命がけの恋~13回目のデスループを回避する為、婚約者の『護衛騎士』を攻略する

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
66 / 107

4-5 3人の令嬢達

しおりを挟む
 午前9時―

魔石探しのテストに振り分けられた私達は全員大広間に集められていた。彼女たちはグループごとに集まり、アンリ王子が現れるのを待っていた。

それにしても…。
私は彼女たちの様子を伺った。それだけですぐに分ってしまった。どのグループが勝ち残り、どのグループがこの場を去るのかという事が。集まった彼女たちの顔を見ればそれはもう一目瞭然であった。

そして何故かまだユベールは姿を現していない。魔石は全て彼に預けてある。一体ユベールは何所にいるのだろう?辺りをキョロキョロ探していると、不意に背後から声を掛けられた。

「御機嫌よう、シルビア様」

振り向くと、そこに立っていたのは侯爵令嬢のイメルダだった。背後にはマグダレナとロシータの姿も見える。

「あ…ご、御機嫌よう。皆様」

「どうですか?シルビア様。本日は第1回目の選定の日ですけど?」

イメルダが意地悪そうな顔で尋ねて来た。背後の2人もクスクス笑って私を見ている。

「ええ。そうですね」

「自信のほどはどうですか?」

ロシータが尋ねて来た。

「さあ、どうでしょう」

ここで正直に言うのは何故かまずい気がしたので答えない事にした。

「何個集まったのですか?魔石は」

マグダレナが堂々と尋ねて来た。

「申し訳ありませんが、今申し上げるつもりはありません」

いやだ、こんな人達と関わりたくない。返事をしながら思った。

「皆の前で結果発表される前に私達で互いに魔石を見せ合いませんかしら?」

イメルダが提案してきたが、私はその申し出を断った。

「すみませんが、それは出来ません」

「あら、何故かしら?」

ロシータが不満げに腕組みをしながら尋ねて来た。

「それは私は魔石を持っていないからです」

「まあ!持っていないですって?!嘘をついてはいけなわ!早くお見せなさい!」

マグダレナがわざと大きな声を出し、周りの視線が私達に集中し始めた。ひょっとするとここで騒ぎを起こして、わざと私に魔石を出させ奪うつもりなのではないだろうか?だが、魔石を持っているのは私ではなくユベールなのだ。そして肝心のユベールは今、ここにはいない。私は困ってしまった。何とかこの場を逃げたくても、ここから離れる事が出来ないのに…。

「持っていない物を見せろと言われても…」

その時―

「お前達、俺の仲間に何をしている?」

不意に怒気を含んだ声が聞こえ、気付けばユベールが私の前に立ち、イメルダ達と対峙していた。

「ユベール様…!」

「大丈夫か?シルビア」

私の方を振り向いてユベールは声を掛けた。その声は…いつもより優し気に感じた。

「は、はい。大丈夫です」

するとユベールは私を見てフッと口元に笑みを浮かべた。え?見間違えでは無いだろうか?
しかし次の瞬間、ユベールはイメルダ達の方を振り向くと言った。

「恥ずかしいと思わないのか?複数人で1人を責めたてる行為が」

「べ、別に私達は責めたてたりなどしていないわ!」

ロシータが顔を真っ赤にさせたその時…。

「やあ、僕の婚約者候補たち。お待たせしたね!これから魔石のお披露目を始めるよ。」

いつの間に現れたのか、アンリ王子がジュリエッタを伴って扉を背に立っていた。

「行きましょう」

イメルダはロシータとマグダレナに声を掛ける。すると彼女たちは一度だけ私を睨み付けると、他の令嬢達と同様にアンリ王子の元へと向かった。

「全く、あさましい奴らだ」

ユベールは忌々し気に言うと私の方を振り向いた。

「ありがとうございます。ユベール様。」

「大丈夫だったか?」

「はい、大丈夫です。私は…いつもユベール様に助けられていますね。すみません」

頭を下げた。

「別に謝る必要は無い…それじゃ俺たちも行こう」

「はい」

そしてユベールは私に背を向けると、アンリ王子の元へ行く。

その後を私も追った―。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

いつかの空を見る日まで

たつみ
恋愛
皇命により皇太子の婚約者となったカサンドラ。皇太子は彼女に無関心だったが、彼女も皇太子には無関心。婚姻する気なんてさらさらなく、逃げることだけ考えている。忠実な従僕と逃げる準備を進めていたのだが、不用意にも、皇太子の彼女に対する好感度を上げてしまい、執着されるはめに。複雑な事情がある彼女に、逃亡中止は有り得ない。生きるも死ぬもどうでもいいが、皇宮にだけはいたくないと、従僕と2人、ついに逃亡を決行するのだが。 ------------ 復讐、逆転ものではありませんので、それをご期待のかたはご注意ください。 悲しい内容が苦手というかたは、特にご注意ください。 中世・近世の欧風な雰囲気ですが、それっぽいだけです。 どんな展開でも、どんと来いなかた向けかもしれません。 (うわあ…ぇう~…がはっ…ぇえぇ~…となるところもあります) 他サイトでも掲載しています。

悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています

窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。 シナリオ通りなら、死ぬ運命。 だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい! 騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します! というわけで、私、悪役やりません! 来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。 あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……! 気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。 悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください

むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。 「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」 それって私のことだよね?! そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。 でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。 長編です。 よろしくお願いします。 カクヨムにも投稿しています。

捨てた騎士と拾った魔術師

吉野屋
恋愛
 貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

処理中です...