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1-8 13回目のループの異変
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「ありがとう、ここまで連れて来てくれて。」
城に到着し、馬車を降りた私はここまで連れて来てくれた御者にお礼を述べた。
「い、いえ。とんでもありません。貴族のお嬢様からお礼を頂けるなんて・・もったいない限りです。」
御者の男性は恐縮したように言う。
「それじゃあね。」
私は御者に手を振ると城の入り口へ向かって歩き出した。
「ようこそ、ブルックリン城へ。」
城の入り口にはこの王宮に勤める燕尾服を着た執事たちが続々と入城してくる令嬢たちから招待状を預かっている。長い列を作って並ぶ令嬢たちは皆まるでこれから舞踏会にでも参加するかのようなドレスを身にまとっていた。私のようにワンピースを着ている令嬢はほとんどいなかった。過去12回のループで私も他の令嬢たちと同様にドレスを着てきたが・・・この後何が行われる知っているので、今回のループでは、あえて動きやすいワンピースにしたのだ。
やがて私の順番が回ってきた。
私も毎回ここで自分宛てに届いた招待状を手渡していたのだが、今回に限り父宛てに届いた招待状を託された。
「この招待状を持って行くようにって言われたけど・・一体何の意味があるのかしら・・?」
不思議に思いながらも一番近くにいた執事に私は招待状を手渡した。
「お願いします。」
「はい。受け取らせて頂きます。」
執事は招待状を受け取り、中身を見た途端・・ハッとした表情を浮かべ、じっと私を見つめた。
「あ、あの・・・一体何か・・・?」
「もしや貴女は特別枠の候補者ですね?」
執事の目の色が変わった。
え?特別枠・・?何それ?そんな展開は12回もループを繰り返してきた私の中では一度も起こらなかった。
「特別枠の候補者の方は様々なテストが免除されますが・・代わりに特別なテストを受けて頂きます。どうぞこちらへ。」
執事は言うと、前に立って歩き出した。
「あ、あの・・・。」
声を掛けると執事は振り向き、言った。
「大丈夫です。すぐに済むテストですから。」
「は・・はい、そうですか・・・。」
一抹の不安を感じながら私は執事の後をついて行った―。
「こちらでございます。」
案内された部屋の扉を見て私は青ざめてしまった。過去12回も同じ時間をループしてきた私にはこの部屋が何か良く分かっていた。
そ、そんな・・どうして・・っ?!
緊張と・・恐怖で私の足は知らず知らずのうちに震えていた。そして思った。こんなことになるのなら、何としてもあの屋敷から逃げ出していれば良かったと・・。
コンコン
執事は私の気持ちなどお構いなく、扉をノックした。すると無言でドアがかちゃりと開かれ・・、目の前に私が一番恐れるべき人物がそこに立っていた。
黒い髪に青い瞳・・・彫像のように美しい顔はまるで表情がない・・・。感情をあらわにすることが滅多になく、剣の達人。それ故、人々は彼をこう呼んだ。
『氷の騎士』
と―。
そう、今目の前に現れたのは12回に及ぶデスループに関わってきたユベールだったのだ。そして私が連れてこられたのはアンリ王子の部屋だ。
「あ・・・。」
あまりにも予想をしていなかった事態なので、私は緊張のあまり喉がカラカラになっていた。そんな私をユベールは冷たい瞳で一瞥すると執事に言った。
「何の用だ?」
「はい、こちらの女性が特別枠の招待状を持参してこられたので、こちらへお連れ致しました。」
「何?特別枠だって?」
するとさらに奥から聞き覚えのある声が聞こえ、ユベールの背後からその声の持ち主が現れた。その人物とは・・・のちに私の婚約者となる『アンリ・ベルナール』王子その人だった。
ああ、何て事だろう・・・。
この時、私は思った。
既に逃げたくても逃げられない、死のループに再び囚われてしまったのだと―。
城に到着し、馬車を降りた私はここまで連れて来てくれた御者にお礼を述べた。
「い、いえ。とんでもありません。貴族のお嬢様からお礼を頂けるなんて・・もったいない限りです。」
御者の男性は恐縮したように言う。
「それじゃあね。」
私は御者に手を振ると城の入り口へ向かって歩き出した。
「ようこそ、ブルックリン城へ。」
城の入り口にはこの王宮に勤める燕尾服を着た執事たちが続々と入城してくる令嬢たちから招待状を預かっている。長い列を作って並ぶ令嬢たちは皆まるでこれから舞踏会にでも参加するかのようなドレスを身にまとっていた。私のようにワンピースを着ている令嬢はほとんどいなかった。過去12回のループで私も他の令嬢たちと同様にドレスを着てきたが・・・この後何が行われる知っているので、今回のループでは、あえて動きやすいワンピースにしたのだ。
やがて私の順番が回ってきた。
私も毎回ここで自分宛てに届いた招待状を手渡していたのだが、今回に限り父宛てに届いた招待状を託された。
「この招待状を持って行くようにって言われたけど・・一体何の意味があるのかしら・・?」
不思議に思いながらも一番近くにいた執事に私は招待状を手渡した。
「お願いします。」
「はい。受け取らせて頂きます。」
執事は招待状を受け取り、中身を見た途端・・ハッとした表情を浮かべ、じっと私を見つめた。
「あ、あの・・・一体何か・・・?」
「もしや貴女は特別枠の候補者ですね?」
執事の目の色が変わった。
え?特別枠・・?何それ?そんな展開は12回もループを繰り返してきた私の中では一度も起こらなかった。
「特別枠の候補者の方は様々なテストが免除されますが・・代わりに特別なテストを受けて頂きます。どうぞこちらへ。」
執事は言うと、前に立って歩き出した。
「あ、あの・・・。」
声を掛けると執事は振り向き、言った。
「大丈夫です。すぐに済むテストですから。」
「は・・はい、そうですか・・・。」
一抹の不安を感じながら私は執事の後をついて行った―。
「こちらでございます。」
案内された部屋の扉を見て私は青ざめてしまった。過去12回も同じ時間をループしてきた私にはこの部屋が何か良く分かっていた。
そ、そんな・・どうして・・っ?!
緊張と・・恐怖で私の足は知らず知らずのうちに震えていた。そして思った。こんなことになるのなら、何としてもあの屋敷から逃げ出していれば良かったと・・。
コンコン
執事は私の気持ちなどお構いなく、扉をノックした。すると無言でドアがかちゃりと開かれ・・、目の前に私が一番恐れるべき人物がそこに立っていた。
黒い髪に青い瞳・・・彫像のように美しい顔はまるで表情がない・・・。感情をあらわにすることが滅多になく、剣の達人。それ故、人々は彼をこう呼んだ。
『氷の騎士』
と―。
そう、今目の前に現れたのは12回に及ぶデスループに関わってきたユベールだったのだ。そして私が連れてこられたのはアンリ王子の部屋だ。
「あ・・・。」
あまりにも予想をしていなかった事態なので、私は緊張のあまり喉がカラカラになっていた。そんな私をユベールは冷たい瞳で一瞥すると執事に言った。
「何の用だ?」
「はい、こちらの女性が特別枠の招待状を持参してこられたので、こちらへお連れ致しました。」
「何?特別枠だって?」
するとさらに奥から聞き覚えのある声が聞こえ、ユベールの背後からその声の持ち主が現れた。その人物とは・・・のちに私の婚約者となる『アンリ・ベルナール』王子その人だった。
ああ、何て事だろう・・・。
この時、私は思った。
既に逃げたくても逃げられない、死のループに再び囚われてしまったのだと―。
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