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5章 11 飛んでくるもの
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「キャアッ!」
小屋を飛び出して驚いた。何と外には見張りの騎士が3人いて、全員地面に倒れていたからだ。
「あ、あの~……もしも~し……」
近くによって1人ずつ声をかけてみるも、全員無反応。どうやら深く眠っているようだ。
中には「う~ん……殿下……お許しください……」なんて、寝言を言っている騎士もいる。
気の毒に、夢の中でも殿下からパワハラを受けているのだろう。
「皆さん、そのまま眠っていて下さいね」
眠っている騎士たちに告げると、私は一目散に逃げ出した。いつ、殿下達が目を覚ますか分からない。
少しでもここから遠く離れないと。
「それにしても、ここはどこなのよ……? 海があるから『グラス』であることは間違いないのだろうけど……」
一体私は何処に連れてこられているのだろう? 周りを見ても周囲に建物は建っていない。ただ、波の音と何処までも続く青い空と緑の草むら。
「素敵……」
思わず、周りの景色に見惚れかけ……。
「バカバカバカ!! 私ったら、何呑気なこと言ってるの? 拉致されて皆ともはぐれて、こんな理由のわからない場所にいるのに!」
自分の頭をポカポカ叩く。
「そうよ、それにカインよ。殿下の話ではカインも捕まってしまったようだけど……どうしよう! 他の騎士たちから酷い暴力を受けているかもしれないのに……」
私の脳内妄想で、カインがボコボコにされている光景が目に浮かぶ。
ジャンとニーナはまだホテルにいるかもしれない。けれど、カインは一体何処にいるのだろう?
どうすることも出来ずに呆然と佇んでいると、こちらに飛んでくる鳥が見えた。
「鳥か……私も空を飛べたら、皆を捜せるのに……ん?」
何だろう? あの鳥、こちらに向かって飛んできているようだけど……気のせいだろか?
そのまま鳥を見つめていると、やはり高度を落として真っ直ぐ私の方に向かって飛んでくる。
まさか、あの鳥は……。
「オスカーッ!?」
鳥は私の呼びかけに反応するかのように「クルックルッ」と喉を鳴らし、私の伸ばした腕にバサリと舞い降りた。
鳥の正体は鳩で、足には筒が巻き付けられている。
「やっぱり、オスカーね。ひょっとしてカインの元に案内してくれるの?」
すると私の言葉が分かるのか、コクコクと首を動かした。
おおっ! すごい、なんて賢いのだろう!
「お願い! カインの元へ案内して!」
もう一度尋ねると、オスカーは羽を広げて再び空を飛び始めた。
「ついてこいって言う意味ね」
私はウクレレを小脇に抱えると、飛んでいるオスカーの後を追った。
カインの状況がどうなっているの全く分からない。何の準備もしないで彼の元へ向かうのは危険かもしれない。
けれど、カインを助けに行かなければ。だって、私のせいで彼を巻き込んでしまったのだから。
「大丈夫……私にはこのウクレレがあるのだから」
待っていて、カイン。
今、助けに行くから。
裸足にパジャマワンピースという何とも恥ずかしい姿のまま、カインの救出に向かった――
小屋を飛び出して驚いた。何と外には見張りの騎士が3人いて、全員地面に倒れていたからだ。
「あ、あの~……もしも~し……」
近くによって1人ずつ声をかけてみるも、全員無反応。どうやら深く眠っているようだ。
中には「う~ん……殿下……お許しください……」なんて、寝言を言っている騎士もいる。
気の毒に、夢の中でも殿下からパワハラを受けているのだろう。
「皆さん、そのまま眠っていて下さいね」
眠っている騎士たちに告げると、私は一目散に逃げ出した。いつ、殿下達が目を覚ますか分からない。
少しでもここから遠く離れないと。
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一体私は何処に連れてこられているのだろう? 周りを見ても周囲に建物は建っていない。ただ、波の音と何処までも続く青い空と緑の草むら。
「素敵……」
思わず、周りの景色に見惚れかけ……。
「バカバカバカ!! 私ったら、何呑気なこと言ってるの? 拉致されて皆ともはぐれて、こんな理由のわからない場所にいるのに!」
自分の頭をポカポカ叩く。
「そうよ、それにカインよ。殿下の話ではカインも捕まってしまったようだけど……どうしよう! 他の騎士たちから酷い暴力を受けているかもしれないのに……」
私の脳内妄想で、カインがボコボコにされている光景が目に浮かぶ。
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どうすることも出来ずに呆然と佇んでいると、こちらに飛んでくる鳥が見えた。
「鳥か……私も空を飛べたら、皆を捜せるのに……ん?」
何だろう? あの鳥、こちらに向かって飛んできているようだけど……気のせいだろか?
そのまま鳥を見つめていると、やはり高度を落として真っ直ぐ私の方に向かって飛んでくる。
まさか、あの鳥は……。
「オスカーッ!?」
鳥は私の呼びかけに反応するかのように「クルックルッ」と喉を鳴らし、私の伸ばした腕にバサリと舞い降りた。
鳥の正体は鳩で、足には筒が巻き付けられている。
「やっぱり、オスカーね。ひょっとしてカインの元に案内してくれるの?」
すると私の言葉が分かるのか、コクコクと首を動かした。
おおっ! すごい、なんて賢いのだろう!
「お願い! カインの元へ案内して!」
もう一度尋ねると、オスカーは羽を広げて再び空を飛び始めた。
「ついてこいって言う意味ね」
私はウクレレを小脇に抱えると、飛んでいるオスカーの後を追った。
カインの状況がどうなっているの全く分からない。何の準備もしないで彼の元へ向かうのは危険かもしれない。
けれど、カインを助けに行かなければ。だって、私のせいで彼を巻き込んでしまったのだから。
「大丈夫……私にはこのウクレレがあるのだから」
待っていて、カイン。
今、助けに行くから。
裸足にパジャマワンピースという何とも恥ずかしい姿のまま、カインの救出に向かった――
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