命がけの恋~13回目のデスループを回避する為、婚約者の『護衛騎士』を攻略する

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
18 / 107

1-17 秘密の会話

しおりを挟む
「・・おい、大丈夫か?」

突如、声を掛けられて私はハッとなった。見ると眼前にユベールの顔があって私を覗き込んでいた。

「どうしたんだい?シルビア嬢?」

「何かあったの?顔色が真っ青だけど?」

ユベールの肩越しに見えるアンリ王子とジュリエッタが私の方を見つめて声を掛けてきた。

「あ・・申し訳ございません。何でもありません」

何故か今、6回目の死の記憶が鮮明に蘇ってしまった。

「大丈夫か?とりあえず座った方がいいだろう」

珍しくユベールが私を気遣う台詞を言う。

「そうだな。シルビア嬢、そこのソファに座ったほうがいいね」

アンリ王子に向かい側のソファを勧められたので、私は素直に従う事にした。

「はい、ありがとうございます・・・」

ふらつく足でソファにストンと座った。すると早速ジュリエッタが口を開く。

「あのね・・・もうお気づきになっているかもしれないけれど・・私とアンリ王子は恋人同士なの」

「ええ、知ってます」

顔色一つ変えずに言う。

「そうか・・なら話は早いな」

アンリ王子が身を乗り出して来た。

「本当は・・・僕はジュリエッタと結婚がしたいんだ。だけど・・彼女の身分は男爵で、しかも僕とは遠縁の親戚関係なんだ。だから周囲が断固反対したんだ。絶対に僕たちの結婚を認めないと。そして他に結婚相手を見つけるように命じられたんだよ」

ええ、よく存じております。今回で13回目のループですから。でも・・今までこんな初日に呼ばれて釘を刺されたことは一度も無いけれども。

「そうなの、それで結婚相手を探すのを少しでも引き延ばす為に・・私達一緒に考えたのよ。独身貴族令嬢達を集めてテストを行なおうって。半年間テストを受けさせて・・・最終的に選ばれた女性を婚約者にしようって提案したのよ」

ジュリエッタが興奮気味に言う。

「そこで今回集められたのが君達なんだよ。それで・・どうせ結婚相手を選ぶなら魔力持ちの女性が良いと周囲から進められて・・過去の歴史に置いて魔術師を輩出してきた家柄の女性が特別枠で選ばれたんだよ。そこで君達には他の令嬢達とは違うテストを受けて貰ったのさ。それが・・あの魔力を感知する為に作られた『アーティファクト』なのさ。あれに魔力のある人間が触れると、反応する仕組みになってるんだ」

アンリ王子が笑みを浮かべて私を見てニコリと笑った。その笑顔が・・何故か異様に恐ろしく見えた。

「そ、そうなのですか・・?難しい話なので私にはさっぱり分りませんが・・?」

「うん。確かに難しい話かもしれないよね・・。でもいいよ。今夜君を呼んだのは今回のテストが行われた理由を説明しておきたかっただけだから・・もう部屋に帰っていいよ。悪かったね・・・呼び出したりして。」

「いいえ・・そんな事はありません。では失礼致します。」

頭を下げて出て行こうとすると、アンリ王子が口を開いた。

「ユベール。」

「何だ?」

今まで黙って私たちの会話を聞いていたユベールが返事をした。

「シルビア嬢を送ってやってくれないか?」

「え・・?」

ユベールは露骨に嫌そうな顔をした。

「い、いえ。大丈夫ですっ!1人で戻れますから・・」

「戻れるって・・ここは別館にある僕のもう一つの部屋だよ?道は覚えているのかい?」

アンリ王子が尋ねる。

「ええ、覚えています」

だって過去のループで何回も訪れた場所だから・・・。

「へえ~・・すごいね。君は・・魔力だけじゃなく、記憶力もいいんだね?」

アンリ王子は感心したように言う。

「・・・・」

一方のユベールは私を睨み付けるように見つめている。

「ですから・・1人で帰れるのでお気遣いなく。ユベール様もお忙しいでしょうし・・・」

「いや、いい。送る。ついて来い」

ユベールは不愛想に言うと歩き出した。するとジュリエッタが声を掛ける。

「あら、駄目よ。ユベール。女性には優しくしなくちゃ・・」

するとユベールはじっとジュリエッタを見ると言った。

「ああ・・そうだな。気を付けるよ」

少しだけ照れた顔つきだった。

「それじゃあね、シルビア。良い夢を」

「はい、ありがとうございます。では失礼します。」

私は再び頭を下げると、ユベールが言った。

「それでは・・・部屋まで付き添う」

そして前に立って歩き出した―。




しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています

窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。 シナリオ通りなら、死ぬ運命。 だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい! 騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します! というわけで、私、悪役やりません! 来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。 あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……! 気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。 悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——?

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

処理中です...