無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売

文字の大きさ
上 下
79 / 81

5章 17 リアンナの心の叫び

しおりを挟む
「何を勝手なことばかり言ってるんですか! 私を産んだことでお母様が亡くなったからと言って全て私のせいにして! 寝る間も惜しんで、どんなに努力して認めてもらおうとしても、いつだって褒めてもらうのはお兄様ばかり! まともに私と口を利いてくれませんでしたよね!? 2人が私に酷い態度ばかり取るので使用人たちも皆私のことをバカにしてきました! あの屋敷で唯一、私に優しく接してくれたのは、ニーナとジャンだけだったのですよ!」

そんなこと、私は知らないのに気づけば、勝手に口が動いていた。

「リアンナ様……」

「記憶が戻ったのですか!?」

ジャンとニーナが驚いた様子で私を見つめる。
知らない! 記憶なんて戻っていないってば! 慌てて首を振るも、再び私の口は勝手に動き出す。

「私は殿下からも、2人からも用済みで捨てられたのです! 今更連れ帰ろうとするなんて虫が良すぎます! もう私のことは放っておいてください! 自分の人生は自分で決めます!」

すると父と兄が怒鳴りつけてきた。

「黙れ! お前は女なのだ! 自分の人生など決められるはず無いだろう!」

「そうだ! 大人しく俺達の言うことを聞いていればいいんだ! さぁ! 帰るぞ!」

「いやです!」

首を振ると、カインが私の前に立ちはだかった。

「そうです! リアンナ様はどこにもやりません! どうしても強引に連れて行こうとするなら……」

驚いたことにカインが剣を握りしめる。
それを見たボディガード? らしき男たちが身構える。

「駄目よ! カインッ!」

こんなところで剣なんか振り回さないでもらいたい。

「ですが……」

「待って、カイン。私に考えがあるのよ」

カインにだけ聞こえるような小さな声で囁く。

「考え……?」

すると兄が怒鳴りつけてきた。

「そこっ!! 2人だけでこそこそするな!」

「そうだ! 部外者は黙っていろ! これは家族の問題だ!」

父の言葉に、プチッと切れそうになる。

家族? 今まで散々リアンナを蔑ろにしておいて? 気の触らないことがあれば、リアンナを折檻していたのに? 

何故か少しだけ、リアンナの過去が私の中に流れ込んでくる。

「……そうですね。分かりました。そこまで言うなら家に戻ります」

「え!?」
「リアンナ様っ!?」

ジャンとニーナが目を見開く。

「リアンナ様! 本気ですか!?」

カインが私の両肩を掴んできた。

「仕方ないわ。私は所詮、父と兄には逆らえないのだから。でも、ニーナとジャン。それにカインは関係ないわ」

「そんな……」

カインの顔が青ざめる。

「そうだ、分かればいいんだ。さっさと帰るぞ」

兄はうなずき、父はジャンとニーナに視線を移した。

「お前たち2人はクビだ。何処へなりとも好きな場所へ行くがいい。おい、ロープを外してやれ」

男たちは父の言葉に頷き、ジャンとニーナのロープをほどいた。

「俺達もリアンナ様と屋敷に戻ります!」
「そうです!」

「黙れ! お前たちは不用だ!」

2人の言葉を兄が一括し、次にカインを指さした。

「そこのお前も、消え失せろ!」

「イヤです! 絶対に僕は……!」

「はい、分かりました。カインともここでお別れします」

カインの言葉を止めて、返事をした。

「リアンナ様!」

私はカインの言葉に耳を貸さず、父と兄に願い事を申し出た。

「お父様、お兄様。それでは皆とはここでお別れするので、最後に一曲弾かせて下さい」

「分かった、いいだろう」
「その楽器で演奏するのか? やってみろ」


どうやら私がウクレレで奇跡を起こしていることを知らないのだろう。

ニーナ達は私の考えが理解できたのか、おとなしくなった。

「それでは、演奏します」

私は深呼吸すると、ウクレレの演奏を始めた――




しおりを挟む
感想 95

あなたにおすすめの小説

所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜

しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。 高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。 しかし父は知らないのだ。 ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。 そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。 それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。 けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。 その相手はなんと辺境伯様で——。 なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。 彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。 それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。 天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。 壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!

水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。 シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。 緊張しながら迎えた謁見の日。 シエルから言われた。 「俺がお前を愛することはない」 ああ、そうですか。 結構です。 白い結婚大歓迎! 私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。 私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。

辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

処理中です...