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1-9 特別枠の女性たち
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「そうか、君も特別枠の候補者の1人なのか?」
アンリ王子は私に尋ねてきた。
「特別枠・・?」
もう一度首を傾げて私はまともに挨拶もしていないことに気づき、慌てて頭を下げた。
「初めてお目にかかります。私はシルビア・ルグランと申します。どうぞよろしくお願い致します。」
「ルグラン・・・聞いたことがあるな。あ、確か『ベリス』領土を治める伯爵家だったか?」
「はい、さようでございます。」
再びお辞儀をすると今度はユベールが私を値踏みするような眼で見るとため息をついた。
「まさか王宮に上がる日にドレスも着ないで訪れるとはな。」
不愛想な顔で言う。
「あ、あの・・こ、これは・・・。そ、その・・単に動きやすい服装が良いかと思ったので・・・。お城の中は広いですから・・。」
焦っていた私は自分でも訳の分からない理由を述べてしまった。
「そうか・・・・。てっきり・・・のに。」
ボソリとユベールが呟いたが、私には良く聞き取ることが出来なかった。
けれど・・今回私がドレスを着てこなかったのにはある理由があった。
過去のループでは最初のテストで、城に到着早々馬術のテストが行われたからだ。噂によるとそのテストを提案したのはジュリエッタだったらしい。
ドレスを着て城へ上がった私たちはそれで散々苦労し・・・最初のテストでかなりの数の令嬢が脱落した。私はもともと馬に乗るのが好きだったし、慣れていたので何とか乗ることが出来たけれども・・あの時はかなり苦労した。それで今回は動きやすく、馬に乗りやすいワンピースを選んで着てきたのだが・・・どうやらその必要は無かったようだ。
「では私はこれで下がらせて頂きます。」
背後で私を連れてきた執事が2人に頭を下げると去って行った。それを見届けたアンリ王子が私に言った。
「ようこそ。婚約者候補様。どうぞ中へ入ってくれ。もう他の特別枠の女性たちは集まっているんだ。」
「は、はい。」
特別枠・・・そうか。私以外にもいたのか。それを聞いて心の中で安堵のため息をついた。それならば彼女たちで争ってもらって、私はきりのよさそうなところで脱落して屋敷に帰らせてもらう事にしよう。
アンリ王子の後に続き、中へ入ると広々とした部屋には数えきれないほどの女性たちが既に集まっていた。彼女たちの誰もがきらびやかなドレスを着ており、私一人がワンピースだった為に一気に全員の注目を浴びる事になってしまった。
「さあ、シルビア嬢も彼女たちの場所に行ってくれ。」
「は、はい。」
アンリ王子に言われて返事をする。そして令嬢たちの元へ向かうとき、私は見た。その中にはイメリダ、マグダレナ、ロシータの姿もあった。そして・・・。
「シルビア!」
私を小声で手招きする女性がいた。彼女は・・・。
「あ、コーネリア!」
親友のコーネリア・バスクがそこにいた。そう言えば彼女は毎回かなり後半までテストに勝ち残っていた。そうか・・・彼女も特別枠の候補者だったのか。
「久しぶりね。シルビア。」
コーネリアの元へ向かうと、さっそく彼女は声を掛けてきた。
「ええ、本当に。」
半年間のループを12回も経験し、毎回その度にコーネリアに会っていた私にとっては久しぶりという感覚が良く分からなかったが、彼女に話を合わせた。
「ところで特別枠の候補者と言っても・・・・随分大勢いるのね。」
コーネリアに尋ねると彼女は言った。
「ええ、そうよ。何せ、今回の王子の婚約者選びの話はあちこちにお触れが出て中には金持ちの庶民たち迄お金を出して爵位をわざわざ買った『にわか貴族』と呼ばれる女性たちもたくさん混ざっているそうよ?」
「ええ?!そうなの?!」
それは12回もループしてきた私でも知らなかった。さすがは情報通のコーネリアだ。
するとそこまで話をしたとき、突然アンリ王子が声を張り上げた。
「皆さん、この度は私の婚約者選びのテストを受けに来ていただくために城に来ていただき感謝します。現在ここには35名集められていますが・・・早速今からテストを行いたいと思います!」
途端にざわめく皆。
やっぱりここでもさっそくテスト・・・。一体どんなテストが行われるのだろう?
緊張しながらも私は願った。
いきなり脱落はしませんように・・と―。
アンリ王子は私に尋ねてきた。
「特別枠・・?」
もう一度首を傾げて私はまともに挨拶もしていないことに気づき、慌てて頭を下げた。
「初めてお目にかかります。私はシルビア・ルグランと申します。どうぞよろしくお願い致します。」
「ルグラン・・・聞いたことがあるな。あ、確か『ベリス』領土を治める伯爵家だったか?」
「はい、さようでございます。」
再びお辞儀をすると今度はユベールが私を値踏みするような眼で見るとため息をついた。
「まさか王宮に上がる日にドレスも着ないで訪れるとはな。」
不愛想な顔で言う。
「あ、あの・・こ、これは・・・。そ、その・・単に動きやすい服装が良いかと思ったので・・・。お城の中は広いですから・・。」
焦っていた私は自分でも訳の分からない理由を述べてしまった。
「そうか・・・・。てっきり・・・のに。」
ボソリとユベールが呟いたが、私には良く聞き取ることが出来なかった。
けれど・・今回私がドレスを着てこなかったのにはある理由があった。
過去のループでは最初のテストで、城に到着早々馬術のテストが行われたからだ。噂によるとそのテストを提案したのはジュリエッタだったらしい。
ドレスを着て城へ上がった私たちはそれで散々苦労し・・・最初のテストでかなりの数の令嬢が脱落した。私はもともと馬に乗るのが好きだったし、慣れていたので何とか乗ることが出来たけれども・・あの時はかなり苦労した。それで今回は動きやすく、馬に乗りやすいワンピースを選んで着てきたのだが・・・どうやらその必要は無かったようだ。
「では私はこれで下がらせて頂きます。」
背後で私を連れてきた執事が2人に頭を下げると去って行った。それを見届けたアンリ王子が私に言った。
「ようこそ。婚約者候補様。どうぞ中へ入ってくれ。もう他の特別枠の女性たちは集まっているんだ。」
「は、はい。」
特別枠・・・そうか。私以外にもいたのか。それを聞いて心の中で安堵のため息をついた。それならば彼女たちで争ってもらって、私はきりのよさそうなところで脱落して屋敷に帰らせてもらう事にしよう。
アンリ王子の後に続き、中へ入ると広々とした部屋には数えきれないほどの女性たちが既に集まっていた。彼女たちの誰もがきらびやかなドレスを着ており、私一人がワンピースだった為に一気に全員の注目を浴びる事になってしまった。
「さあ、シルビア嬢も彼女たちの場所に行ってくれ。」
「は、はい。」
アンリ王子に言われて返事をする。そして令嬢たちの元へ向かうとき、私は見た。その中にはイメリダ、マグダレナ、ロシータの姿もあった。そして・・・。
「シルビア!」
私を小声で手招きする女性がいた。彼女は・・・。
「あ、コーネリア!」
親友のコーネリア・バスクがそこにいた。そう言えば彼女は毎回かなり後半までテストに勝ち残っていた。そうか・・・彼女も特別枠の候補者だったのか。
「久しぶりね。シルビア。」
コーネリアの元へ向かうと、さっそく彼女は声を掛けてきた。
「ええ、本当に。」
半年間のループを12回も経験し、毎回その度にコーネリアに会っていた私にとっては久しぶりという感覚が良く分からなかったが、彼女に話を合わせた。
「ところで特別枠の候補者と言っても・・・・随分大勢いるのね。」
コーネリアに尋ねると彼女は言った。
「ええ、そうよ。何せ、今回の王子の婚約者選びの話はあちこちにお触れが出て中には金持ちの庶民たち迄お金を出して爵位をわざわざ買った『にわか貴族』と呼ばれる女性たちもたくさん混ざっているそうよ?」
「ええ?!そうなの?!」
それは12回もループしてきた私でも知らなかった。さすがは情報通のコーネリアだ。
するとそこまで話をしたとき、突然アンリ王子が声を張り上げた。
「皆さん、この度は私の婚約者選びのテストを受けに来ていただくために城に来ていただき感謝します。現在ここには35名集められていますが・・・早速今からテストを行いたいと思います!」
途端にざわめく皆。
やっぱりここでもさっそくテスト・・・。一体どんなテストが行われるのだろう?
緊張しながらも私は願った。
いきなり脱落はしませんように・・と―。
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