命がけの恋~13回目のデスループを回避する為、婚約者の『護衛騎士』を攻略する

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
7 / 107

1-6 過去の記憶 <デスループ 2回目>

しおりを挟む
「そうだった・・・あの時も鐘の音が鳴り響ていたわ。一体どういう事かしら?」

だけど一番の謎は自分自身だった。何故、死んだはずなのに毎回同じ場所、同じ日に目が覚めるのだろうか?殺され方は毎回違っていたのに・・・。

「そうだった・・2回目の死は・・・。」


<デスループ 2回目>


 水死


 あの日はとても良く晴れた日だった。前日の最終試験でアンリ様の婚約者に選ばれた私は湖の中の小島に建つ城で祝賀パーティーが開かれるという事で、参加することになったのだ―。




その日、私は久しぶりに部屋の中で1人でのんびり雑誌を読みながら過ごしていた。

コンコン

不意に部屋のドアがやや乱暴にノックされた。

「はーい、どなた?」

ソファに座りながら返事をすると、ドアの外で声が聞こえてきた。

「俺だ、ユベールだ。」

「え?!ユ・ユベール様っ?!」

慌ててソファから立ち上がり、ドアに駆け寄るとガチャリと開けた。するとそこには不機嫌そうな顔のユベールが立っている。

「あ、あの・・・ユベール様・・どうかしましたか?」

するとユベールは眉をしかめると言った。

「は?どうかしましたか?じゃない。一体お前はこんなところで何をやっているのだ?!」

何故かユベールは酷くイライラしている。

「え・・・?な、何をって・・・。御覧の通り、昨日試験も無事に終わったので・・久々の休暇だと思ってのんびり過ごしていたのですが・・?」

私はまた何かユベールを怒らせるような事をしてしまったのだろうか?
するとユベールは大げさなくらい大きなため息をつき、額を手で押さえると言った。

「お前・・今日が何の日か知らないのかっ?お前が王子の婚約者に決定した事を祝う祝賀パーティーの日だっただろう?!」

「え・・ええっ?!な、何ですかっ?!その話は・・初耳ですけど?!」

そんな話は一度も聞かされていない。

「何・・?初耳だって・・?嘘を言うなっ!どうして当事者のお前が何も知らされていないっ?!大体・・お前の侍女はどこにいるんだっ?!」

「侍女なら初めからおりませんけど・・・?」

「え・・?」

ユベールは信じられないと言わんばかりの目で私を見た。

「どういうことだ?侍女がいないとは・・?」

「ああ・・ユベール様はご存じなかったのですね?全ての令嬢が侍女を持てるわけではないのですよ?基本伯爵令嬢から専属侍女を用意してもらえるのですが・・どうやら私には手違いか何かわかりませんが侍女は与えられませんでした。メイドはおりますけど、彼女たちも時間で働いていますから・・。」

「何だって・・?それではお前は侍女もいない状態で試験に合格したのか?」

「そうですね・・運が良かったのかもしれませんが・・。」

けれど、本当に運が良かったのだろうか?試験が始まった時から私は・・いえ、全ての令嬢たちは明らかにアンリ様に歓迎されているとは思えなかった。けれどもやはり時期王妃という座は貴族令嬢たちは欲しかったのだろう。皆必死で試験に合格しうようと奮闘していたが、私は微塵も興味が無かった。それなのに最終的に選ばれてしまったのだ。

「・・・と、とにかくパーティーはもう始まっている。王子が早くお前を連れて来い
と言ってるのだ。今すぐ行くぞ。」

ユベールは踵を返すと速足で歩き始める。

「え?そ、そんな・・・っ!こんな普段着のまま行くのですかっ?!」

「文句を言うな。常に余所行きの姿をしていればこのような事にはならなかっただろう?!」

ユベールは滅茶苦茶な事を言う。けれど・・立場が弱い私には言い返す術は無かった・・・。

その後、ユベールの走らせる馬に一緒に乗り、連れていかれたのは湖だった。

「見えるか?あの湖に浮かぶ城が。」

ユベールが指さした方向には島の上に城が立っている様子が見えた。

「はい、見えます。あの城に行くのですね?」

「ああ、そうだ。俺は馬をつなげてくるからお前はそこに浮いているボートに先に乗っていろ。」

「え・・?あ、は、はい・・・。」

返事をするとユベールはこちらを見もせずに馬をつ入れてその場を去ってしまった。

「ボートなんて乗ったことないのに・・。」

だけどあのユベールにとてもではないが手を貸してほしいとは頼めなかった。

「まあ・・何とかなるでしょう・・。」

おっかなびっくりボートを括り付けているロープを手元に引きよせ、近づいたところで縁に手を置き、何とか乗り込んだとたん・・・いきなりボートがブクブクと転覆しだしたのだ。

「キャアアッ!」

慌ててロープを手繰り寄せ、桟橋に近づけようとしてもすっかり水に浸かってしまったボートは重すぎて動かすことが出来ない。

ボートが沈むのにさほど時間はかからなかった。そしてとうとう私は湖の中に沈んでしまった。

ゴボゴボゴボ・・ッ!

く、苦しい・・・。私は全く泳ぐことが出来ない。濡れたワンピースが身体にまとわりついて身動きが取れない。息を吸おうとして大量に肺の中に水が入り込むのが分かった。

ゴーン
ゴーン
ゴーン

再び聞こえてくる鐘の音・・・。

こうして私は・・私は2回目の死を迎えた―。

 
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています

窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。 シナリオ通りなら、死ぬ運命。 だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい! 騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します! というわけで、私、悪役やりません! 来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。 あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……! 気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。 悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——?

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

処理中です...