19 / 107
1-18 護衛騎士なった背景
しおりを挟む
カツカツカツカツ・・・・
足音を立ててさっそうと私の前を歩くユベール・マルタン。黒い髪に青く光る瞳。
彼はまるで闇に君臨する王子のような人だった。アンリ王子が輝く太陽なら、さながらユベールは夜空に光る月のような存在。身分の高い侯爵家でありながら、アンリ王子の護衛騎士を務めている。彼が何故そのような立場に自分を置いているのか・・理由は分っている。
それはジュリエッタの存在だ。
3人は子供の頃からの幼馴染で、ずっと同じ時間を共有してきた。そして2人はジュリエッタを愛した。けれど・・彼女が選んだのはアンリ王子だったのだ。
失恋したユベールはそこで人格が変わってしまったと言われている。そしてアンリ王子はジュリエッタの事をユベールが愛していることを知りながら、自分の護衛騎士になるように命じたのだ。例え、ジュリエッタの愛を得られなくても彼女の傍にいたいと願ったユベールはアンリ王子の護衛騎士になったのだけど・・・。
私は歩きながらユベールの背中を見た。
一体彼はどんな気持ちで2人の傍にいたのだろう?アンリ王子とジュリエッタが目の前で愛し合う様を見て・・心が傷つかなかったのだろうか?2人の仲を引き裂きたくはならなかったのだろうか・・?私は色々な事を考えてしまった。
考え事をしながら歩いていたせいで、いつの間にか私とユベールの距離はかなりあいていた。慌てて小走りで追いかけていくと、不意にユベールが私の方をふり向いた。
「どうした?」
「え?」
「考え事をしていたのか?」
「え?ええ・・少しだけ。申し訳ございません」
「何が?」
何がって・・・。
「歩くのが・・遅くてです・・」
「ああ・・・」
ユベールはニヤリと笑うと言った。
「悪かったな・・・歩くのが早くて。すまない。俺は・・どうしても周りから配慮が足りないと言われていて・・悪かったな」
そしてユベールは歩く速度を落としてくれた。
「ありがとうございます・・・」
私はユベールの隣を歩きながら緊張していた。何故なら・・私の過去12回の死には全て彼が関わってきたから。そして12回目に私を殺したのは・・・今目の前にいるユベールだと言う事がはっきり分っているから。今回のループで私は今までの記憶を全て引き継いでいる。今度こそ・・私は7月7日を超えて生き続けたい。
彼に殺されない為には・・彼にとって私が殺したくないと思われる人物になるしかない。その為にはユベールの事は恐ろしいけれども、彼との好感度を上げなければ生き残る事が出来ないかもしれない。
「あ、あの・・」
言いかけた時、不意にユベールが言った。
「ショックだったか?」
「え?」
「お前と言う婚約者候補がいながら・・アンリ王子には恋人がいるからだ。それに例え結婚したとしてもアンリ王子は・・決してジュリエッタ以外は愛する事は無い」
ユベールの顔は寂し気だった。
「ええ、そうですね。でも・・別に構いません」
「え・・?本気で言ってるのか・・?」
意外そうな目で私を見る。
「ええ、別に貴族同士の結婚なんて・・そんなものでしょう?私は生活を保障して頂けるのであれば、愛が無い結婚でも構いません」
それと命を保証してくれるのであれば尚の事。
「そうなのか。お前は変わった奴だな」
「ありがとうございます・・」
「別に褒めたわけではない。ただ・・羨ましいなと思った」
「・・・」
私は黙ってユベールを見た。
「そんな風に割り切れるなんて・・俺には出来そうにない」
きっとジュリエッタの事を言っているのだろう。
「私だったら、もし仮に自分に好きな人がいて・・・だけどその相手には既に恋人がいて、もう間に割って入れないと言うのであれば・・」
ユベールは黙って話を聞いている。
「新しい恋を探しますね」
「新しい・・恋?」
「はい、それで・・好きになって貰うように努力します」
いつの間にか私は自分の部屋の前にやってきていた。扉の前に立ち、ユベールの方を振り向くと頭を下げた。
「部屋まで送って頂き、どうもありがとうございました。おやすみなさい」
そして頭を下げる。
「ああ。・・今夜の話は忘れてくれ」
そしてユベールは靴音を鳴らしながら去って行った―。
足音を立ててさっそうと私の前を歩くユベール・マルタン。黒い髪に青く光る瞳。
彼はまるで闇に君臨する王子のような人だった。アンリ王子が輝く太陽なら、さながらユベールは夜空に光る月のような存在。身分の高い侯爵家でありながら、アンリ王子の護衛騎士を務めている。彼が何故そのような立場に自分を置いているのか・・理由は分っている。
それはジュリエッタの存在だ。
3人は子供の頃からの幼馴染で、ずっと同じ時間を共有してきた。そして2人はジュリエッタを愛した。けれど・・彼女が選んだのはアンリ王子だったのだ。
失恋したユベールはそこで人格が変わってしまったと言われている。そしてアンリ王子はジュリエッタの事をユベールが愛していることを知りながら、自分の護衛騎士になるように命じたのだ。例え、ジュリエッタの愛を得られなくても彼女の傍にいたいと願ったユベールはアンリ王子の護衛騎士になったのだけど・・・。
私は歩きながらユベールの背中を見た。
一体彼はどんな気持ちで2人の傍にいたのだろう?アンリ王子とジュリエッタが目の前で愛し合う様を見て・・心が傷つかなかったのだろうか?2人の仲を引き裂きたくはならなかったのだろうか・・?私は色々な事を考えてしまった。
考え事をしながら歩いていたせいで、いつの間にか私とユベールの距離はかなりあいていた。慌てて小走りで追いかけていくと、不意にユベールが私の方をふり向いた。
「どうした?」
「え?」
「考え事をしていたのか?」
「え?ええ・・少しだけ。申し訳ございません」
「何が?」
何がって・・・。
「歩くのが・・遅くてです・・」
「ああ・・・」
ユベールはニヤリと笑うと言った。
「悪かったな・・・歩くのが早くて。すまない。俺は・・どうしても周りから配慮が足りないと言われていて・・悪かったな」
そしてユベールは歩く速度を落としてくれた。
「ありがとうございます・・・」
私はユベールの隣を歩きながら緊張していた。何故なら・・私の過去12回の死には全て彼が関わってきたから。そして12回目に私を殺したのは・・・今目の前にいるユベールだと言う事がはっきり分っているから。今回のループで私は今までの記憶を全て引き継いでいる。今度こそ・・私は7月7日を超えて生き続けたい。
彼に殺されない為には・・彼にとって私が殺したくないと思われる人物になるしかない。その為にはユベールの事は恐ろしいけれども、彼との好感度を上げなければ生き残る事が出来ないかもしれない。
「あ、あの・・」
言いかけた時、不意にユベールが言った。
「ショックだったか?」
「え?」
「お前と言う婚約者候補がいながら・・アンリ王子には恋人がいるからだ。それに例え結婚したとしてもアンリ王子は・・決してジュリエッタ以外は愛する事は無い」
ユベールの顔は寂し気だった。
「ええ、そうですね。でも・・別に構いません」
「え・・?本気で言ってるのか・・?」
意外そうな目で私を見る。
「ええ、別に貴族同士の結婚なんて・・そんなものでしょう?私は生活を保障して頂けるのであれば、愛が無い結婚でも構いません」
それと命を保証してくれるのであれば尚の事。
「そうなのか。お前は変わった奴だな」
「ありがとうございます・・」
「別に褒めたわけではない。ただ・・羨ましいなと思った」
「・・・」
私は黙ってユベールを見た。
「そんな風に割り切れるなんて・・俺には出来そうにない」
きっとジュリエッタの事を言っているのだろう。
「私だったら、もし仮に自分に好きな人がいて・・・だけどその相手には既に恋人がいて、もう間に割って入れないと言うのであれば・・」
ユベールは黙って話を聞いている。
「新しい恋を探しますね」
「新しい・・恋?」
「はい、それで・・好きになって貰うように努力します」
いつの間にか私は自分の部屋の前にやってきていた。扉の前に立ち、ユベールの方を振り向くと頭を下げた。
「部屋まで送って頂き、どうもありがとうございました。おやすみなさい」
そして頭を下げる。
「ああ。・・今夜の話は忘れてくれ」
そしてユベールは靴音を鳴らしながら去って行った―。
10
お気に入りに追加
337
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。
シナリオ通りなら、死ぬ運命。
だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい!
騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します!
というわけで、私、悪役やりません!
来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。
あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……!
気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。
悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる