無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売

文字の大きさ
上 下
69 / 81

5章 7 レオポルト・クラッセン

しおりを挟む
 あまり大人数で行動してはリアンナとカインにバレてしまう可能性がある。

そこで手練れの騎士5人を伴って、連中の後を追った。そして、立ち寄った町のいたるところで聖女の話を耳にした。

空中で自在に棒を操ったり、何も無かったはずの帽子から鳩やウサギを出す。破いたはずの紙を何事もなかったかのように元に戻す……等。

そのどれもが、リアンナを知る俺にとっては信じがたい話ばかりだったのだ――


****

「まさか、魔法を使えるとは知らなかった……何故リアンナはそのことを黙っていたのだ? あれほど俺との婚姻を望んでいたくせに……」

『プレタ』の町を出た俺達は、最後の町『グラス』を目指して草原を駆けていた。

「殿下、それだけではありません。病人を治癒する力もあるそうではありませんか。もはや、完全に聖女の力を持っているに違いありません」

隣で馬に乗っている騎士が話しかけてきた。

「そうだな」

『プレタ』では聖女が魔法の力を人々の前で披露したという話は聞かなかった。
その代わり、立ち寄ったホテルでは貴重な話を聞くことが出来た。

腕が動かなくなってしまった男を、不思議な楽器を奏でて元通りに治したという。
最初は疑わしかったが、実際その男に会うと興奮気味に語っていた。

『はい、その通りです。聖女様は見たこともない楽器で明るい曲を演奏してくれました。それはとても素敵な曲で、気づけば手拍子を叩いていたんです。医者に見てもらっても治せなかった腕が治ったのですよ! 本当に美しくて優しい聖女様でした!』

「全く……あのリアンナが美しくて優しいだと? 同じ名前の女だったんじゃないか?」

王太子妃候補として、城に来ていた頃のリアンナは見るからに性格のきつそうな表情をしていた。周囲からの評判は悪く、俺に気に入られようと必死に縋り付いてくる様……それらを思い出すだけで気分が悪くなってくる。

「殿下、『グラス』まで、後10Km程です。到着いたしましたら、すぐに捜索を始めましょうか?」

別の騎士が尋ねてきた。

「いや、その前にまずは船着き場へ行く。全ての船の出向禁止令を出すのだ。乗船でもされてしまえば、後を追うのは困難だからな」

「はい、承知いたしました!」

「いいか? お前たち!! 何としてもリアンナとカインを逃がすな! 『グラス』に到着したら別れて行動だ! お前は俺と一緒に船の出港停止命令を出しに港へ行く! 残りの者たちはリアンナとカインを捜し出せ!」

「「「「「はい!」」」」」

リアンナたちの後を追っていて気づいたことがある。それは、随分のんびりと次の場所へ移動しているということだった。

恐らく、まだ『グラス』を発ってはいないだろう。

リアンナ。もしお前が本物の聖女なら、絶対に逃さないからな。
その不思議な力、俺のために使って貰うぞ。

「お前たち、急ぐぞ!!」

手綱を強く握りしめると、さらに馬を駆けさせる速度を上げた。


そして、ついに『グラス』でリアンナを発見することになる。

別人とも思えるほどに変貌したリアンナに――

しおりを挟む
感想 95

あなたにおすすめの小説

所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜

しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。 高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。 しかし父は知らないのだ。 ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。 そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。 それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。 けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。 その相手はなんと辺境伯様で——。 なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。 彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。 それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。 天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。 壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。

辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。

お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!

水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。 シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。 緊張しながら迎えた謁見の日。 シエルから言われた。 「俺がお前を愛することはない」 ああ、そうですか。 結構です。 白い結婚大歓迎! 私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。 私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。

成人したのであなたから卒業させていただきます。

ぽんぽこ狸
恋愛
 フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。  すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。  メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。  しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。  それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。  そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。  変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。

「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。 「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」 精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。 それでも生きるしかないリリアは決心する。 誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう! それなのに―…… 「麗しき私の乙女よ」 すっごい美形…。えっ精霊王!? どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!? 森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

処理中です...