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5章 10 これぞ、聖女の力?
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そんな、聖女の力を見せてみろなんて……!
第一、私が持っているのはウクレレだけ。マジックの道具は全てホテルに置きっぱなしなのだから、殿下が勘違いしているマジックを披露することも出来ない。
「あ、あの……こ、ここでは無理です! ど、道具がありませんから」
「道具? 一体何の道具がいるというのだ?」
腕組みすると、殿下は指をパチンとならした。
すると、騎士が小屋の中に入ってきた。
「お呼びでしょうか、殿下」
「ああ。椅子を一つ持って来い」
「はい」
騎士は一度出ていくと、背もたれ付きに肘掛け付きの立派な椅子を一脚だけ持って戻ってきた。
え? 一脚だけ? 私の分の椅子は?
「どうぞ、殿下」
殿下は無言で椅子にドカッと座ると足を組んだ。
「どうした? 何を突っ立っている。俺は気が短いんだ。さっさと聖女の力を見せてみろ」
「ですから、道具が……」
「道具など無くとも奇跡の力くらい、見せられるだろう? 聖女と呼ばれているくらいなのだからな。それとも、やはり自分のことを聖女だと吹聴して回っていたのか!?」
「そ、そんなことはしていません。周りの人たちが勝手に私のことを……」
「何!? ならやはりお前は偽物だったのか!」
殿下の怒声が飛んでくる。
駄目だ、何を行っても怒りを買ってしまう。どうすればいいのだろう?
思わずウクレレをギュッと握りしめ……ふと気付いた。
そうだ。私には聖女の力は無いけれど、この不思議なウクレレがある。
どうやって、このウクレレを手に入れたかは覚えていないけれども……演奏すれば、何かが起こるかもしれない。
「どうした? さっきから何を黙っている? 偽物聖女を騙った罰として牢屋に入れられたいか?」
「い、いえ! それは困ります!」
首をブンブン振った。
冗談じゃない! 私はこれから船に乗って大海原を旅して道の世界に行くのだから。
「なら、早く奇跡の力とやらを見せてみろ!」
殿下の叱責が飛んでくる。
「分かりました。今、おみせします」
もう、こうなったらヤケだ。せめて殿下の心が穏やかになれれば、何らかの逃げ道がみつかるかもしれない。
そこで、思い切って「ゆりかごのうた」をウクレレで弾くことにした。
「何だ……不思議な音色だな……だが、悪くはないな……」
演奏を始めると、殿下の顔に困惑の色が浮かぶ。
殿下の心が少しでも穏やかになることを祈りながら、ウクレレを奏でる。
すると、驚くことに殿下がうつらうつらし始めたのだ。
はっ! まさか……眠くなってる!?
考えてみれば「ゆりかごのうた」は子守唄だ。だから眠くなってきたのかもしれない!
そこで私は立て続けに色々な子守唄を、心を込めて一生懸命に演奏を続けた。
どうぞ、殿下が深い深い眠りに就いてくれますように……。
やがて、殿下は背もたれに寄り掛かると、完全に眠ってしまった。
試しに演奏をやめてみても、目が覚める気配はない。
「……もしも~し。殿下……?」
声をかけても返事はない。
試しに近づき、ウクレレでチョンチョンと小突いてみても無反応だ。
「眠ってる……? 眠ってるよね!?」
よし、これなら逃げ出せる。着ている服がパジャマワンピースで、素足というのは恥ずかしいが、それでも一時の恥。
私はウクレレを抱えると、小屋を飛び出した――
第一、私が持っているのはウクレレだけ。マジックの道具は全てホテルに置きっぱなしなのだから、殿下が勘違いしているマジックを披露することも出来ない。
「あ、あの……こ、ここでは無理です! ど、道具がありませんから」
「道具? 一体何の道具がいるというのだ?」
腕組みすると、殿下は指をパチンとならした。
すると、騎士が小屋の中に入ってきた。
「お呼びでしょうか、殿下」
「ああ。椅子を一つ持って来い」
「はい」
騎士は一度出ていくと、背もたれ付きに肘掛け付きの立派な椅子を一脚だけ持って戻ってきた。
え? 一脚だけ? 私の分の椅子は?
「どうぞ、殿下」
殿下は無言で椅子にドカッと座ると足を組んだ。
「どうした? 何を突っ立っている。俺は気が短いんだ。さっさと聖女の力を見せてみろ」
「ですから、道具が……」
「道具など無くとも奇跡の力くらい、見せられるだろう? 聖女と呼ばれているくらいなのだからな。それとも、やはり自分のことを聖女だと吹聴して回っていたのか!?」
「そ、そんなことはしていません。周りの人たちが勝手に私のことを……」
「何!? ならやはりお前は偽物だったのか!」
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駄目だ、何を行っても怒りを買ってしまう。どうすればいいのだろう?
思わずウクレレをギュッと握りしめ……ふと気付いた。
そうだ。私には聖女の力は無いけれど、この不思議なウクレレがある。
どうやって、このウクレレを手に入れたかは覚えていないけれども……演奏すれば、何かが起こるかもしれない。
「どうした? さっきから何を黙っている? 偽物聖女を騙った罰として牢屋に入れられたいか?」
「い、いえ! それは困ります!」
首をブンブン振った。
冗談じゃない! 私はこれから船に乗って大海原を旅して道の世界に行くのだから。
「なら、早く奇跡の力とやらを見せてみろ!」
殿下の叱責が飛んでくる。
「分かりました。今、おみせします」
もう、こうなったらヤケだ。せめて殿下の心が穏やかになれれば、何らかの逃げ道がみつかるかもしれない。
そこで、思い切って「ゆりかごのうた」をウクレレで弾くことにした。
「何だ……不思議な音色だな……だが、悪くはないな……」
演奏を始めると、殿下の顔に困惑の色が浮かぶ。
殿下の心が少しでも穏やかになることを祈りながら、ウクレレを奏でる。
すると、驚くことに殿下がうつらうつらし始めたのだ。
はっ! まさか……眠くなってる!?
考えてみれば「ゆりかごのうた」は子守唄だ。だから眠くなってきたのかもしれない!
そこで私は立て続けに色々な子守唄を、心を込めて一生懸命に演奏を続けた。
どうぞ、殿下が深い深い眠りに就いてくれますように……。
やがて、殿下は背もたれに寄り掛かると、完全に眠ってしまった。
試しに演奏をやめてみても、目が覚める気配はない。
「……もしも~し。殿下……?」
声をかけても返事はない。
試しに近づき、ウクレレでチョンチョンと小突いてみても無反応だ。
「眠ってる……? 眠ってるよね!?」
よし、これなら逃げ出せる。着ている服がパジャマワンピースで、素足というのは恥ずかしいが、それでも一時の恥。
私はウクレレを抱えると、小屋を飛び出した――
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