62 / 107
4−1 選定日前日
しおりを挟む
明日はいよいよ魔石探しが始まって最初の選定日―
「またか、お前らで今日で5組目だな」
ユベールが床の上に倒れた3人の男達の前で、震えている4人の令嬢達に言う。彼女たちは全員真っ青な顔で震えているだけで一言も声を発することが出来ない。それは当然だろう、床の上に転がっている男達はつい先程一斉に魔石を奪う為にユベールに向かって襲ってきたのだ。しかし、ユベールは剣を抜く事も無く一瞬で男達を倒してしまったのだから。
「明日が選定の日だから必死なんだな。見境なく襲ってくるのだから、お前たち恐らく魔石を一つも持っていないんじゃないか?」
ユベールが不敵な笑みを浮かべると令嬢達はビクッと肩を震わせた。どうやら図星のようだ。
「全く…俺たちを襲う暇があるなら魔石探しに力を入れたほうがいいんじゃないか?」
すると1人の令嬢がついに声を上げた。
「な、何よ!私達だけじゃ見つけられないから、あんたたちを襲ったんじゃない!」
「そうよ!きっとさぞかし魔石が集まったんでしょうね?」
「少し位分けてくれたっていいでしょう?!」
「そ、そうだわ!お金を払うから分けて頂戴よ!」
ついにはとんでもないことを言い出す令嬢まで表れた。するとその言葉にユベールの顔つきが変わった。
「おい、そこの女。一体今何を言った?!」
何とユベールは剣を抜くと今の台詞を言った令嬢に剣を向けた。
「ヒッ!」
令嬢は切っ先を喉元に向けられて悲鳴を上げた。
「「「キャ~ッ!!」」」
残りの3人も悲鳴を上げる。
「ユベール様、落ち着いて下さいっ!」
私は必死でユベールを止めた。
「何故止める?」
ユベールが振り返ってこちらを見る。
「彼女たちを傷付けるおつもりですか?相手は女性ですよ?」
「だから何だ?こいつらは男を使ってお前を襲わせようとしたんだぞ?」
ユベールは剣を向けたまま言う。
「それでも駄目です!」
そして私は令嬢達を見ると言った。
「早く!行って下さい!ユベール様の気が変わらないうちに!」
「「「「…」」」」
令嬢達は青ざめた顔でこちらを見ていたが、私の言葉に慌てて駆け出して行った。
「全く…最後の女はとんでもない奴だったな。でもこれであいつらはもう襲って来ないだろう?多分な…」
ユベールは剣を収めながら言う。
「ユベール様…でも本当にこんなやり方よろしいんですか?」
「何がだ?」
「こんな剣を向けて脅すようなやり方…ユベール様が悪者になってしまいますよ?」
「だが、これだけやっておけば多分あいつらはお前に恩義を感じるはずだろう?お前を直接襲ってくるようなことにはならないんじゃないか?最も…多分俺達を襲ってきた奴ら…明日でここから去るだろうな?何しろ全員魔石を持っていないようだったしな。明日…どれ位の令嬢が落とされるか見ものだ」
ユベールはニヤリと笑みを浮かべて言う。
「ところでユベール様、私達は今何個位魔石を持っているのでしょうか?」
「何だ、お前は自分で魔石の個数を把握していないのか?」
「は、はい…」
何しろ、私は魔石が放つ鐘の音を聞くだけで気分が悪くなってくるのだ。今となっては魔石から発せられる鐘の音を止めたい為に魔石を探しているようなものなのだから」
「俺達は全部で魔石を今52個持っている。多分一番持っているんじゃないか?やはりアンリ王子にルールを変更してもらった甲斐があったな?」
「そうですね」
新たに設けられたルールはこうである。格グループはそれぞれ魔石が隠されている場所を割り当てられる。そこには必ず同数の魔石が隠されている。自分たちは自分たちの持ち場で魔石を探すように言われたのだ。この方法に変更された時、令嬢達は歓喜したのだが…割り当てられた場所は何処も広く、そこから手のひらに乗るほどの大きさの魔石を探すのは用意なことでは無かったのである。なので令嬢達は魔石探しに難航していた。そして明日は第1回目の選定日で合否が決まる。魔石を一つも見つけることが出来なかった場合、ここを去らなければならない。そこで令嬢達は最終手段として魔石を所持する私達を襲って来たのであった。
その時―
ボーン
ボーン
ボーン
魔石探し終了の鐘が鳴り響いた。今日の魔石探しが終了したのだ。
「よし、終わったな。それじゃ、ここで解散だな」
「はい」
「夕食の席でまた会おう」
ユベールはそれだけ言うと去って行った―。
「またか、お前らで今日で5組目だな」
ユベールが床の上に倒れた3人の男達の前で、震えている4人の令嬢達に言う。彼女たちは全員真っ青な顔で震えているだけで一言も声を発することが出来ない。それは当然だろう、床の上に転がっている男達はつい先程一斉に魔石を奪う為にユベールに向かって襲ってきたのだ。しかし、ユベールは剣を抜く事も無く一瞬で男達を倒してしまったのだから。
「明日が選定の日だから必死なんだな。見境なく襲ってくるのだから、お前たち恐らく魔石を一つも持っていないんじゃないか?」
ユベールが不敵な笑みを浮かべると令嬢達はビクッと肩を震わせた。どうやら図星のようだ。
「全く…俺たちを襲う暇があるなら魔石探しに力を入れたほうがいいんじゃないか?」
すると1人の令嬢がついに声を上げた。
「な、何よ!私達だけじゃ見つけられないから、あんたたちを襲ったんじゃない!」
「そうよ!きっとさぞかし魔石が集まったんでしょうね?」
「少し位分けてくれたっていいでしょう?!」
「そ、そうだわ!お金を払うから分けて頂戴よ!」
ついにはとんでもないことを言い出す令嬢まで表れた。するとその言葉にユベールの顔つきが変わった。
「おい、そこの女。一体今何を言った?!」
何とユベールは剣を抜くと今の台詞を言った令嬢に剣を向けた。
「ヒッ!」
令嬢は切っ先を喉元に向けられて悲鳴を上げた。
「「「キャ~ッ!!」」」
残りの3人も悲鳴を上げる。
「ユベール様、落ち着いて下さいっ!」
私は必死でユベールを止めた。
「何故止める?」
ユベールが振り返ってこちらを見る。
「彼女たちを傷付けるおつもりですか?相手は女性ですよ?」
「だから何だ?こいつらは男を使ってお前を襲わせようとしたんだぞ?」
ユベールは剣を向けたまま言う。
「それでも駄目です!」
そして私は令嬢達を見ると言った。
「早く!行って下さい!ユベール様の気が変わらないうちに!」
「「「「…」」」」
令嬢達は青ざめた顔でこちらを見ていたが、私の言葉に慌てて駆け出して行った。
「全く…最後の女はとんでもない奴だったな。でもこれであいつらはもう襲って来ないだろう?多分な…」
ユベールは剣を収めながら言う。
「ユベール様…でも本当にこんなやり方よろしいんですか?」
「何がだ?」
「こんな剣を向けて脅すようなやり方…ユベール様が悪者になってしまいますよ?」
「だが、これだけやっておけば多分あいつらはお前に恩義を感じるはずだろう?お前を直接襲ってくるようなことにはならないんじゃないか?最も…多分俺達を襲ってきた奴ら…明日でここから去るだろうな?何しろ全員魔石を持っていないようだったしな。明日…どれ位の令嬢が落とされるか見ものだ」
ユベールはニヤリと笑みを浮かべて言う。
「ところでユベール様、私達は今何個位魔石を持っているのでしょうか?」
「何だ、お前は自分で魔石の個数を把握していないのか?」
「は、はい…」
何しろ、私は魔石が放つ鐘の音を聞くだけで気分が悪くなってくるのだ。今となっては魔石から発せられる鐘の音を止めたい為に魔石を探しているようなものなのだから」
「俺達は全部で魔石を今52個持っている。多分一番持っているんじゃないか?やはりアンリ王子にルールを変更してもらった甲斐があったな?」
「そうですね」
新たに設けられたルールはこうである。格グループはそれぞれ魔石が隠されている場所を割り当てられる。そこには必ず同数の魔石が隠されている。自分たちは自分たちの持ち場で魔石を探すように言われたのだ。この方法に変更された時、令嬢達は歓喜したのだが…割り当てられた場所は何処も広く、そこから手のひらに乗るほどの大きさの魔石を探すのは用意なことでは無かったのである。なので令嬢達は魔石探しに難航していた。そして明日は第1回目の選定日で合否が決まる。魔石を一つも見つけることが出来なかった場合、ここを去らなければならない。そこで令嬢達は最終手段として魔石を所持する私達を襲って来たのであった。
その時―
ボーン
ボーン
ボーン
魔石探し終了の鐘が鳴り響いた。今日の魔石探しが終了したのだ。
「よし、終わったな。それじゃ、ここで解散だな」
「はい」
「夕食の席でまた会おう」
ユベールはそれだけ言うと去って行った―。
10
お気に入りに追加
337
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。
シナリオ通りなら、死ぬ運命。
だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい!
騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します!
というわけで、私、悪役やりません!
来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。
あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……!
気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。
悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる