかったんだい?君は話によると魔石を見つけることは出来ても触れることが出来ないそうじゃないか。ひょっとして君は絶対にユベールは魔石探しの期間、自分から離れることは無いと考えていたんじゃないかい?」
「アンリッ!」
ユベールが声を荒げる。一体アンリ王子は何が言いたいのだろう?
「いいえ、そんな事はありません。ユベール様は本来アンリ王子の専属護衛騎士の方ですから…アンリ王子様から護衛騎士に戻るように言われれば去って行くことは分かりきっていました」
「ふ~ん…それじゃ、ひょっとすると君はユベールが外れた後は魔石探しをやめて、このテストに落ちるつもりだったんじゃないのかい?」
「え?」
アンリ王子の言葉にドキリとした。
「そ、それは…」
「シルビア、そうなのか?」
ユベールが驚いた顔で私を見た。
「…すぐに答えない、と言う事は落ちるつもりだったんだね?」
アンリ王子の声は…酷く冷たく聞こえた。
確かにその考えもある。一応町で私を守ってくれそうな傭兵を探すつもりではいたけれども、仮に見つからなかった場合…私は魔石を1人では集める事が出来ないと言って脱落する方法もある。だけど…本当はそれはしたくなかった。何故なら理由はユベールだ。私はいつの間にか彼を好きになっていたから。許されるなら…出来るだけ長く城にとどまりたいとすら思っていた。
「そんな!本当なの?!シルビアさん!」
突然ジュリエッタが私の前に歩み寄ると、肩を掴んできた。
「酷いじゃない!最後まで手を抜かない約束だったでしょう?アンリ王子の婚約者が貴女になって貰わないと困るのよ!だって貴女だけなのよ!アンリ王子の結婚相手に興味が無いのは…!貴女が選ばれてくれないと私は彼の傍にいられないのよ?!」
そして私の肩を激しく揺さぶる。
「やめろ!ジュリエッタッ!」
ユベールが止めに入ってきた。
「ユベール!貴方からも言ってよ!勝手に魔石探しをやめるなって!貴方は私の言う事なら何でも聞いてくれのるでしょう?!」
涙ぐむジュリエッタにユベールの顔が辛そうに歪み、チラリと私を見る。
「シルビア…」
ユベールが口を開きかけた時、アンリ王子が私に言った。
「シルビア、僕たちのジュリエッタを泣かせないでくれないかな?君は僕たちがどれだけジュリエッタを大切に思っているか知ってるんだろう?君なら絶対に僕に興味を持たないと信頼しているからこそ、優遇してあげているんだよ?本来ならユベールをパートナーに指名しても却下するところだけど…シルビアだからこそ、短い間だったけれども彼を貸してあげたんだからね」
僕達…その言葉に驚くほど胸がズキリとなった。…その中には当然ユベールが含まれるのだ。ここではジュリエッタこそが2人にとっての本当の姫なのだから。
「は、はい…申し訳ございませんでした」
わたしはすぐに謝罪した。けれども…今の言い方ではアンリ王子たちが旅行から戻ったとしてもユベールを再度仲間にする事はもう許されないのかもしれない。
ズキンズキン
この訳の分からない胸の痛みは何だろう?アンリ皇子に脱落する事を許して貰えないから?ユベールにとって大切な女性はジュリエッタだから?もう…ユベールを魔石探しの仲間にする事が出来ないから…?いや、多分それらすべての事が胸を痛める理由なんだ‥‥。
「おい、アンリ。さっきから黙っていれば・・・・!」
するとそれまで黙っていたユベールが口を挟んできた。
「ユベール。君は僕に歯向かえない立場に置かれている事を忘れていないかい?」
「!」
ユベールの顔が一瞬青ざめ、私を見た。そして目が合うと視線をそらしてしまった。
「シルビア」
アンリ王子は私に近付くと言った。
「今日1日猶予を与えたんだから‥‥ユベールの代わりになる仲間を見つけるんだよ?分ったね」
「は、はい…分りました」
すると私の返事に満足したのかアンリ王子がニッコリ笑みを浮かべると言った。
「うん。そうそう。素直な女性は好きだよ」
そしてすぐに私に背を向けるとジュリエッタとユベールに声をかける。
「さあ、夕方にはここを出発するから準備をしに行こう」
「ええ」
「ああ…」
ジュリエッタとユベールが返事をする。そして3人は私を振り返ることも無く…部屋を出て行った。
私1人を残して―。
アンリ王子は分かりきっている事を尋ねてくる。
「はい、そうです」
「何故ユベール以外他に仲間を作っておかなかったんだい?君は話によると魔石を見つけることは出来ても触れることが出来ないそうじゃないか。ひょっとして君は絶対にユベールは魔石探しの期間、自分から離れることは無いと考えていたんじゃないかい?」
「アンリッ!」
ユベールが声を荒げる。一体アンリ王子は何が言いたいのだろう?
「いいえ、そんな事はありません。ユベール様は本来アンリ王子の専属護衛騎士の方ですから…アンリ王子様から護衛騎士に戻るように言われれば去って行くことは分かりきっていました」
「ふ~ん…それじゃ、ひょっとすると君はユベールが外れた後は魔石探しをやめて、このテストに落ちるつもりだったんじゃないのかい?」
「え?」
アンリ王子の言葉にドキリとした。
「そ、それは…」
「シルビア、そうなのか?」
ユベールが驚いた顔で私を見た。
「…すぐに答えない、と言う事は落ちるつもりだったんだね?」
アンリ王子の声は…酷く冷たく聞こえた。
確かにその考えもある。一応町で私を守ってくれそうな傭兵を探すつもりではいたけれども、仮に見つからなかった場合…私は魔石を1人では集める事が出来ないと言って脱落する方法もある。だけど…本当はそれはしたくなかった。何故なら理由はユベールだ。私はいつの間にか彼を好きになっていたから。許されるなら…出来るだけ長く城にとどまりたいとすら思っていた。
「そんな!本当なの?!シルビアさん!」
突然ジュリエッタが私の前に歩み寄ると、肩を掴んできた。
「酷いじゃない!最後まで手を抜かない約束だったでしょう?アンリ王子の婚約者が貴女になって貰わないと困るのよ!だって貴女だけなのよ!アンリ王子の結婚相手に興味が無いのは…!貴女が選ばれてくれないと私は彼の傍にいられないのよ?!」
そして私の肩を激しく揺さぶる。
「やめろ!ジュリエッタッ!」
ユベールが止めに入ってきた。
「ユベール!貴方からも言ってよ!勝手に魔石探しをやめるなって!貴方は私の言う事なら何でも聞いてくれのるでしょう?!」
涙ぐむジュリエッタにユベールの顔が辛そうに歪み、チラリと私を見る。
「シルビア…」
ユベールが口を開きかけた時、アンリ王子が私に言った。
「シルビア、僕たちのジュリエッタを泣かせないでくれないかな?君は僕たちがどれだけジュリエッタを大切に思っているか知ってるんだろう?君なら絶対に僕に興味を持たないと信頼しているからこそ、優遇してあげているんだよ?本来ならユベールをパートナーに指名しても却下するところだけど…シルビアだからこそ、短い間だったけれども彼を貸してあげたんだからね」
僕達…その言葉に驚くほど胸がズキリとなった。…その中には当然ユベールが含まれるのだ。ここではジュリエッタこそが2人にとっての本当の姫なのだから。
「は、はい…申し訳ございませんでした」
わたしはすぐに謝罪した。けれども…今の言い方ではアンリ王子たちが旅行から戻ったとしてもユベールを再度仲間にする事はもう許されないのかもしれない。
ズキンズキン
この訳の分からない胸の痛みは何だろう?アンリ皇子に脱落する事を許して貰えないから?ユベールにとって大切な女性はジュリエッタだから?もう…ユベールを魔石探しの仲間にする事が出来ないから…?いや、多分それらすべての事が胸を痛める理由なんだ‥‥。
「おい、アンリ。さっきから黙っていれば・・・・!」
するとそれまで黙っていたユベールが口を挟んできた。
「ユベール。君は僕に歯向かえない立場に置かれている事を忘れていないかい?」
「!」
ユベールの顔が一瞬青ざめ、私を見た。そして目が合うと視線をそらしてしまった。
「シルビア」
アンリ王子は私に近付くと言った。
「今日1日猶予を与えたんだから‥‥ユベールの代わりになる仲間を見つけるんだよ?分ったね」
「は、はい…分りました」
すると私の返事に満足したのかアンリ王子がニッコリ笑みを浮かべると言った。
「うん。そうそう。素直な女性は好きだよ」
そしてすぐに私に背を向けるとジュリエッタとユベールに声をかける。
「さあ、夕方にはここを出発するから準備をしに行こう」
「ええ」
「ああ…」
ジュリエッタとユベールが返事をする。そして3人は私を振り返ることも無く…部屋を出て行った。
私1人を残して―。
10
お気に入りに追加
337
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。
シナリオ通りなら、死ぬ運命。
だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい!
騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します!
というわけで、私、悪役やりません!
来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。
あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……!
気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。
悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる