47 / 107
3−10 いつもと違う姿
しおりを挟む
11時―
部屋で身支度をしていると、ドアの向こうでノックの音が聞こえた。
コンコン
きっとユベールだ。立ち上がってドアに向かい、カチャリと開けるとやはりそこに立っていたのはユベールだった。けれど…。
「あ、あの…本当にユベール様ですよね?」
「何だ?当たり前だろう?何故そんな事を尋ねてくる?」
ユベールは首を傾げながら私を見る。
「だって…その格好…何か…」
思わずぞんざいな口の聞き方をしてしまい、慌てて口を押さえる!私ったら何て口を!私は伯爵家で相手は侯爵だと言うのに!
「も、申し訳ございませんでした!失礼な口の聞き方をしてしまって!」
慌てて頭を下げて謝罪する。
「まあ、いい。気にするな。それで俺の格好が何だ?」
「え、ええ。何というか…」
いつものユベールなら、濃紺の折り襟のダブルボタンのチュニックに腰にバックルを巻いている。濃紺のボトムスに真っ白なロングブーツ、そして黒いマントを羽織っている。けれど今、目の前に立つユベールは白いシャツに黒のダブルベストにボトムス、茶色の革靴という姿なのだ。
「い、いえ。服装がいつもと違うので…」
「城の外に出るのに、いつもと同じ王宮騎士の姿で出かけるわけにはいかないだろう?」
「言われてみればそうですね。でもいつもの騎士の姿も素敵ですが、その服装もお似合いです。格好いいですよ」
私は思った通りの感想を述べた。
ユベールは人目を引くほどの美青年だ。ただ無表情で常に仏頂面をしているので周囲から敬遠されがちだが、それさえなければさぞかし女性たちから人気が出るだろうう。
「…」
ユベールは何故か私の顔を凝視している。
「ユベール様?どうされましたか?」
「い、いや。何でも無い。ところで…お前はその格好で行くのか?」
「はい、そうですけど?」
何か変だろうか?今日の私の服装は薄水色の膝下丈のワンピースを着ている。
「それは普段着か?」
「いえ、一応外出着ですけど…」
ひょっとして地味過ぎたのだろうか?一応これでも持ってきた服の中では比較的おしゃれ着のつもりで持ってきたのだが、侯爵家のユベールから見れば冴えない服なのかもしれない。
「そうか、では行こう」
「はい、よろしくおねがいします」
こうして私とユベールは町へ向かうことになった。
「そう言えばここへ来る前に魔石探しをしている連中と鉢合わせした」
ユベールが話しかけてきた。
「まあ、そうなんですか?どうでしたか?皆さんの様子は?」
「ああ、全く魔石の場所が分からないのだろうな?闇雲に探しているようにしか見えなかった」
「そうなんですか…」
「その点、お前はすごいな」
ユベールがポツリと言った。
「え?」
「お前の魔力は本物だ。たいしたものだな」
信じられない。あのユベールが…誰かをほめるなんて…。思わずまじまじと彼を見つめてしまった。
「な、何だ?そんなにジロジロ見て…」
ユベールが視線をそらせた。
「す、すみません。不躾に見てしまって…」
そんな会話をしている内にいつの間にかもう私達は城の扉の前にきていた。扉を開けながらユベールが言った。
「シルビア、俺は馬車を持ってくるからお前はここで待っていろ」
「はい、分かりました」
そしてユベールは厩舎へと向かって歩いていく。そんな彼の後ろ姿を私は見守っていた―。
部屋で身支度をしていると、ドアの向こうでノックの音が聞こえた。
コンコン
きっとユベールだ。立ち上がってドアに向かい、カチャリと開けるとやはりそこに立っていたのはユベールだった。けれど…。
「あ、あの…本当にユベール様ですよね?」
「何だ?当たり前だろう?何故そんな事を尋ねてくる?」
ユベールは首を傾げながら私を見る。
「だって…その格好…何か…」
思わずぞんざいな口の聞き方をしてしまい、慌てて口を押さえる!私ったら何て口を!私は伯爵家で相手は侯爵だと言うのに!
「も、申し訳ございませんでした!失礼な口の聞き方をしてしまって!」
慌てて頭を下げて謝罪する。
「まあ、いい。気にするな。それで俺の格好が何だ?」
「え、ええ。何というか…」
いつものユベールなら、濃紺の折り襟のダブルボタンのチュニックに腰にバックルを巻いている。濃紺のボトムスに真っ白なロングブーツ、そして黒いマントを羽織っている。けれど今、目の前に立つユベールは白いシャツに黒のダブルベストにボトムス、茶色の革靴という姿なのだ。
「い、いえ。服装がいつもと違うので…」
「城の外に出るのに、いつもと同じ王宮騎士の姿で出かけるわけにはいかないだろう?」
「言われてみればそうですね。でもいつもの騎士の姿も素敵ですが、その服装もお似合いです。格好いいですよ」
私は思った通りの感想を述べた。
ユベールは人目を引くほどの美青年だ。ただ無表情で常に仏頂面をしているので周囲から敬遠されがちだが、それさえなければさぞかし女性たちから人気が出るだろうう。
「…」
ユベールは何故か私の顔を凝視している。
「ユベール様?どうされましたか?」
「い、いや。何でも無い。ところで…お前はその格好で行くのか?」
「はい、そうですけど?」
何か変だろうか?今日の私の服装は薄水色の膝下丈のワンピースを着ている。
「それは普段着か?」
「いえ、一応外出着ですけど…」
ひょっとして地味過ぎたのだろうか?一応これでも持ってきた服の中では比較的おしゃれ着のつもりで持ってきたのだが、侯爵家のユベールから見れば冴えない服なのかもしれない。
「そうか、では行こう」
「はい、よろしくおねがいします」
こうして私とユベールは町へ向かうことになった。
「そう言えばここへ来る前に魔石探しをしている連中と鉢合わせした」
ユベールが話しかけてきた。
「まあ、そうなんですか?どうでしたか?皆さんの様子は?」
「ああ、全く魔石の場所が分からないのだろうな?闇雲に探しているようにしか見えなかった」
「そうなんですか…」
「その点、お前はすごいな」
ユベールがポツリと言った。
「え?」
「お前の魔力は本物だ。たいしたものだな」
信じられない。あのユベールが…誰かをほめるなんて…。思わずまじまじと彼を見つめてしまった。
「な、何だ?そんなにジロジロ見て…」
ユベールが視線をそらせた。
「す、すみません。不躾に見てしまって…」
そんな会話をしている内にいつの間にかもう私達は城の扉の前にきていた。扉を開けながらユベールが言った。
「シルビア、俺は馬車を持ってくるからお前はここで待っていろ」
「はい、分かりました」
そしてユベールは厩舎へと向かって歩いていく。そんな彼の後ろ姿を私は見守っていた―。
10
お気に入りに追加
337
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。
シナリオ通りなら、死ぬ運命。
だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい!
騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します!
というわけで、私、悪役やりません!
来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。
あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……!
気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。
悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる