命がけの恋~13回目のデスループを回避する為、婚約者の『護衛騎士』を攻略する

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
9 / 107

1-8 13回目のループの異変

しおりを挟む
「ありがとう、ここまで連れて来てくれて。」

城に到着し、馬車を降りた私はここまで連れて来てくれた御者にお礼を述べた。

「い、いえ。とんでもありません。貴族のお嬢様からお礼を頂けるなんて・・もったいない限りです。」

御者の男性は恐縮したように言う。

「それじゃあね。」

私は御者に手を振ると城の入り口へ向かって歩き出した。




「ようこそ、ブルックリン城へ。」

 城の入り口にはこの王宮に勤める燕尾服を着た執事たちが続々と入城してくる令嬢たちから招待状を預かっている。長い列を作って並ぶ令嬢たちは皆まるでこれから舞踏会にでも参加するかのようなドレスを身にまとっていた。私のようにワンピースを着ている令嬢はほとんどいなかった。過去12回のループで私も他の令嬢たちと同様にドレスを着てきたが・・・この後何が行われる知っているので、今回のループでは、あえて動きやすいワンピースにしたのだ。

 やがて私の順番が回ってきた。
私も毎回ここで自分宛てに届いた招待状を手渡していたのだが、今回に限り父宛てに届いた招待状を託された。

「この招待状を持って行くようにって言われたけど・・一体何の意味があるのかしら・・?」

不思議に思いながらも一番近くにいた執事に私は招待状を手渡した。

「お願いします。」

「はい。受け取らせて頂きます。」

執事は招待状を受け取り、中身を見た途端・・ハッとした表情を浮かべ、じっと私を見つめた。

「あ、あの・・・一体何か・・・?」

「もしや貴女は特別枠の候補者ですね?」

執事の目の色が変わった。

え?特別枠・・?何それ?そんな展開は12回もループを繰り返してきた私の中では一度も起こらなかった。

「特別枠の候補者の方は様々なテストが免除されますが・・代わりに特別なテストを受けて頂きます。どうぞこちらへ。」

執事は言うと、前に立って歩き出した。

「あ、あの・・・。」

声を掛けると執事は振り向き、言った。

「大丈夫です。すぐに済むテストですから。」

「は・・はい、そうですか・・・。」

一抹の不安を感じながら私は執事の後をついて行った―。



「こちらでございます。」

案内された部屋の扉を見て私は青ざめてしまった。過去12回も同じ時間をループしてきた私にはこの部屋が何か良く分かっていた。

そ、そんな・・どうして・・っ?!

緊張と・・恐怖で私の足は知らず知らずのうちに震えていた。そして思った。こんなことになるのなら、何としてもあの屋敷から逃げ出していれば良かったと・・。

コンコン

執事は私の気持ちなどお構いなく、扉をノックした。すると無言でドアがかちゃりと開かれ・・、目の前に私が一番恐れるべき人物がそこに立っていた。

黒い髪に青い瞳・・・彫像のように美しい顔はまるで表情がない・・・。感情をあらわにすることが滅多になく、剣の達人。それ故、人々は彼をこう呼んだ。

『氷の騎士』

と―。


そう、今目の前に現れたのは12回に及ぶデスループに関わってきたユベールだったのだ。そして私が連れてこられたのはアンリ王子の部屋だ。

「あ・・・。」

あまりにも予想をしていなかった事態なので、私は緊張のあまり喉がカラカラになっていた。そんな私をユベールは冷たい瞳で一瞥すると執事に言った。

「何の用だ?」

「はい、こちらの女性が特別枠の招待状を持参してこられたので、こちらへお連れ致しました。」

「何?特別枠だって?」

するとさらに奥から聞き覚えのある声が聞こえ、ユベールの背後からその声の持ち主が現れた。その人物とは・・・のちに私の婚約者となる『アンリ・ベルナール』王子その人だった。

ああ、何て事だろう・・・。

この時、私は思った。

既に逃げたくても逃げられない、死のループに再び囚われてしまったのだと―。


しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています

窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。 シナリオ通りなら、死ぬ運命。 だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい! 騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します! というわけで、私、悪役やりません! 来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。 あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……! 気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。 悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——?

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

処理中です...