35 / 107
2-12 初めて手に入れた魔石
しおりを挟む
そこはだだっ広い、何も置かれていない部屋だった。クローゼットは愚か、椅子すら置かれていない。その様子を見てユベールが言った。
「おい、シルビア。本当にこんながらんどうの部屋に魔石があるのか?」
「はい…確かにあるはずです」
だってこの部屋に入った時から私の頭の中で響く鐘の音はますます大きくなっていくから。この音は…怖い。早く見つけて音を止めなければ…。私は必死に辺りを見渡して音の出所をさぐる。その時、壁に1枚の大きな額縁に飾られた絵画が目に入った。それは城を描いた風景画だった。鐘の鳴り響く音はその絵画から聞こえてくる。
「ユ、ユベール様…お、お願いがあります…」
「シルビア?どうした?顔色が悪いぞ?」
ユベールが私の異変に気付き、声を掛けてきた。
「わ、私の事は大丈夫です。それよりも…あの絵画を調べてきてもらますか?」
「え?あの絵を?一体…」
「ううっ!」
怖い、あの音が…!
とうとう私は立っていられなくなり床に膝をついてしまった。
「シルビアッ!くそっ‥!」
ユベールは絵画に向かって走り、額縁にふれたりと絵画を調べ始め…。
「あっ!」
突如声をあげた。そして少しの間、絵画に触れいているかと思えば不意にあの鐘の音がピタリと止まった。
「え…?音が止まった…?」
途端に気分が楽になり、立ち上がるとユベールがアンリ王子から預かった袋を手にこちらへ向かって歩いて来た。
「ユベール様…」
するとユベールが言った。
「あったぞ」
「え?」
「お前の言った通り、絵画を調べたら魔石が見つかった。絵画の一部が破けており、その中に魔石が入っていたのだ。見てみるか?」
ユベールが袋の中に手を入れようとしたので、慌てて止めた。
「いいえ、結構です!どうかその袋から魔石を出さないで下さい」
私は慌てて止めた。
「ああ、分った…。しかし、それにしても凄いな…お前は本当にあんな小さな魔石の隠し場所が分るのだな?しかも巧妙に隠された場所なのに…」
何所となくユベールの私を見る目が違う。そこには以前のような蔑みの視線が感じられなかった。
「ええ、どうやら私にも一つ位は才能があったみたいですね。では次の魔石を探しに行きましょう。ユベール様は魔石の袋が他の令嬢達に見つからないように隠し持っていて頂けますか?」
「ああ。分った」
ユベールは騎士の制服のポケットに袋をしまうと尋ねて来た。
「ところでシルビア。まだ顔色が悪いが…大丈夫なのか?」
「はい、もう大丈夫です。直に慣れると思いますから」
慣れる?本当にあの不気味に鳴り響く鐘の音に慣れる日が来るのだろうか?私は毎回あの鐘の音を聞きながら、苦しみと孤独の中で12回もの死を迎えてきたのに?けれどもユベールを安心させる為に私は嘘をついてしまった。
部屋を出て、再び魔石の隠し場所を捜し歩いていると、6人組のグループがこちらへ向かって歩いてくる姿があった。そしてそこのリーダーとみられる令嬢が私に言う。
「あら、貴女は確かアンリ王子に目を掛けて貰っている令嬢ね?生憎この先には魔石は無いわよ?空っぽのへやが並んでるだけだったもの。あれでは魔石を隠しようもないし探すまでも無いわ。さっさと別の場所を探したほうがいいわよ。捜索するだけ無駄な場所に貴重な時間を費やさない方が身の為よ」
するとユベールが言った。
「うるさい、お前達にどうこう言われる筋合いは無い。」
「ま、まあっ!こ、こっちは親切心で忠告してあげているのに…!勝手にすればいいわっ!」
その令嬢はカンカンに怒って、ユベールを睨み付けただけでなく私にまで刺すような視線を投げつけると去って行った。
やれやれ…ユベールのせいで、いらぬ怒りを買ってしまった。
私は心の中でため息をつくのだった―。
「おい、シルビア。本当にこんながらんどうの部屋に魔石があるのか?」
「はい…確かにあるはずです」
だってこの部屋に入った時から私の頭の中で響く鐘の音はますます大きくなっていくから。この音は…怖い。早く見つけて音を止めなければ…。私は必死に辺りを見渡して音の出所をさぐる。その時、壁に1枚の大きな額縁に飾られた絵画が目に入った。それは城を描いた風景画だった。鐘の鳴り響く音はその絵画から聞こえてくる。
「ユ、ユベール様…お、お願いがあります…」
「シルビア?どうした?顔色が悪いぞ?」
ユベールが私の異変に気付き、声を掛けてきた。
「わ、私の事は大丈夫です。それよりも…あの絵画を調べてきてもらますか?」
「え?あの絵を?一体…」
「ううっ!」
怖い、あの音が…!
とうとう私は立っていられなくなり床に膝をついてしまった。
「シルビアッ!くそっ‥!」
ユベールは絵画に向かって走り、額縁にふれたりと絵画を調べ始め…。
「あっ!」
突如声をあげた。そして少しの間、絵画に触れいているかと思えば不意にあの鐘の音がピタリと止まった。
「え…?音が止まった…?」
途端に気分が楽になり、立ち上がるとユベールがアンリ王子から預かった袋を手にこちらへ向かって歩いて来た。
「ユベール様…」
するとユベールが言った。
「あったぞ」
「え?」
「お前の言った通り、絵画を調べたら魔石が見つかった。絵画の一部が破けており、その中に魔石が入っていたのだ。見てみるか?」
ユベールが袋の中に手を入れようとしたので、慌てて止めた。
「いいえ、結構です!どうかその袋から魔石を出さないで下さい」
私は慌てて止めた。
「ああ、分った…。しかし、それにしても凄いな…お前は本当にあんな小さな魔石の隠し場所が分るのだな?しかも巧妙に隠された場所なのに…」
何所となくユベールの私を見る目が違う。そこには以前のような蔑みの視線が感じられなかった。
「ええ、どうやら私にも一つ位は才能があったみたいですね。では次の魔石を探しに行きましょう。ユベール様は魔石の袋が他の令嬢達に見つからないように隠し持っていて頂けますか?」
「ああ。分った」
ユベールは騎士の制服のポケットに袋をしまうと尋ねて来た。
「ところでシルビア。まだ顔色が悪いが…大丈夫なのか?」
「はい、もう大丈夫です。直に慣れると思いますから」
慣れる?本当にあの不気味に鳴り響く鐘の音に慣れる日が来るのだろうか?私は毎回あの鐘の音を聞きながら、苦しみと孤独の中で12回もの死を迎えてきたのに?けれどもユベールを安心させる為に私は嘘をついてしまった。
部屋を出て、再び魔石の隠し場所を捜し歩いていると、6人組のグループがこちらへ向かって歩いてくる姿があった。そしてそこのリーダーとみられる令嬢が私に言う。
「あら、貴女は確かアンリ王子に目を掛けて貰っている令嬢ね?生憎この先には魔石は無いわよ?空っぽのへやが並んでるだけだったもの。あれでは魔石を隠しようもないし探すまでも無いわ。さっさと別の場所を探したほうがいいわよ。捜索するだけ無駄な場所に貴重な時間を費やさない方が身の為よ」
するとユベールが言った。
「うるさい、お前達にどうこう言われる筋合いは無い。」
「ま、まあっ!こ、こっちは親切心で忠告してあげているのに…!勝手にすればいいわっ!」
その令嬢はカンカンに怒って、ユベールを睨み付けただけでなく私にまで刺すような視線を投げつけると去って行った。
やれやれ…ユベールのせいで、いらぬ怒りを買ってしまった。
私は心の中でため息をつくのだった―。
10
お気に入りに追加
334
あなたにおすすめの小説
傷物令嬢シャルロットは辺境伯様の人質となってスローライフ
悠木真帆
恋愛
侯爵令嬢シャルロット・ラドフォルンは幼いとき王子を庇って右上半身に大やけどを負う。
残ったやけどの痕はシャルロットに暗い影を落とす。
そんなシャルロットにも他国の貴族との婚約が決まり幸せとなるはずだった。
だがーー
月あかりに照らされた婚約者との初めての夜。
やけどの痕を目にした婚約者は顔色を変えて、そのままベッドの上でシャルロットに婚約破棄を申し渡した。
それ以来、屋敷に閉じこもる生活を送っていたシャルロットに父から敵国の人質となることを命じられる。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
星名柚花
恋愛
魔法が使えない伯爵令嬢セレスティアには美しい双子の妹・イノーラがいる。
国一番の魔力を持つイノーラは我儘な暴君で、セレスティアから婚約者まで奪った。
「もう無理、もう耐えられない!!」
イノーラの結婚式に無理やり参列させられたセレスティアは逃亡を決意。
「セラ」という偽名を使い、遠く離れたロドリー王国で侍女として働き始めた。
そこでセラには唯一無二のとんでもない魔法が使えることが判明する。
猫になる魔法をかけられた女性不信のユリウス。
表情筋が死んでいるユリウスの弟ノエル。
溺愛してくる魔法使いのリュオン。
彼らと共に暮らしながら、幸せに満ちたセラの新しい日々が始まる――
※他サイトにも投稿しています。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
婚約破棄宣言は別の場所で改めてお願いします
結城芙由奈
恋愛
【どうやら私は婚約者に相当嫌われているらしい】
「おい!もうお前のような女はうんざりだ!今日こそ婚約破棄させて貰うぞ!」
私は今日も婚約者の王子様から婚約破棄宣言をされる。受け入れてもいいですが…どうせなら、然るべき場所で宣言して頂けますか?
※ 他サイトでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる